http://www.asyura2.com/14/senkyo172/msg/440.html
Tweet |
「天候不順で景気低迷」なんて大ウソ!消費増税の影響無視した内閣府の「素人分析」を暴く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40666
2014年10月06日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
最近の景気低迷について、政府は、消費増税による影響を無視して、天候不順によると主張している。内閣府は、今年の天候不順が経済に与えた影響について、1日に開かれた経済財政諮問会議に報告した。それによれば、今夏の天候不順(低温・多雨)によって、7-9月の個人消費に与える影響は、▲0.2〜▲0.7兆円程度。これを7-9月期のGDPでみると、年率換算で▲0.8〜▲2.4%ポイント押し下げることになる。
甘利明・経済財政相は1日の記者会見で面白いことを言っている(→こちら)。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/1001/interview.html
「7-9月期の民間見通しが4%です。これが仮に天候要因を加味したものであるならば、天候要因がなければ5.6%ということになるということでありますし、天候要因を加味していないのであるならば、それは2.4%になるということだと思います」
天候要因が景気に与える影響がこれだけ大きいなら、これからエコノミストは気象予報士の資格を義務付けないとまずいでしょう。ところで、4-6月期を大きく外したエコノミスト(→8月18日付の本コラム参照)であるが、事前に天候要因を言わずに、外れたら後で天候要因というのは後出しじゃんけん≠ナある。その後出しじゃんけんを、図らずも甘利経済財政相がばらしてしまったので、笑えた記者会見だった。
まじめに考えて天候要因はどのくらい景気に影響するのだろうか。
もちろん個別の業界では天候は死活問題になることもある。かつて筆者が大蔵省にいた時、酒税収の正確な予測を依頼された。ビールについては夏の気温で大きく消費量が左右されるので、天気の長期予想を織り込んで、税収予測を行ったこともある。
ただ、マクロ経済では天候要因をあまり考慮することはなかった。内閣府は一体どのように、天候の影響をマクロ経済と結びつけているのだろうか。
■今夏は特に「低温・多雨」ではなかった
経済財政諮問会議に報告した資料は公開されている(→PDFはこちら)。それによれば、基本的には、@気温が夏物商品等(気温による影響が大きい品目)に与える影響試算と、A降水量が消費に与える影響試算によっている。この両者で影響額は▲0.7兆円なので、最大影響になっている。
資料では、@の影響額は▲0.5兆円、Aは▲0.2兆円となっている。両者の推計方法は異なっており、@は〈総務省「家計調査」等により、平均気温が、飲料、酒類、アイスクリーム、外食、白物家電、電気代の消費支出に与える影響を推計。それぞれの影響額を積み上げ〉とミクロ的な手法で、Aは〈内閣府「国民経済計算」等により、降水量が個人消費に与える影響を推計〉とマクロ的になっている。
なお、別の方法でも、天候の消費に与える影響を試算しているが、消費減少をすべて天候のためとみなすなどいささか乱暴なものであるので、@とAに絞ってみよう。
そこで、本コラムではこの試算を考えてみる。この内容は、いささかオタク系であるので、結論だけを知りたい人は読み飛ばしたらいい。ただし、そうした人は統計リテラシーに欠けるので、政府資料や政府資料を無批判に垂れ流す新聞報道にも騙されやすいだろう(笑)。
まず、@の手法はまずい。というのは、ある品目が気温の影響を受けて消費量が変わると、その代わりに他の品物の消費量が変化することを考えていないからだ。内閣府の資料にも、注として小さく「各品目の消費減を受けた他品目の代替需要増は考慮していないことに留意が必要」と書かれているが、役所の資料では、小さな注が重要な意味を持つことが多い。要するに、はっきりいえば意味のない推計だ。
Aは一応、マクロ的な手法である。実質家計最終消費支出(前年比)を、実質雇用者報酬(前年比)と降水量(前年比) で回帰分析している、だったら、同じ手法で、@をやらないのか不思議だ。担当者は、当然@もやっていると思われるが、あまり都合のいい結果でなかったのだろう。それで、@はミクロ的な手法になっていると思う。
次に、データで今年の7-9月の天候を振り返っておこう。この種のデータは気象庁に豊富にある(→こちら)。上記Aでは、北日本、東日本、西日本で天候データを使用しているので、7-9月におけるそれらの気温と降水量の平均を調べよう。
気温は平年との差であり、以下のように、今年は平年並みだった。特に低温ではないが、前年と比べると1℃程度低かった。
降水量は平年に比べた割合(%)であり、以下のように平年に比べると14%程度多かった。ただし、前年も8%程度多かったので、前年と比べると6%程度の増加だけだ。
いずれにしても、今年7-9月の気温と降水量を見る限り、特別に低温・多雨というわけではない。
■高市総務相の意向に沿った?稚拙な素人分析
さて、気温が消費にどのような影響を及ぼすかを調べよう。手始めに、気温の前年との差と消費伸び率の関係を見てみよう。
気温と消費には、相関係数0.39と弱い相関があるが、正直言って、この弱い相関をもって、気温が消費に影響を及ぼしていると断言するのはやや無理があるだろう。Aのように、実質雇用者報酬(前年比)を説明変数に加えれば、多少全体の説明力は高くなるが、どうにも気温の消費への影響は弱いままだ。
上の図での気温と消費の関係は弱いものの、あえて気温の1℃の変化に対応する消費の変化は年率換算で0.7%程度、GDPの年率換算で0.5%程度である。したがって、今年の気温変化1℃の低下では、7-9月期のGDPは年率換算で▲0.5%程度の押し下げだ。
次は、降水量と消費だ。降水量の前年比、消費伸び率の関係を見れば、以下のとおりだ。
降水量と消費の相関係数は▲0.18、これは相関がないと言っていい。というわけで、降水量の消費への影響は無視できる。
以上をまとめると、今年の気温は平年並で、昨年より1℃程度低いが、その消費へ与えるは軽微で、せいぜい7-9月期のGDPを年率換算で▲0.5%程度押し下げるかもしれない。もっとも、その確度はかなり低い。
また、今年の降水量は平年より14%程度多かったが、降水量と消費には明瞭な関係は見出されず、7-9月期のGDPについて影響は無視できる。
以上の分析が正しいとすれば、低温・多雨が消費に与えた影響はほとんどないと言える。筆者から見れば、内閣府の分析は酷く、素人レベルである。この杜撰な分析を経済財政諮問会議に出すとは呆れて物が言えない。筆者はかつて経済財政諮問会議の裏方をやっていて、いくつもの分析ペーパーを書いたことがあるが、その経験から言えば、会議には出せるレベルではない。
総理、経済主要大臣を時間拘束する経済財政諮問会議なのだから、もっとまともな議論をしてほしい。それができなければ、総理が出席するのは時間の無駄である。しかも、この程度の分析のまやかしを見抜けない委員も経済分析では素人レベルで、有識者失格と言わざるを得ない。
そもそも、この天候の消費への影響試算は、高市早苗総務相が要請したものである。高市総務相は、かねてより消費増税を予定通りに上げたいと主張していた。そこで、内閣府は無理矢理「影響あり」との結論ありきで試算したのではないか。推計手法の稚拙さ等から、そう思わざるを得ない。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK172掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。