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新聞に対する軽減税率の適用問題の背景に大規模なメディアコントロール、連動した2つの政府戦略
http://www.kokusyo.jp/%E6%96%B0%E8%81%9E%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E8%BB%BD%E6%B8%9B%E7%A8%8E%E7%8E%87%E3%81%AE%E9%81%A9%E7%94%A8%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AE%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%AB%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1/
2014年09月22日 MEDIA KOKUSYO
「歴史は繰り返す」という格言がある。真理ともいえるし、事実を正しく捉えていないとも言える。同じことを繰り返しているように見えても、歴史は少しずつ異なったステージへ進んでいるからだ。
権力を掌握している層がメディアをコントロールする際に念頭に置いてきた原理は、一貫して変化していないが、それを取り巻く条件や狙(ねらい)は、徐々に変化している。
解釈改憲が閣議決定されたり、特定秘密保護法が審議を尽くさずに国会を通過した背景に、軍事大国化という日本の進路を決定的にかえてしまう国策に連動したメディアコントロールが進行していることは間違いない。
◇出版界が朝日を総攻撃した本当の理由
メディアをコントロールする最も効率的な方法は、メディア企業の経営上の弱点や既得権、それに「汚点」を把握して、この部分に対して「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策で攻撃を加えることである。
現在、メディアコントロールの道具にされているのが、出版物に対する消費税率の軽減適用問題である。これは出版業界にとっては死活問題である。新聞社だけではなくて、出版社にとっても無視することができない。かりに出版物に対して10%の消費税を課されたら、壊滅的な打撃を受ける。
朝日新聞社に対する束になったバッシングもこのような脈絡で考えるとわかりやすい。日本の言論が、巧みな「「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策でコントロールされていく兆候にほかならない。「大本営ジャーナリズム」の始まりである。
◇経営上の弱点と汚点を逆手に
新聞社を含む出版業界には、次のような経営上の汚点や既得権益がからんでいる。
@再販制度(既得権益)
A「押し紙」問題(汚点)
B新聞の折り込みチラシの「水増し問題」(汚点)
C公共広告の出稿(既得権益)
内閣府からわたしが入手した資料によると、国の借金が増え続けるなかでも、2007〜2010年の4年間で、朝日、読売、毎日、日経、産経の紙面広告に対して、計約50億円も支出されていた。最高額は、読売とその広告代理店に対する約21億円である。
■参考記事:
主要5紙への政府広告費支出、4年間で50億円 最高額は読売とその代理店に対する21億円
http://www.mynewsjapan.com/reports/1750
D消費税の軽減税率問題
◇小渕政権とメディアコントロール
国策とメディアコントロールの関係を示す典型例としては、たとえば再販制度の撤廃をほのめかしながら、軍事大国化を進める法案を次々と成立させていった同時代史がある。
再販制度の撤廃問題は、1990年代の中頃から浮上した。新聞業界はこれに猛反発して、反対運動を展開した。
公取委は1998年3月に、結論を先送りする決定を下した。ちなみに公取委の委員長は、内閣総理大臣によって指名されるので、政府の方針に反して公取委が動くことはありえない。
興味深いのは、出版業界が再販問題「救済」してもらった後の動きである。3ヶ月後の7月に小渕恵三内閣が成立した。この小渕という人物、温厚そうにみえるが、したたか者である。公共事業に予算をつぎ込み、日本を借金大国にしただけではない。
当時、小渕氏は、自民党新聞販売懇話会の会長だった。同懇話会は、新聞業界の政界工作の窓口で、1987年中川秀直氏らによって結成された。懇話会の多くの議員が政治献金を受けてきた。
出版業界が「救済」された翌1999年、小渕内閣の下で日本の軍事大国化に扉を開くとんでもない法律が次々と成立している。具体的には、新ガイドライン、住民基本台帳法、通信傍受法、国旗・国歌法などである。
◇小泉内閣とメディアコントロール
2001年3月、公取委は、再販問題に関する最終報告書を発表した。「著作物再販制度の取扱いについて」と題するその文書は、「著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し,一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨」となっていた。
つまりいつでも再販制度を撤廃できる状態にして、再び出版業界に圧力をかけたのである。
公取委が最終報告書を発表した翌月に、小泉内閣が成立した。小泉内閣は、小渕・森内閣で足踏みした構造改革=新自由主義の導入と、軍事大国化をドラスチックに進めたことで特徴づけられる。
たとえば軍事大国化に関しては、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法、さらに有事立法を成立させ、戦後、はじめて自衛隊を戦場(後方)へ送り込んだ。
さらに自衛隊法を「改正」することで、現在問題になっている特定秘密保護法の原型ともいえる特定秘密に関する条項を付け加えている。こうした動きは、メディアではほとんど報じられていない。政府に対する「恩返し」か、さもなければ、政治記者が仕事をしていなかった証である。
◇新井直之氏の『新聞戦後史』
新聞研究者の故新井直之氏は、『新聞戦後史』の中で、公権力が言論統制を行うときに、経営上の弱点を攻撃する原理を、次のように説明している。
1940年5月、内閣に新聞雑誌統制委員会が設けられ、用紙の統制、配給が一段と強化されることになったとき、用紙は単なる経済的意味だけではなく、用紙配給の実験を政府が掌握することによって言論界の死命を制しようとするものとなった。
歴史は繰り返す。しかし、現在は、少なくとも言論で対抗できる時代である。それが昔とは決定的に異なる点だ。と、すれば優等生かエリートのように弱気になって、安倍内閣の前にひれ伏すのではく、逆に安部内閣に対して言論の大攻勢をかけることである。
そうすれば1月もすれば、降参するだろう。それができないところに、「お受験」制度の弊害を感じる。
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