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もし、イスラム国が中東の原油を制圧したら… photo Getty Images
リスク重なる世界経済。それでも「消費税10%」というエコノミストやマスコミは財務省の「ポチ」ではないか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40804
2014年10月17日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
世界経済の先行き不透明感が強まっている。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しは「下ぶれリスクは明白である」と強い言葉で警告した。欧州ユーロ圏は4〜6月期にゼロ成長に落ち込み、中国も「すでにマイナス成長ではないか」という声がある。これで日本は消費税を10%に引き上げられるのか。
■欧州経済の先行きは悲観的
まずIMFの予想をみよう。10月7日に発表された世界経済見通し(http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/survey/so/2014/new100714aj.pdf)によれば、好調なのは米国と英国くらいだった。あとは日本を含めて悪化か、せいぜい横ばいだ。
なかでも停滞が際立っているのは欧州である。ユーロ圏は債務問題という負の遺産から抜け出せず、2012年は▲0.7%、13年も▲0.4%とマイナス成長を続けた。14年はようやくプラス0.8%に転じる見通しだが、これは希望的観測かもしれない。
欧州連合統計局(eurostat)が9月5日に発表したユーロ圏18カ国の4〜6月期の国内総生産(GDP)は前期比0%成長だった(http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_PUBLIC/2-05092014-AP/EN/2-05092014-AP-EN.PDF)。
この後に発表された7月の鉱工業生産は前月比1.0%増とプラスを保ったが、建設部門の生産高は同じく0%と横ばいにとどまっている(いずれもeurostat)。景気回復はとても視野に入っていない。IMFも「ユーロ圏の回復が失速し需要がさらに弱まり、低インフレがデフレにシフトするリスクがある」と先行きには悲観的だ。
■中国の金の卵は壊れた
それから中国である。IMFの見通しは14年に7.4%成長を見込んでいる。これは中国政府の公式目標7.5%とほぼ同じだ。ところが、中国出身の中国ウォッチャーである石平・拓殖大学客員教授は最近発売された『月刊Voice』の論文で「中国経済はいま、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている」と書き出して、次のデータを紹介している。
「それを端的に示しているのは、今年8月20日に中国煤炭工業協会が公表した2つの数字である。今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1.45%減と1.54%減となったという」
そのうえで、李克強首相が公式のGDP統計を信用せず、もっぱらエネルギー消費量や物流を基に本当の成長率を判断する、という有名なエピソードを紹介しつつ「このような物差しからすれば、…政府公表の『7.4%』ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある」と指摘している。
日本の市場関係者に聞いてみても「7%成長は信用できない。実際はせいぜい3〜5%くらい、というのが市場のコンセンサス」という。先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40720)でも指摘したが、中国では不動産バブルがすでに弾けた。
中国の国家的闇金融であるシャドーバンキングは、不動産バブルが高金利を生み出す金の卵になっていた。その卵が壊れたからには、いずれシャドーバンキングの破綻も免れない。GDPの半分に達する500兆円規模ともいわれる闇金融システムが壊れれば、どうなるか。中国だけにとどまらず、中国への輸出で息をついている韓国、さらに世界経済への打撃も避けられない。
■もしイスラム国が中東の原油を制圧したら
加えてイスラム国問題がある。米国はシリア領内の空爆に踏み切ったが、地上軍なしに武装勢力を壊滅させるのは難しい、というのが軍事関係者の一致した見方だ。とはいえ、11月に中間選挙を控えるオバマ大統領は国民に「地上軍は派遣しない」と約束してきた手前、当面は空爆以外に手がない。
ということは、イスラム国の武装勢力を掃討できず、戦闘の長期化は必至といえる。イスラム国の戦略目標はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの原油を握ることだ、といわれている。だからこそ、サウジやUAE、カタール、バーレーン、ヨルダンなど産油国も空爆作戦に参加したのだ。テロ組織が中東の原油を制圧した事態を考えれば、それが世界経済にとってどんなに恐ろしい話か、容易に想像できるだろう。
いまのところ、イスラム国問題は原油価格に響いていないが、もしも戦闘がサウジなど産油国に波及したら大事になる。IMFも「(中東の混乱が)変化する可能性があることは明らかで、そうなった場合、世界経済への影響は大きいだろう」と地政学的リスクを指摘している。
■エボラ出血熱もリスク要因
ここへきて、もう1つのリスク要因も加わった。それはエボラ出血熱だ。当初、感染は西アフリカに限られていたが、そこから飛び火してスペインで欧州大陸初の感染患者が出た。さらに米国でもリベリアから帰国した患者の治療に関わった女性看護師が感染した。感染が欧州と北米大陸に広がったのだ。
いまは場所が限定されているが、感染が確認された後、米国も欧州も西アフリカからの入国を制限していない。水際で食い止める方針だが、はたして感染拡大が防げるかどうか。今後も感染者が増えるようだと、心理的にも人々の移動や行動に影響が出てくる。当然、経済にはマイナスである。
実際、すでに米国の株価はエボラ出血熱の感染拡大を嫌気して下落する場面があった。日本ではエボラ出血熱やイスラム国関連のニュースはそれほど大きな扱いになっていないが、米国のCNNや英国のBBCなどはここ数週間、この2つでもちきりである。ともに米国と欧州にとって人ごとではなく、密接に関わってきたからだ。
逆に言えば、それだけエボラ出血熱とイスラム国問題が世界経済に与える悪影響も大きくなる。その点は日本もよく認識しておくべきだ。
■日本の増税見送りは世界の常識論
そこで日本だ。先週のコラムで書いたように、IMFは日本の14年の成長率を7月時点の見通しから0.7%も下方修正して0.9%成長と見込んだ。そんな状況の下で、国内では消費税の扱いがどうなるかが大きな焦点になっている。財務省は相変わらず「消費税を予定通り15年10月から10%に引き上げなければ、国際的信認を失う」と宣伝している。だが、これは視野狭窄の脅し文句と言わざるをえない。
たとえば、最新の『エコノミスト』誌(10月11〜17日号)はどう書いているか。「世界経済、見た目以上に弱い」というタイトルの記事で「弱体の国々に対する処方箋はシンプルである」と次のように指摘した。
「自分たちの問題解決に米国を頼るのではなく、最近の悪いニュースは目覚ましコールと受け止めるべきだ。欧州中央銀行(ECB)は直ちに国債の買い上げを始める。日本政府は経済が回復するまで消費税の引き上げを遅らせる。そして、それが可能である国々、とりわけドイツはインフラストラクチャーに対する投資をすべきだ」
「日本は消費税引き上げを延期すべきだ」と主張しているのである。同様に米紙の『ニューヨーク・タイムズ』も、英経済紙の『フィナンシャル・タイムズ』も再増税延期を主張している。エコノミストを含めて、いまや増税見送りが世界の常識論になっているのだ。
さてそうなると、財務省の尻馬に乗って「国際的信認が失われる」とか騒いでいる日本のマスコミやエコノミストがいかにトンチンカンであることか。ようするに、ポチそのものなのだ。今回の消費税問題はそんな議論の本質を見抜く絶好のチャンスである。
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