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画像は初公判後に記者会見した藤井市長(中央)と弁護団
参考人失神、実況見分せず、調書を“作文” 【美濃加茂市長収賄疑惑】でまたも当局が暴走
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140924-00010009-bjournal-soci
Business Journal 9月24日(水)19時13分配信 江川紹子/ジャーナリスト
検察は、現厚生労働省事務次官の村木厚子さんを巻き込んだ郵便不正事件から、いったい何を学んだのだろうか? ――最年少市長として知られた岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長が、災害対策用の雨水浄水プラントの導入をめぐって現金合計30万円を受け取ったとして、収賄などの疑いで起訴された事件の裁判が9月17日に始まったが、早くも捜査の問題点が見え始めている。
●“犯行現場”の実況見分を怠った検察
検察側の主張によれば、藤井市長は市会議員だった頃に、業者からの依頼を受けて市にプラント導入を働きかけ、2回にわたって賄賂を受け取ったという。一方、藤井市長は初公判で、現金の授受について「一切ありません」と無罪を主張。さらに、「市にとって有意義な事業であると考え活動をしていたもので、業者に依頼を受けたから動いたのではありません」と述べ、請託の存在も否定した。
検察側冒頭陳述によると、現金の授受は1回目がファミリーレストラン「ガスト」美濃加茂店で10万円、2回目が名古屋市内の炉端焼き店で20万円となっている。ところが、犯行現場であるはずの、この両店の店内の状況を明らかにする実況見分を捜査期間に行わないまま、検察は藤井市長を起訴した。
弁護側は、当然、実況見分調書が作成されているものと考え、公判前整理手続の中で証拠開示を求めた。そこで、実況見分が行われていないことが明らかになった後、裁判所の示唆もあり、ガストについては8月25日、炉端焼き店については初公判直前の9月9日になって、ようやく実況見分が行われた。そのため、炉端焼き店の実況見分調書は、公判前整理手続が終了するまでには証拠請求できなかった。本来、公判前整理手続が終わってから、証拠を後出ししてはいけないことになっている。この場合は、弁護側が同意したこともあって、「やむを得ない事由により公判前整理手続で証拠請求できなかった証拠」として採用された。
両店は、検察側の主張によれば、まさに犯行現場。そこでの言動について、関係者の供述が信用できるのかを確認するうえでも、現場の客観的な状況を確かめ、記録しておくことは、基本中の基本だろう。こんな基本的な証拠を後出ししなければならないとは、実に恥ずかしい話ではないのか。
実際、贈賄を認めている業者側の供述と現場の状況がそぐわない点も出ている。
●関係者を失神するまで追及した警察
いずれの会食の場にも、市長と業者の双方を知る男性Tさんが立ち会っていた。Tさんは、現金の授受は「見ていない」と明言している。検察側の冒陳陳述では、その理由について、業者は市長に現金を渡すところをTさんに見られたくなかったため、ガストにおいては「Tさんがドリンクバーに飲み物を取りに行くために席を外した」隙に、金を渡したためだと説明している。炉端焼き店においても、Tさんが席を外した間に渡した、としている。
ところが、実際にガスト美濃加茂店に行ってみると、市長らが座っていた席はドリンクバーの隣で、距離にしてほんの3メートルほど。しかも、店内には衝立もなく、座ったまますべての座席の人の顔がわかるほど、見通しもよい。Tさんに知られたくないという業者が、こっそり賄賂を渡す場所として、こういう場を利用するのは、実に奇異な印象をまぬがれない。
村木さんが巻き込まれた大阪地検特捜部による郵便不正事件の捜査でも、似たようなことがあった。検察側は、係長が偽造した証明書を村木さん(事件当時は厚労省の課長)が自称障害者団体の代表者に自席で渡したと主張した。村木さんと机を挟んで向き合い、「表彰状を受け取るように」して渡されたという供述もあった。しかし、当時の村木さんの机の前には衝立があり、その向こうにはスチール製キャビネットが置いてあって、とても供述通りの状況は再現できなかった。検察は、厚労省の中の実況見分すら行わず、「偽造証明書の受け渡し」という“犯行現場”の客観的状況を確かめようともしなかったため、問題に気づかなかったようだ。
検察は客観的状況を確かめるより、関係者に村木さんを事件に巻き込む供述をするよう迫り、彼らの記憶とは異なる調書をせっせと作っていた。このように、客観的な状況を無視して、取調室の中で調書作りに励む捜査のやり方が、冤罪を作る一因だった。
そうした捜査について、検察は反省したはずではなかったのか。
ところが、藤井市長の事件でも、検察側は現場の実況見分は置き去りにしたまま、ストーリーに沿った調書作りに精を出した。会食に立ち会ったTさんが何度も呼ばれて事情聴取を受けた。警察では、捜査側の筋書きを認めさせようとTさんを責め立て、体調不良で失神するまで追及している。検察でも、現金授受は目撃していないと述べると、検察官は調書の中に、「仮に、お金を渡しているとするなら、私がトイレや電話などで席を外した際に渡しているのではないかと思います」という一文を潜り込ませて署名させたうえ、この調書でTさんが中座を認めたかのように主張。冒頭陳述でも、Tさんが席を外したことが確定的事実であるかのように書かれている。なお、Tさんは私(江川)の取材やネットメディアなどで、「席は外していないはずだ」と繰り返し述べている。
裁判では、今後、業者やTさんらの証人尋問が行われる予定だ。業者は贈賄の起訴事実を認めているが、その供述が、どのような捜査を経てなされたのかについても、裁判の中で十分問いただされることを期待したい。
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