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懲りない朝日新聞のオランダ外相「強制売春」発言報道
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41903
2014.10.08 古森 義久 JPPRESS
朝日新聞は慰安婦問題報道で自らの大誤報を認めた後も、相変わらず実態をゆがめる報道を続けている。
「日本軍による組織的な女性たちの強制連行」が虚構だったことを認めながらも、なおも論点を巧妙にずらして、「強制」を拡大し、自紙の大誤報を正当化しようとする姿勢が顕わである。反省の色はまったく見られないと言ってよい。
■「強制連行」を「強制売春」にすり替え
朝日新聞のそんな歪曲報道の最近の実例が、10月5日朝刊の国際面に載った「『強制売春 何の疑いもない』」という見出しの記事だった。副見出しには「インドネシア売春婦 オランダ外相発言」と記されていた。ハーグ発の梅原季哉記者の記事である。
この記事は以下のような記述から始まる。
「オランダのティマーマンス外相は3日、第2次世界大戦中に日本軍が占領した旧オランダ領東インド(現インドネシア)での慰安婦問題は、『強制売春そのものであることには何の疑いもない、というのが我々の立場だ』と発言し、慰安婦問題を巡る謝罪と反省を表明した河野談話について、見直しを求める日本国内の動きを牽制した。ハーグの同国外務省で、日本メディアを対象にした記者会見で発言した」
この記述だけでも、これまでの焦点をずらし、ぼかしている点が2つある。
まず、「強制売春」という用語の曖昧さである。
これまでのいわゆる慰安婦問題での日本糾弾ではまず「強制売春」という言葉はほとんど使われることがなかった。核心はあくまで「強制連行」だった。「強制連行」と言えば、その主語は日本軍とされ、日本軍による組織的な女性の連行こそが日本の国家犯罪として糾弾されたのだ。それをこの記事は「強制売春」という、より定義の不明な、曖昧な言葉に入れ替えてしまった。
第2は「強制売春」という言葉の主語が分からない点である。
売春を強制したのは日本軍なのか、それとも中間に入った民間の売春業者なのか。この記事ではオランダ外相がどう解釈しているのか不明である。
問題の記事は次のように続く。
「ティマーマンス氏は『河野談話は、この問題に関する両国間の対話の良い前提となってきた。我々は、日本政府が河野談話を継承する意向であることを完全に支持する』と表明」
「1994年1月に、オランダ政府が公文書館で調査した結果をふまえて当時の外相が出した強制性についての報告書を根拠に『自発的な売春行為などではない』と断言。『実際に経験したオランダ国民はその子孫にとっては、今なお痛みを伴うことであり、両国が高官級で接触する際には、常に提起されるということを理解してもらいたい』とも語り、終わった過去の歴史ではないことを強調した」
以上の記述は、これまた最大焦点の「強制連行」にはまったく触れていない。慰安婦問題の核心部分としてあれだけ強調し、非難してきた「強制連行」という点は消してしまっている。そしてもっぱら意味の不明な「強制売春」という言葉で「強制」だけを強調してみせるのである。
■「スマラン事件」が明らかにした日本軍の方針
しかもこの記事は、第2次大戦中のインドネシアで起きた最大の慰安婦事件についてまったく触れていない。この事件を無視しては、日本とオランダの間で発生したインドネシアでの慰安婦問題を語ることはできないはずなのだ。そして、ティマーマンス外相の実際の言葉がこの朝日新聞の報道の範囲を出ないのだとすれば、その態度も不公正と言わざるを得ない。
この事件は、日本軍が占領中のインドネシアで1944年に起きた。スマランという町の慰安所に日本軍の一部の将兵たちによりオランダ女性30人ほどが連行され、セックスを強要された事件である。後に「スマラン事件」と呼ばれた。
ところがこの事件は、日本軍全体として「慰安婦には自由意思で志願する女性以外は雇ってはならない」という明確な方針を保っていたことを逆に証明していた。
連行されたオランダ女性の父親が日本軍の上層部に直訴すると、上層部はすぐにその明確な方針に沿って、強制連行されたオランダ女性たちを解放し、その慰安所を閉鎖したのである。
日本政府に批判的な立場から慰安婦問題を研究した吉見義明氏も、著書『従軍慰安婦』のなかでオランダ政府の報告書などを根拠にスマラン慰安所事件の詳細を記述していた。
その記述を引用しておこう。
オランダ女性を連行したのはジャワの日本軍の南方軍幹部候補生隊の一部将校たちで、
(1)軍司令部は慰安所では自由意思の者だけ雇うようはっきり指示していたが、同将校たちはその指示を無視した。
(2)連行された女性の父のオランダ人が日本軍上層部に強制的な連行と売春の事実を報告したところ、すぐにその訴えが認められ、現地の第十六軍司令部はスマラン慰安所を即時、閉鎖させた。
(3)同慰安所が存在したのは2カ月間だった。
(4)主犯格とされた将校は戦後、日本に帰っていたが、オランダ側の追及を知り、軍法会議の終了前に自殺した。
なお違法連行に関わった他の日本の軍人、軍属ら合計11人が戦後の1948年、オランダ当局がインドネシアで開いた軍法会議で死刑や懲役20年という重罰を受けた。要するに日本軍でも上層部の命令に違反した戦争犯罪として罰せられたのである。
■まるで未解決のように証言したオランダ人女性
しかし2007年に、米国連邦議会下院での日本糾弾の慰安婦問題決議案審議で開かれた公聴会には、このスマラン事件の被害者の1人だったオランダ人女性、ジャン・ラフ・オハーンさんが登場し、処罰済みの側面をすべて隠したまま、未解決の連行事件であるかのように被害だけを詳しく証言した。
それは日本側がいまだにこの連行を認めず、謝罪も賠償もしていないかのような証言だった。いかにも日本軍全体が女性を強制連行していたかのように響く内容だった。
しかし現実には、オハーンさんが被害を受けた事件は、当時の日本側の規則や方針にも違反した犯罪行為として日本軍上層部にすぐに停止され、厳しい懲罰を受けていたのである。しかもこの事件は、日本軍が全体の方針として「慰安所は自由意思の女性だけを雇うようはっきり指示していた」ことを立証していた。
ところがこの公聴会では、こうした事実はまったく知らされなかった。明らかに意図的に隠されていたと言ってもよい。極めて不公平なプレゼンテーションだったのである。
■すでに清算された出来事を蒸し返す朝日新聞
アメリカでは、「一事不再理」あるいは「二重訴訟の禁止」は、憲法にはっきりうたわれている。アメリカに限らず、ほとんどの法治国家では同様である。1つの事件が裁かれ、判決が確定した場合、その同じ事件について再び公訴はできない。オハーン証言を計画したアメリカ議会側は明らかにこの法治の原則を無視していた。
朝日新聞の記事が伝えたオランダ外相の「(慰安婦問題やオランダ女性の強制売春が)今なお痛みを伴うことであり、(オランダと日本の)両国が高官級で接触する際には常に提起される」という言葉も、公正だとは言えない。なぜなら、その「強制売春」はすでに軍事裁判で裁かれ、被告には死刑をも含む厳罰が科されたからだ。それをまた公式に糾弾することは明らかに「一事不再理」の原則に反する。
さらに日本は、一連の戦争犯罪裁判でオランダを含む戦勝国側から裁かれ、1000人以上の日本国民が死刑となった。1万人以上が戦犯として懲役刑などを受けた。そのうえ、日本はサンフランシスコ対日講和条約などでオランダと講和の合意を結び、戦時賠償を済ませたのである。戦争に関連して相手側に与えた損害への賠償を、国家同士で一括して済ますという作業だった。
であるのに、オランダが慰安婦問題に関して日本に「これからも常に提起される」と言明するのは、あまりに一方的と言える。日本にとっては講和条約や軍事裁判ですでに処理され、懲罰されたことを、あたかもこれまでなんの措置も取られなかったかのごとく糾弾されるのだ。
現在の日本国民の大多数がまだ生まれてもいない時代の出来事を、しかもすでに清算された出来事を、なぜ今また責められ、謝罪を迫られるのだろうか。オランダがそこまでの日本糾弾を続けるのならば、そもそもオランダのインドネシアでの植民地支配になんの悪行もなかったのかと問いたくもなる。
朝日新聞の10月5日付の記事は、こうした背景も文脈もまったく無視したまま、オランダ側の一方的な主張を曖昧な表現で報道しただけなのである。その報道の姿勢や手法はオランダとインドネシアが絡む慰安婦問題の全体像を大きく歪曲していると評さざるを得ない。
こうした記事の背後には、自分たちの報道の過ちや作為を矮小化して、実は自分たちは間違ってはいないのだという本音がちらつくようにも思えてならない。
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