http://www.asyura2.com/14/senkyo171/msg/678.html
Tweet |
[けいざい解読]どうなるTPP交渉 忍び寄る漂流リスク
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が、漂流の危機に直面している。膠着状態の打開を目指して甘利明経済財政・再生相が23日に訪米、フロマン米通商代表部(USTR)代表と膝詰めの協議に臨む。
「いよいよ甘利氏の登場とは、予期せぬ良い知らせだ」。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のある外交官は、興奮した声をあげた。日米の閣僚会談は5カ月ぶり。両国の一挙手一投足を、他の交渉国は固唾をのんで見守っている。
経済規模でTPP域内の8割を占める日米が2国間の懸案を解決しない限り、12カ国全体の合意もない。21世紀型の通商秩序を築く歴史的な試みは、失敗に終わるかもしれない。そのリスクを熟知し、日米ともに合意への意欲は強い。
両国が異なるのは「日程」をめぐる感覚だ。アジア太平洋経済協力会議(APEC)で各国の首脳が集まるのは11月。その機会に大筋合意する目標は共有するが、ゴールに至る道筋の描き方が決定的に違う。
米国のUSTRは協議をできるだけ引き延ばし、最後の瞬間まで譲歩しない戦術を得意技とする。とりわけ11月4日の中間選挙が迫る今は、安易に日本に妥協したとみなされて米国内で批判を浴びる行動はとれない。
フロマン代表は甘利氏との会談を最終決戦の場とは考えていないだろう。APEC直前まで引っ張る腹づもりではないか。日本との合意を、パズルの最後の1ピースをはめる作業と考えている節がある。
一方、日本には協議を急ぎたい事情がある。仮に農産品5項目など米国との2国間の問題を片付けることができたとしても、他の10カ国との交渉が残っているからだ。後から交渉に加わったため、周回遅れを挽回しなければならない。
9月上旬にハノイで開いた首席交渉官会合で、日本は精力的に動いた。米国以外の7カ国と個別に関税交渉をこなした。
ひそかに来日したオーストラリア外務貿易省の次官とも、関税に絞って協議を詰めた。だが、いずれも完結には至らない。日米間で未決着の品目には触れられず、自由化リストに、ぽっかり穴が開いたままだ。
足を止めて日米の動きを待つ新興国。甘利・フロマン会談に強い期待を抱くのは、当事国である日米以上に、他の交渉国かもしれない。
事実上の交渉期限として、オバマ大統領が自ら設定したAPECまで、1カ月半。それでも米国は、ぎりぎりの瀬戸際戦術に貪欲さを隠さない。日米協議が延びるほど、日本が他国との交渉に使える時間は短くなる。
日米の呼吸が合わず、日程をめぐる感覚のズレが続けば、全体のTPP交渉が時間切れとなり、大筋合意の機会を逸しかねない。漂流の最大のリスクがここにある。
「誰のせいで失敗したかという、不毛な非難の応酬が始まるかもしれない」。先週来日したUSTRの元高官は、罪のなすり合いの渦の中に自由貿易の理念が消えていくシナリオを案じた。そんな日米の姿は見たくない。
(編集委員 太田泰彦)
[日経新聞9月21日朝刊P.3]
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK171掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。