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消えたアベノミクス
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20141014-00039946/
2014年10月14日 8時25分 久保田 博幸 | 金融アナリスト
アベノミクスとは2012年11月の衆院解散後、安倍自民党総裁が輪転機発言などでリフレ政策を全面に打ち出したことでスタートした。ユーロ危機が後退しつつあるなかでの、国債を日銀が大量に買い込む政策が打ち出され、ヘッジファンドなどは絶好のタイミングとばかり、円売りと日本株買いを大量に仕掛けた。これを受けて急激な円高調整が入った。さらに政権交代による期待感も加わり、日経平均株価は上昇した。円高圧力の後退で、景気にも好影響を与えることとなり、物価も予想以上に上昇した。
安倍政権が打ち出したリフレ政策による円安株高とそれによる経済効果はアベノミクスと呼ばれた。そこに安倍政権は財政政策と成長戦略を加え三本の矢とした。ただし、その財政政策は補正予算によるものであり、成長戦略も名ばかりのものでしかなかった。ただし、最初の矢については安倍政権が任命した黒田日銀総裁により実現化する。2013年4月の決定会合で日銀は量的・質的緩和政策を決定した。
2012年11月のアベノミクスの登場は日本の金融市場にとってはまさに奇襲攻撃に映った。円安株高という援軍を得て、デフレ脱却という目標に向かって邁進することになる。異次元緩和の登場のタイミングで物価が上昇し始めた。ある程度の物価上昇は予測されていたが、円安効果でそれが予想以上に上乗せされ消費者物価指数は2014年4月には前年比プラス1.5%程度まで上昇してきたのである。
ところが、2014年4月の消費増税あたりから様相がおかしくなり始めた。消費増税の影響を除いた物価が頭打ちとなってきたのである。円安の動きにブレーキがかかり、エネルギー価格の下落などが影響したとみられる。もし日銀の異次元緩和が人々の物価予想を引き上げるというのであれば、大規模な国債買入れが続き、日銀のバランスシートが膨らみ続ければ、何があろうと物価は上がるはずである。しかし、物価は途中まで調子よく上がったものの、目標値前で腰折れとなってしまった。
しかし、今年の9月から再び円安ドル高の動きが強まる。アベノミクスに再び神風が吹いた格好だが、ドル円が110円台に乗せたあたりから今度は円安への警戒論が強まってきた。そこに米国株式市場の大幅な調整が加わり、ドル円は下落基調となりつつある。神風は二度吹いたものの、二度目は風向きが怪しくなってきた。
すでに日銀には二度目のバズーカ砲は存在しない。一度目のバズーカも事前に安倍首相がアナウンスしており、市場へのインパクトとしては債券市場を乱高下させただけになった。二度目のバズーカは、もし威力のあるものにすると債券市場を破壊する。もしくは国債の信認を低下させ、日本のリスクを増大させ取り返しのつかないものにさせる可能性がある。小出しにして、いろいろなものの買入れをちょこちょこ打ち出すとしても、市場が納得できるようなものは打ち出せないであろう。
どうやらアベノミクスと呼ばれたものは自然に消滅しつつある。欧州を中心に景気の低迷が、世界に拡散されるリスクが出てきており、その兆候が商品価格の低迷などにも現れてきつつある。米国の景気はなんとか踏ん張っているが、米国経済が世界経済を牽引することも難しくなるのではなかろうか。新興国景気もここにきてやや暗雲が漂いつつある。このままアベノミクスが消滅すると、日銀による大量の国債買入れ作業が残るばかりとなる。それでなくても日米欧の長期金利が再び低下傾向にあり、これはリスク回避も示している。ここからの日本の長期金利の低下は国債バブルの最終局面となる可能性もありうるのではなかろうか。
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