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STAPの悲劇を作った人たち(9) 主犯 NHK-5 個人をリンチした公共放送
http://takedanet.com/2014/09/stap9nhk5_3ed0.html
平成26年9月12日 武田邦彦(中部大学)
2014年7月末に放送されたNHKのSTAP事件の特集番組はその内容もともかくながら、1)小保方さんを取材で怪我をさせた、2)私的なメールを男女関係を匂わせる映像で流した、という二つの「公序良俗」に反することをしたことに絞りたい。
NHKが7月末の番組制作にあたって最後の取材をしていた7月中旬、笹井さんは記者会見でチェックが甘かったことを認め、小保方さんはSTAP細胞の再現実験に取り掛かろうとしていた。すでに問題となったSTAP論文が取り下げられ、NHKの言うところでは「論文が不適切だった」という点では何の問題もなくなった。次は、理研の不正な委員会で小保方さんが不正とされた処分をどうするかという理研内部の問題と、STAPの再現実験にある程度の意味はあったが、すでにSTAP事件についてはケリがつき、NHKが放送するようなことはなかった。
この時点で相変わらず、小保方さんを追求していたのは、三流週刊誌は別にして、毎日新聞、分子生物学会ぐらいなもので、もしこれ以上の追求をするなら「理研はなぜあれほどの大々的な記者会見をしたのか」とか、「科技庁と理研の癒着問題」などであった。
ところが、NHKは「国民の知る権利」という名目で、小保方さんが実験のために研究室に行く途中を襲ってホテルの中を追い回し、カメラマンが逃げ惑う小保方さんをエスカレーターかエレベーターに追い詰め、2週間の怪我をさせた。
この怪我について、多くの新聞が「軽微な怪我」という表現をした。仮にマスコミ以外の一般人が第三者を追い詰めて怪我をさせたら、マスコミはかなり厳しくバッシングしたと考えられる。なぜ、マスコミが「軽微な怪我」としたのか、それはマスコミ同士のかばい合いと、小保方憎しの感情にほかならない。
さらに逃げ惑う小保方さんを女子トイレまで追い詰め、NHKの女子社員がトイレの中まで入って閉じ込めるに至った。現代の日本で犯罪人でもない一人の若い女性をこのように取り扱うのは「重罪」であり、「公序良俗に反する」と言える。
日本は法治国家であって、「NHK暴君支配国家」ではない。NHKは一般人を追い詰め、トイレに閉じ込め、怪我をさせる権利はない。
さらに番組では、笹井さんと小保方さんの私信(メール)を公開した。それも本人ではない人がナレーションをつけて読み上げた。実に醜い番組だった。メールというのは手紙と同様に「私信」である。犯罪捜査や裁判では証拠として採用されることもあるだろうが、それ以外はメールを暴くことは許されることではない。
もし、普通の人(たとえば私)のメールが何か起こったら直ちにNHKが公開するというのでは到底、安寧な人生を送ることができない。普通、男女間ではある程度の男女の関係を類推できるようなメールがありうる。たとえば男女になんの関係もなくても、社交辞令として「この前の食事は楽しかった。またご一緒に」などというメールもありうる。
しかし、そのようなメールをナレーションつきで怪しげな放送をしたら、多くの人は誤解するだろう。それではたまらない。幸い、笹井さんと小保方さんの間のメールは実に真面目なもので、本当によかった。この日本が憲兵国家、しかもそれがNHKという公共放送を通じて流れるようになったかと思うと、このことに反撃するマスコミ関係者や学者が少ないことに驚く。
法治国家においては「良い悪い」を任意の団体が決めて、その力でするのはリンチというもので、それは「娯楽」に基づいて行われる野蛮な行為である。このことだけでもNHKは公共放送としての資格はない。
際限なく続く理不尽なバッシング、それも公共放送としてのNHKの私的リンチに耐えられず、笹井さんは命を落とした。実に無念だっただろう。笹井さんはなにも悪意はなかった。若山氏の依頼を受けて若山氏の論文を書き直してネイチャーに掲載させるように努力しただけだ。
その人を死に追い込むまで、不当なバッシングを続け、けがを負わせ、私信を公開し、苦しい研究をしたことがない評論家を集めて、当人たちを出席させないまま、すでに取り下げた論文の批判を行うなど、今後の日本の科学を考えるとゾッとすることをNHKがやった。
笹井さんの死の責任をとり、NHKが何らかの措置をすることを望む。今回のSTAP事件はテレビと新聞が(裁判などではなく)、一個人を追い詰めて自殺するまでやめないということが起こることを実証した。日本のマスコミがこのような暴力、リンチをするようになった現状は日本の正しい発展に間違いなく障害になる。
マスコミ・リンチ殺人というべきであり、鳥インフルエンザの浅田夫妻に続く大きな不祥事である。隠すことなく、この問題に関する全てのこれまでの取材記録などをネットで公開し、批判を受けるのが望ましい。
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