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[風見鶏]献金再開の損得勘定
編集委員 大石格
20年あまり前、経団連の平岩外四会長の自宅にたまに夜回りに行っていた。そのころ担当していた政治家と親しかったからだ。
「最近、会ってません」とか、「こないだこんなことを言ってました」とか。ほとんど立ち話だった。
ある日、「入りませんか」と部屋に通された。ついに一人前扱いになったかと舞い上がり、何を話したかは覚えていない。
程なくして、その晩の平岩氏がなぜ親切だったのかがわかった。経団連が長年続けていた自民党への企業献金のあっせんをやめることにしたのだ。
察知されたのならば、聞きかじりで記事を書かれるよりも正直に話そうと思ったのだろう。筆者の勘の悪さにあきれたに違いない。
平岩氏はなぜ献金の取りまとめ役を降りたのか。最終決定は自民党の野党転落後だったが、献金中止はかなり前から決心していた。言葉の端々に企業が政治にかかわりすぎるのはよくないとの思いが感じられた。
ゼネコン汚職などが起き、企業献金イコール賄賂というイメージの時代だった。1994年には国費で政党活動を支える交付金制度ができた。自民党は社会党の村山富市氏を首相に担いで与党に復帰した際、企業献金の受け取りを近くやめると宣言した。
その後の変遷を手短に振り返ろう。数年後、自民党はこの公約をほごにする。衆院選に勝ち、社会党がご用済みになったからだ。経団連は2004年に自民党と民主党の政策のよしあしを比べる形で、自民党への応援を再開した。09年に自民党が再び下野すると献金の呼びかけを中止したが、先月また始めると発表したのはご存じの通りである。
自民党本部に報告に訪れた経団連の榊原定征会長を谷垣禎一幹事長は「ありがたい」と丁重に迎えた。2000年以降、年間30億円程度だった自民党への献金総額が経団連が手を引くと10億円台前半に減っていたのだから当然だろう。
ただ、自民党は手放しで喜んでいるわけではない。財務委員長を経験した中堅議員に聞くと「あんなに大声で言わなくてもいいじゃないか」と不機嫌だった。
榊原会長の「政治と経済が徹底的に手をつなぐ」との大仰な発言で引き起こされる「安倍政権は大企業優遇」との批判で票が減りかねない。自民党は12年の衆院選と13年の参院選に連勝し、受け取る政党交付金が50億円以上増え、財布は潤沢だ。10億円や20億円の献金増で恩を着せられても困る。そんな話だった。
臨時国会冒頭の与野党の代表質問で、民主党の海江田万里代表は「国民には税負担を求め、大企業には自民党への企業献金を求めるのか」と攻撃した。
維新の党は国会議員が年間1200万円もらえる文書通信交通滞在費の使途公開義務付け法案を近く国会提出する。政党交付金や立法事務費の制度改革案も検討するそうで、政治とカネの問題を取り上げることで「古い自民党」の復活を印象付ける作戦だ。
最高裁は70年に企業献金は合法との判決を下した。その意味で献金再開にとがはないが、企業献金を好ましくないとみる国民が少なからずいることも事実だ。再開は自民党に果たして吉と出るか凶と出るか。すべては次の衆院選の結果次第である。
ちなみに先述の議員によれば、政権奪回とともに自民党への企業献金はすでに増加傾向とか。13年分の政治資金収支報告でそれが明らかになれば、経団連はその存在価値を問われかねない。2カ月後の報告書公表は安倍政権と経団連の力関係を大いに左右する。
(編集委員 大石格)
[日経新聞10月5日朝刊P.2]
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