11. 2014年10月30日 11:49:17
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社会科学者の随想 2014年10月12日 http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1011284258.html
憲法第9条がノーベル平和賞? 平和ボケのノーベル賞「期待感」 (全文) 【死に体同然の第9条になにを背負わせるつもりか?】
【平和賞,受けないよりは受けたほうがいいのは,当然だが】 @ マララ・ユサフザイがノーベル平和賞を受賞
『人類応援ブログ がんばれ人類。まけるな人類。』というブログが「マララさんの ノーベル平和賞受賞は間違っている」(2014年10月11日)と訴えている。 以下に紹介するが,文体は適宜変更してある。小見出しも付しておく。 1) 欧米がしたてあげた子ども兵
2014年のノーベル平和賞に,パキスタンの人権活動家マララ・ユサフザイが選ばれました。 彼女は子供や女性の教育権を訴える活動で著名な人物で,女学校の破壊などの行為 に手を染めていた「タリバン」に対する抗議活動で知名度をえた。 彼女の最大の特徴は,その若さである。 彼女が政治活動を始めたのは11歳であり,BBC(英国放送協会,British Broadcasting Corporation,) のウェブサイト上で,タリバンの支配を批判するブログを執筆したのが始まりである。 タイム表紙(マララ画像) 註記)TIME誌2013年4月29日・5月6日号表紙。 タリバンによる支配を生々しく綴ったマララのブログは欧米を中心に注目を集め, 一躍彼女は「反イスラム過激派」のヒロインになっていった。 12歳のときにはパキスタン政府主催の講演会にも出席,パキスタン政府は彼女の実名を公開し, 「勇気ある少女」として国民的英雄にしたてあげていた。 タリバンからの銃撃。−−こんな彼女の活動はTTP(パキスタン・タリバン運動)の憎悪を駆り立てた。 2012年,彼女が15歳のとき,彼女の乗っていたスクールバスが複数の戦闘員によって襲撃され, マララさんは頭部と首に計2発の銃弾を受け,一時期は人工呼吸器なしでは命をつなげないほどの重症を負った。 TTPは犯行声明を出しマララさんを「親欧米派」と糾弾。
「正義のための子ども兵」。−−マララさんのノーベル平和賞受賞の報を聞いて, 最初に湧き上がったのは不快感であった。 そのつぎが,ノーベル平和賞という賞がとりかえしのつかないほど汚されたことへの,失望であった。
彼女は,子ども兵である。 タリバンという敵と戦うために,欧米が作りあげた自由と正義のための子ども兵である。 彼女が政治的偶像として大人たちの戦争に利用されたことじたいが, なによりも明らかな子供の教育権の侵害であり,子供に対する暴力である。 たしかに,彼女に銃弾を叩きこんだのはタリバンであるけれども, この彼女を銃弾飛びかう政争の場に引きずりだしたのは,西側の大人たちである。 マララさんが銃撃されたあと,彼らは「こんな子供に銃を向けるなんて!」と 大々的にタリバン批判キャンペーンを展開した。 しかし,タリバンに対する「盾」として当時15歳のマララさんを利用したようにしかみえない。 それはタリバンの暴力と同じくらい醜悪な光景である。 2) 11歳の少女に政治的判断ができるか (マララ画像) こういう反論もありうる。「彼女の政治活動は自発的なものなんじゃないか?」「大人たちが彼女を利用しているというのは穿った考えではないか?」 しかし,断言するが,11歳の女の子に政治的自立性などありえない。 「これは彼女が自分からやってるんだ」というエクスキューズは,愚かしいだけでなく醜悪ですらある。 子供ほど簡単に大人の操り人形になる存在はない。 子供は,衣・食・住,安心,幸福,そういったものすべてを両親を始めとする周囲の大人に依存している。 彼らの頭脳も,身体も,まだまだ自分で自分を守るには不十分なのだから,そういった状況で, 大人がある種の思想をもっていれば,子供は簡単にそれに染まってしまう。 新左翼セクトや新興宗教などでよくみられる光景である。 “ 補注)近隣諸国でも,以上のような光景が充満させている世襲独裁国家がある。 この国では,幼児期から完全に洗脳された「人民(≒奴隷)」たちがいる。 他者・他国が彼らのその洗脳をきれいに洗い流すためには,たいそうな手間とひまをかけねばならない。 他人事ではなかった。 大日本帝国が敗戦したとき,とくに青少年の世代が「親の世代の豹変ぶり」を目の当たりにして, ひどく人間不信・虚無感に陥ったのは,あまにも当然であった。 付言しておくが,いまのこの国の首相は,いまの隣国やかつての自国におけるのと 同じような精神状態になる人びとが登場することを,心から期待している。 マララさんの場合,政治活動を開始したのは11歳のときである。 日本でいえば小学5年生,思春期すらまだ経験していない。 そんな時期に,親や周囲の楔を脱して「自発的」に政治思想をもったと考える方が異常である。 たとえば,過去の日本の学生運動や現在進行中の香港の民主化運動では, 参加者はどんなに若くても高校生くらいである。 早熟な子でもせいぜい中学生くらい。 しかも,彼らが運動のなかで中心的な役割を果たした事例は,ほぼ皆無である。 3) マララに政治思想があるのか こういった事例から考えれば,小学生5年生の主導的政治活動家が自然発生した, という今回のストーリーがどれほど異常でありえないかがわかる。 当然,親やメディアなど周囲の大人たちの強力な「介入」があったと考えるのが妥当といえる。 「政治思想」とは世界のあるべき姿について一定の意見をもつということである。 そういった営為ができるようになるには,「自分」と「世界」のあいだにある差異を認識し, それを客観的に考えるだけの知恵と時間が必要となる。 そして通常,人間の身体というものは,ある程度成長しないとそのための準備が整わないはずである。 11歳の女の子がもつ政治思想など,「思想」ではない。それは「ドグマ(教条)」であり, また狂信,盲信,そういった類のものである。 さらにいえば,彼女の最初の運動−−ブログの執筆−−ですら,「自発的」な活動ではありえかなった。 マララさんはBBCから「依頼」されて,BBCのウェブサイト上に文書を公開した。 自分の意志でインターネット上にサイトを開いたのではなく,外部からの要請を 受けたうえでブログを作ったのである。 そんなものが自発的な政治活動だといえるのか? 明らかに,大人の操り人形にしかみえない。 4)正義のためなら子供を犠牲にしても良いのか? 勘違いしないで欲しいが,子供の教育権や,男女が平等に学べる権利などについて, マララさんに反対の意見をもつのではない。 日々,マララさんと同い年くらいの子供と接する教育関係者としては,それらのメッセージには全面的に,120%賛同している。 だからこそ僕も,私費と時間を投じて1人でも多くの子供に学びの機会を作ろうと,ささやかな活動をしている。 しかし,どんな正しい目標でも,どんな崇高な正義でも,それを達成される手段が 邪悪であるなら,その意味はすべて失われる。 正義のために悪を為すなら,あとに残るのも悪だけである。 マララさんの例はその典型的な例だと思われる。 5) 子供の教育権・男女の教育機会の平等 「これら」はたしかに,きわめて重要な,口先だけでなく,本当に重要なテーマである。 しかし,だからこそ,その当の子供を操り人形にして,銃弾飛び交う戦場に彼女を 引っ張りだすような真似をして,それを達成してはならない。 仮に時間がかかっても,どんなに手間とお金がかかっても,ハリボテの政治的偶像と プロパガンダで正義を達成するのは間違っている。 マララさんのノーベル平和賞受賞は,間違いなのである。 −−以上,『人類応援ブログ がんばれ人類。まけるな人類。』というブログを 記述する教育関係者らしい人物が,「マララ・ユサフザイ」に「ノーベル平和賞」が授賞された出来事に対して,語った批判である。 それは教育学的な素養に裏づけられた批判である。 指摘された要点,つまり「欧米側の価値観=理念と利害関係」がこの平和賞には 染みこんでいるという問題は,タリバン側の敵意と対置してみると,たしかに否定 できない〈現実の論点〉して受けとめるほかない。 さらなる問題は,こういった「タリバン・対・マララ」の対立・激突の構図が, このブログ『人類応援ブログ……』の筆者が危惧するような方向に向かい, 拡大発展するのではないかという懸念を抱かせる。 ノーベル平和賞がもしかすると,世界の国々に,この地上のあちこちに新しい揉めごとや 事件を新しく惹起させかねない原因を,わざわざ提供することになるのもかもしれない。 A「ノーベル平和賞予測に9条,谷垣幹事長『結構なこと』」(『朝日新聞』2014年10月7日朝刊) 1) 自民党が鼻先で笑う平和賞 自民党の谷垣禎一幹事長は10月6日の記者会見で,2014年のノーベル平和賞の受賞予測に 「憲法9条を保持する日本国民」が挙がっていることについて,「結構なことではないか。 最後までいってほしいな,という気持はないわけではございません」と述べた。 自民党は2年前,谷垣氏が総裁のときに,9条を変えて「国防軍」の保持を明記する 憲法改正草案をまとめたが,谷垣氏は「自民党がつくった案も,基本は現行の憲法9条が下敷き」と語った。 −−すでに安倍晋三が,憲法第9条の解釈変更をもってこの条項を完全に骨抜き にしていた事実を思えば,この第9条にノーベル平和賞を与え,その受賞者として 「それを保持する日本国民」を挙げるというのは,ブラック・ユーモアでないことは 確実であるゆえ,冗談として以外には受けとれない。 実は「安倍晋三も日本国民」であったが……。 これでは冗談以前の悪ふざけである。 いまからもとに戻せといわれてもそう簡単ではない。 すなわち,第9条の本旨が奈辺にあるかさえ,もうどうでもよいようなあつかいに してくれた自民党関係者に「結構なことではないか」などといわれるとは, ふざけているのだとでも受けとらねば,とてもまともに聞けないような話である。 第9条を足蹴にしてきたのが在日米軍基地である。 否,むしろ,この条文の存在価値を支持してきたのが,日本国内に本拠地を置いている, つまり「自国(アメリカ)の軍事基地」(軍艦の母港など)を置いている『米国の陸海空軍』である。 しかも,この米軍3軍は「第1条から第8条までの〈天皇条項〉」との歴史本源的な 表裏一体性をもって,敗戦以後からいままで日本全国に配置されてきている。 いいなおそう。敗戦後における日本の軍事史は, a)「天皇・天皇制+米軍基地」から, b)「天皇・天皇制+米軍3軍・自衛隊3軍」 という基本の変遷をたどってきた。 第9条の歴史的な意味あいはすでに,1950年6月25日「朝鮮戦争の勃発」を直接 の契機に,その基盤より変質させられてきた。 そういう変質を来たしてきた第9条だから,これにノーベル平和賞を授賞させ, フランケシュタインのように死の淵から復活させようとする試みなのであり, この種の元気づけなのかもしれない。 しかし,そのような再生・復活は “天才外科医ブラック・ジャック” でも, またドクターXでも,おそらく不可能である。 この再生手術を「平和憲法」の第9条にほどこしたところで,その結果に希望はもてない。 敗戦直後,日本国憲法が大日本帝国憲法を改定して制定される。 そのときのこまかい事情には触れずにいえば,GHQのマッカーサーが「戦争の放棄」 「象徴天皇制」「封建制の廃止」という3つの原則を示し,これを生かした 日本国憲法の草案作りがなされていた。 この3つの原則は,字面だけみてもどうしてもおかしく,矛盾するというしかないのが 「象徴天皇制」と「封建制の廃止」である。 しかも,この2つの原則をとりもったのが「戦争の放棄」であった。 第9条のゆえんであった。 ところが,いまとなって安倍晋三がなにをやったか? それは,この憲法第9条の完全破壊のための仕上げ作業である。 集団的自衛権行使の容認を閣議決定でお手軽に決めたし,武器輸出禁止3原則も実質なきものにした。 しかし,そうしたからには,長年この日本国が「平和憲法をもつ国」であったという 基本性格から中東諸国においては,高い評価をえていた財産が一気に損価していく 絶好・最悪の条件が整えられたことになる。 前段の少女マララによる「タリバンとの戦い」という構図に似た,日本国と「○○との戦い」 のような「なにか」が,今後において降って湧いてこないとは限らない。 なにせ,アメリカ軍の驥尾(きび:お尻)に着いてまわるかっこうで,日本国の 自衛隊3軍が「集団的自衛権の行使をいたします」と請け負ったのだから, これからは,憲法第9条はほとんど骨抜きされると同時に,わずかに残っていた その骨っぽい部分さえ骨砕け:ミンチにされてしまうことになった。 2) 戦場の実相 先日「イスラム国」に参加したいなどいっていた,それもまったく世間(世界) しらずの日本の若者〔馬鹿者?〕が,ニュースに登場していた(北大生,26歳)。だが, 日本の若者よ,祖父・曾祖父の世代が「戦争の時代」をどのように「死なないで 生き延びてきた」かをよく学習しなければなるまい。 たとえば,戦艦大和が撃沈されるさいの光景を,この船に乗っていた当人が描いている。 艦上ではどのような地獄絵の様相になっていたか,ほんの少しでもいい,想像してみよ。 ここでは,吉田 満『鎮魂戦艦大和(下)』(講談社,1978年)に語らせる。 戦艦大和が昭和20年4月7日に撃沈される寸前の,凄惨な光景である。 “ 治療室ニ辿リ着キ,傷ヲ縫合ス 軍医官2名,全身ニ返リ血ヲ浴ビ,マナジリヲ決シテ「メス」ヲ揮ウ 応急治療室ニハ浴室ヲ使用ス 湯水ノ流ルル「パイプ」ニ,血ヲ通スタメナリ 他ノ室ナラバ,ヤガテ血ノ海トナリ,血ニ溺ル 室ノ隅ハ,天井ヨリ堆(ウズタカ)キ坂ヲナシテ死体ノ山ナリ ワガ先順ノ患者,足首ヲモガレタル若キ兵ニシテ,膝ヨリ切離サントスル手術ノ間,モトヨリ麻酔ナケレバ,苦痛ノアマリカ,幼児ノ如ク喚キツヅク 膝ノ骨ノ,豆腐ノ如ク軟カニ切リ開カルト見ル間ニ,呻キ声ハタト止ミ,忽チ硬直ス 出血多量カ軍医官,1人ハ頭,1人ハ足ヲ持チ,2,3度振リ勢イヲツケタルノチ,死体ノ山ノ頂キニ投ゲ上グワガ手術ハ簡単,傷ヲ開キ,重油ヲ拭イトリ,鮮カニ縫合,化膿ノ虞レ先ズナカラントイウ 劇シテ目薬ヲ刺ス,油ノ刺戟甚シ 艦内血ナマ臭ク,ナドイフモ愚カナリ 腥血溢レテ青臭ク,咽喉ムセテ息苦シ 「冬月」航海長中田注意,羅針儀側ノ戦闘配置ニアッテ,両手ニ機銃弾ノ盲貫ヲ受ケタルモ,ソノママ勤務ヲ続ケ,遂ニ出血多量ノタメ意識不明トナッテ医務室ニ護送サル 応急手当了リ安静ヲ命ゼラルルヤ,隙ヲ見テ脱走,艦橋ニ急グモ,両手ヲ失イ行動不如意,「ラッタル」ノ中段ニテ,再ビ出血ノタメ気ヲ失イタルトコロヲ発見セラル 22歳ニシテ,美髭ヲ蓄エタル快男児ナリ 註記)吉田 満『鎮魂戦艦大和(下)』144−145頁。 このようにまで凄惨な光景が大和艦内で起きる2カ月ほど前,天皇裕仁はこういっていた。 「もう一度,戦果をあげてからでないとなかなか話をむずかしいと思う」(昭和20年2月14日)。
沖縄に向けて突入作戦を敢行した戦艦大和は,その途中で,アメリカ海軍機が 雲霞のごとく攻撃してきたために,その目的は果たせず海中に没していた。 戦艦大和が撃沈されたその後も紹介しておきたい。 “ 救助作業は日没でうち切られたが,救助されたのは「海面で救助を鶴首していた 将兵の約半数に過ぎず,また,両艦〔駆逐艦の雪風と冬風〕めざして泳いでいる者 もいた」状態であったという。 このため大和の乗員3332名中で救助されたのは269名に過ぎなかった。 註記1)平間洋一『戦艦大和』講談社,2003年,150頁。〔 〕内は筆者補足。生き残りの人数は276名(8.3%)という数字もある註記2)。 註記2)http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140226/wlf14022621310019-n2.htm だいぶ昔の話である。筆者の実家(東京都)の,その2軒北隣りの「●尾」さんの お父さんは,大和の生き残りだったと聞いたことがある。
B「ノーベル平和賞予測,『憲法9条保持する日本国民』浮上」(THE ASAHI SIMBUN DIGITAL,2014年10月4日00時20分。ロンドン=渡辺志帆) 10月10日にノルウェー・オスロで発表される2014年のノーベル平和賞の受賞予測に, 「憲法9条を保持する日本国民」が浮上した。 受賞予測を毎年発表している民間研究機関,オスロ国際平和研究所(PRIO)が3日, ウェブサイト上の予測リストを更新し,それまで「欄外」だった「憲法9条」がトップに躍り出た。 受賞への期待が高まりそうだ。 『朝日新聞』2014年10月9日朝刊 受賞予測リストは,@フランシスコ・ローマ法王, Aエドワード・スノーデン氏,B「ノーバヤ・ガゼータ」(ロシアの新聞), Cドニ・ムクウェゲ氏(コンゴ民主共和国の医師),Dマララ・ユスフザイ氏 (パキスタン出身の女性の教育の権利提唱者)が挙がっていたが,3日付でリストが更新され, フランシスコ法王が「憲法9条」に差し替わった。 他の4候補は順位が入れ替わっただけだった。 PRIOのハープウィケン所長(52歳)は3日,朝日新聞の取材に応じ, 「中立や不可侵,平和主義につながる原則をかかげる憲法9条は,軍事的な 紛争解決が多用される昨今において重要にもかかわらず,十分に光が当てられていない。 領土問題などアジアがはらむ将来の紛争のおそれについても注目されるべきだ」と話した。 サイト上の予測コメントでは,安倍内閣が今〔2014〕年7月に踏み切った憲法9条の 解釈変更が「(アジア)地域で武力衝突の前触れになると懸念されている」とし, 「いまこそ初期のノーベル平和賞がかかげた原則に立ち返るべきときだろう」と評していた。 PRIOの受賞予測は,特定の候補を推薦する目的や,賞を選定するノーベル委員会 とのつながりを否定。 ただ2007年にゴア元米副大統領の受賞を当てるなど的中例がいくつかあり,毎年,注目が集まる。 今年のノーベル平和賞は2月1日までに世界中から推薦された278の人物と団体から ノーベル委員会が選定し,10日午前11時(日本時間午後6時)に発表される。 憲法9条をノーベル平和賞に推薦する運動は,神奈川県座間市の主婦鷹巣直美さんらが始めた。 国会議員らも同調し,署名運動を進める「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会 (事務局・神奈川県相模原市)のウェブサイトによると2日現在,40万人以上の署名が集まった。 註記)http://digital.asahi.com/articles/ASGB376G1GB3UHBI02C.html C「9条にノーベル賞,なるか 平和賞予測トップに 市民団体,慌てて受賞準備」 (『朝日新聞』2014年10月9日朝刊) 戦争放棄をうたう憲法9条を守ってきた日本国民が,ノーベル平和賞の受賞予測 でトップに挙げられた。 集団的自衛権の行使容認などをめぐって国内が揺れるなか,国際的に注目を集めるかもしれない。 平和賞に推薦する活動を続けてきた団体は,10日の発表を期待を込めて見守る。 「状況が変わった。初めてノミネートした今年は無理では,と個人的には思っていた」。 「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(事務局・相模原市南区)の石垣義昭 共同代表(73歳)は喜びを隠さない。 きっかけはノルウェーのオスロ国際平和研究所(PRIO)が毎年発表する受賞予測だ。 ウェブ上の予測リストで3日,1位だったフランシスコ・ローマ法王に代えて「ランク外」 の「憲法9条」を278候補の筆頭に浮上させた。 これを受けて実行委は5日に緊急会合を開催。ノーベル平和賞が決まる10日に合わせた 会見場を当初の2倍の部屋に変え,落選用コメントだけでなく受賞用もつくることにした。 実行委は,このとり組みを昨〔2013〕年に発案した神奈川県座間市の主婦を始め, 県内の主婦や幼稚園の先生,元教員,元会社員ら14人でつくる。 市民団体「九条の会」メンバーらも活動にくわわり,大学教授や平和研究所長らを 推薦人として集め,ネットで呼びかけた賛同の署名と合わせてノーベル委員会に 推薦状を送り,今年4月に受理された。 今年が無理でも来年以降の受賞を見据え,実行委は署名集めを継続。 安倍内閣が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をした7月前後から署名は急増し, 国内外の41万人余にのぼったという。 「署名の束を枕元に置いて寝ていたら,危うい状況に対抗するすべがなかった人たち の声が聞こえてきた。 その声に応えるためにも受賞できれば」と落合正行共同代表(81歳)は話す。 1)「大きな自信になる」「条文,現実と乖離」 「もし9条が選ばれたら,日本に住む人たちにとって大きな自信になる」。 8日,都内であった集団的自衛権行使に反対する集会に出席したNPO法人ウィメンズ アクションネットワーク理事長の上野千鶴子さんは,受賞の可能性に対して大きな期待を寄せた。 「私たちには69年間,世界に類をみない平和憲法を守りつづけてきたという実績がある」と強調。 国際社会では評価されているのに,国内では『押しつけ憲法』と値打ちが理解されて いないことを残念に思っていた。 この日,壇上では「これまでの戦後を戦前にしてはならない」と訴えた。 「原発を輸出する代わりに9条を世界に輸出する方がいい」。 “ 補注)「押しつけられた」のは第9条だけでなかった。 第1条から第8条の天皇条項もそれであったし,在日米軍基地もそれであった。 敗戦後5年も経つと,軍隊(いまの自衛隊3軍)も「押しつけて」くれた。 これらを全部ひっくるめてその第9条を語るのでなければ,こちらだけを突出させて モノをいうのは,ずいぶん奇妙な話法である。 「ズッコケ三人組」シリーズなどで知られる児童文学作家の那須正幹さん(72歳)も 「受賞すれば日本国民全員が受賞者になる。 9条の素晴らしさや重みを再認識できる」と期待する。 広島市出身の那須さんは3歳のときに被爆。 戦後,新憲法ができ,大人が戦争放棄と民主主義を喜んでいたのを覚えている。「改憲の動きが進むなか,9条は最大のとりでみたいなもの」。 受賞すれば誰が授賞式にいくのか気になる。「もっとも9条の意義を再認識して もらいたいのは安倍首相。 受賞のお礼をどういうのか,ぜひコメントを聞きたい」。 “ 補注)問題は安倍晋三だけではない。 この男は,いまの自民党的な政党体質の最上層に浮いている問題児であるに過ぎない。 積極的平和主義を「集団的自衛権行使」の容認によってこそ実現できると考えて いる単純思考の首相が,安倍晋三である。 安倍晋三は敗戦後に「押しつけられた憲法」を,自分がどこかへ押し返したいのである。 どこへ? あの戦艦大和の「艦内の血の海」のなかへである。 ただし,彼自身は絶対にその船には乗らない。 この条件付きでの話題である。 ※高乗(たかのり)正臣・平成国際大教授(憲法学)の話。 9条は画期的な条文だが, 日本に軍事力が存在しなかった事実はなく,自衛隊も明らかに戦力だ。 いまの東アジアのパワーバランスのなかでは,戦力不保持をかかげる条文と日本の 現実は乖離しており,改憲すべきだ。 『朝日新聞』2014年10月11日朝刊16面
出所)『朝日新聞』2014年10月11日朝刊。 国民の多数が支持する安倍政権が閣議決定で解釈を拡大し,集団的自衛権の行使を 容認している現実があり,9条の理念とは逆行している。 戦力としての自衛隊をもつ違憲状態が放置されたまま9条がノーベル賞を受賞すれば, 欺瞞といわれるだろう。
“ 補注)第9条がノーベル平和賞をもらえなかったのは,よかったのか・悪かったのか。 しかし,そのようなことよりさきに,安倍晋三の政党〔おまけに公明党〕を, つぎの選挙では後退(交代)させるほかあるまい。 そして,もう一度だけは,閣議決定でもって集団的自衛権などに関する〈解釈〉を, せめて「もとに戻しておくべき」である。 なお「国民の多数が支持する安倍政権」という表現は語弊がある。 有権者総数の2割以下の投票数がえていなかったのが,2012年12月衆議院総選挙であった。 2) 戦後への貢献,予測団体評価
受賞予測をしたPRIOはオスロにある民間の研究機関。 国際紛争の平和的解決などに関する研究や情報発信をしている。 ハープウィケン所長が10月6日,取材に応じ,1位にした理由を述べた。 平和賞は「軍の廃止や縮小」などへの貢献者に贈られるとしたアルフレッド・ノーベル の遺志に合致している。 尖閣問題など東アジアで戦争リスクが高まっている。 そしてこの二つにくわえ,安倍政権が9条の解釈を変え,集団的自衛権の行使を 認める閣議決定をしたことで「9条が危機にある」ことを挙げた。 “ 補注)ここの説明はやや強引であり,無理強いの感がある。 つまり「9条が危機にある」のではなく,もはや危機に追いやられてしまった状態にある。
そのうえで,「原爆などで甚大な被害を受けながら,平和のうちに復興を遂げた 日本の戦後約70年間の歩みに共感する人は世界に多い。 平和賞の授与は世界から歓迎されるだろう」と話した。 ただ,PRIOの受賞予測は外れることも多い。ハープウィケン氏が2009年に 所長に就任して以来,的中例はない。 一方で2007年にはゴア元米副大統領と国連の「気候変動に関する政府間パネル」 (IPCC)の受賞を当てた。 2005年の国際原子力機関(IAEA)とエルバラダイ事務局長(当時)の受賞は 前年の予測で挙げた。 2008年の受賞者アハティサーリ元フィンランド大統領の名前は前年まで3年連続で予測リストに挙げていた。 3) キーワード 〈憲法9条〉 (1) 日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し, 国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又(また)は武力の行使は,国際紛争を解決する 手段としては,永久にこれを放棄する。 (2) 前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。 国の交戦権は,これを認めない。 D「『9条,世界が注目した』ノーベル賞,市民団体『来年こそ』」(『朝日新聞』2014年10月11日朝刊) ノーベル平和賞候補の「憲法9条を保持する日本国民」は受賞を逃した。 「残念」「でも平和憲法が世界に注目された」……。 発表を見守った人々が,それぞれの思いを語った。 「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(事務局・相模原市南区)のメンバー13人は, 市内の会見会場に設置された大型画面で,ノーベル委員会の発表中継を見守った。マララさんの受賞が決まると,笑顔で拍手を送った。 9条をトップに挙げる受賞予測もあり,会場には国内外の報道関係者100人以上が詰めかけた。 その前で共同代表の石垣義昭さん(73歳)は語った。 「残念だったが,世界が9条に注目してくれたことに意義がある」。 これまでに集めた賛同署名は44万人以上。来年以降の受賞をめざし,100万人分を集めるという。 「9条にノーベル賞を」と思いつき,昨年5月に署名サイトを立ち上げた主婦の 鷹巣直美さん(37歳)は「ネット上で中傷されて怖くなったが,周囲に助けられた」 と感謝を述べた。 また,「世界中の子どもが戦争で苦しむことがないように,大人は話しあいで解決してほしい」と訴えた。(山元一郎) 「知る意識高まる」。−−「残念だった」「でも来年に期待したい」。 10日夜,東京都千代田区であった「9条の会」主催の学習会でも “落選” が話題に。 9条の会はイラクに自衛隊が派遣された2004年に作家の大江健三郎さんら9人が 呼びかけ人となり,話しあいでの紛争解決を目指して結成された。 事務局長の小森陽一・東大院教授は「今回,国内外で注目されたことで,解釈改憲など 9条の理念と反対のことをしようとしている安倍政権のまやかしを浮き彫りにできた」と意義を語った。 「9条に誇りを感じ,しろうとする意識が高まるはず」。全国での講演で「憲法 の伝道師」を自任する弁護士の伊藤 真さんは話す。 2012年,自民党が憲法改正草案に「国防軍」創設を明記してから, 「9条を学び直したい」との依頼が急増した。 「戦争をしない国」のかたちが変質する危機感がある,と伊藤さんは考える。 “ 補注)日本国じたいは戦争をやってこなかったけれども,在日米軍基地は, アメリカが遂行してきた多く戦争のためにどのくらい役にたっているかを考えねばなるまい。 こちらの話題を外した議論は,核心の論点をみそこなっているといわざるをえない。 今後の受賞はどうか。オスロ国際平和研究所(PRIO)のトネソン前所長(60歳)は 朝日新聞の取材に「今年注目を集めたことで来年はさらに可能性が高まるだろう」と話した。 (清水大輔,オスロ=渡辺志帆) −−もっとも,署名を集めるのであれば,このさい,千万人単位でやるべきではないか? 安倍晋三の政権を足下から大きく揺らがすように「国民たちの声」挙げるのでなければ, 100万人程度では平気で無視されるはずである。 もちろん,ノーベル財団ではなく安倍晋三の自民党が,そうシカトするに違いないという観測である。 皮肉をこめていうが,第9条が平和賞を受けたところで,日本のなにが変わりうるというのか? 北朝鮮の拉致問題が一気に解決するか。 中国や韓国との交流(善隣友好関係)がいまより大幅に進捗可能になるか。 いま確実にできることは,せいぜいいいところで,日本の自衛隊をより十全に 「アメリカ国の傭兵」にするだけのことである。 安倍晋三は「戦争のできる国」にこの日本国をしておけば,自分の国際政治力が 増せるものと勘違いしている。 「戦争をしらないボクちゃんの世代」が一国の最高指導者になった。 だが,あの戦艦大和が《血のプールの船》のようになっていた『本当の「戦争の真相」』 とは無縁の観念世界で,それも1人でいい気になって「積極的平和主義 〔のためであれば戦争もするのだ〕」などいった空念仏を唱えている。 この日本国の首相は,集団的自衛権行使を閣議決定という簡便法を使い容認していた。 もうすぐこの首相は,「日本の若者の生命(血)」のバーゲンセールを,どこかの 会場で開催する予定である。 (最新記事の案内省略)以上終り
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