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安倍内閣の新閣僚や自民党幹部が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などの関係者と写真に写っていたことが相次いで発覚した。海外メディアは「安倍首相の頭痛の種」などと指摘。だが国内メディアの反応は概してにぶかった。この「温度差」はなぜ生じたのか。
「在特会のような組織は容認できないと、この場で表明してはどうか」
9月25日に日本外国特派員協会で開かれた山谷えり子国家公安委員長の記者会見。本来のテーマは拉致問題だったが、約30分の質疑の大半は、山谷氏が在特会元幹部と写真撮影をしていた問題に集中した。
「在特会やその理念を否定するべきでは」といった質問が何度も出たが、山谷氏は「いろいろな組織についてコメントをするのは適切ではない」「ヘイトスピーチはまことによくない」などと述べただけだった。
会見で追及した米オンライン誌デイリー・ビースト東京特派員のジェイク・アデルステイン氏は「在特会を一度も正面から否定しなかったことに驚いた。米国なら『大臣と問題団体の関係について疑惑が深まった』と大きく報じられる」と話す。
写真について山谷氏は「たくさんの人とお会いする。在特会の関係者ということは存じ上げていない」と会見で弁明した。政治家は写真撮影を求められれば応じる。相手の素性は確認できない――との理屈は、かぎ十字に似たシンボルを掲げて行動する団体の関係者と写真撮影していた高市早苗総務相や稲田朋美・自民党政調会長らの弁明と共通する。
国内メディアの多くは一連の弁明を淡々と報じた。海外メディアが大きく扱ったことを紹介したメディアもあった。
英インディペンデント紙などに執筆するデイビッド・マクニール氏も「写真だけでは、在特会との関係を証拠づける根拠が弱い」と考えていた。だが、山谷氏が在特会の理念を否定しなかった上、「在日特権とは何か」との質問に対し、「法律やルールに基づいて特別な権利があるというのはそれはそれで、私が答えるべきではない」と答えたのを見て、記事の出稿を決めた。「在日特権の存在を否定せず、特権があると示唆したようにさえ見えた」からだ。
インディペンデント紙は会見内容も含めて問題を詳報。英エコノミスト誌は山谷氏と在特会との関係に触れ、「ヘイトの一部は政権トップからインスピレーションを得ているように見える」と紹介した。だが、国内の大手メディアはほとんど報じなかった。
こうした温度差はなぜ生じているのか。マクニール氏は「一部メディアが安倍政権のサポーターのようになる中、日本のメディア全体が権力批判に過剰に慎重なように見える」という。ドイツ人フリージャーナリストのジークフリード・クニッテル氏は「欧州では、マイノリティーを攻撃するグループの関係者と政治家が同席することは考えられない。日本メディアの多くが問題の深刻さを理解していない。今は言葉の差別だけかもしれないが、いつ暴力に発展するかわからない」と懸念する。
北海道大学の吉田徹准教授(欧州比較政治)は、欧米メディアの反応の背景に「第1次世界大戦後、もっとも先進的な政治体制を持っていたワイマール共和国がナチスを生み、国家として特定民族を迫害したことへの反省がある」と指摘。「日本は民主体制の転覆を経験したことがなく、平等や人権に対する感受性が弱い」という。
差別問題に詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「日本のメディアは、差別を一部の人の限定的な物語としてしかとらえてこなかった」と分析。「でも人種差別は被差別者だけの問題ではない。社会が壊れていることが問題なのだ、という認識を持つ必要がある」(守真弓)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11391096.html
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