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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140917-00010002-shincho-soci
「週刊新潮」2014年9月18日菊咲月増大号
池上彰氏の原稿掲載を拒絶――。先週、報道機関とは思えない言論封殺を本誌につかまれると、朝日新聞は紳士にはあるまじき姑息な手段で、情報の収集および操作に走ったのである。
***
自らの慰安婦報道についてのお粗末すぎる検証記事が、各方面から猛烈な批判を浴びてから、朝日新聞は明らかに右往左往している。9月2日、同社の広報部長から本誌編集長宛てに送られてきた「申入書」も、その一例である。そこには、
〈貴誌9月11日号の新聞広告には、「池上彰が連載引き上げを決めた朝日新聞の言論封殺的掲載拒絶」との記述がありますが、弊社として連載中止を正式に決めたわけではありません〉
などと書かれていた。
送付主が言及したのは、池上彰氏のコラム「新聞ななめ読み」が掲載を拒絶された、と報じた本誌記事の見出しである。
だが、おかしいではないか。9月4日に発売される本誌の見出しは本来、朝日新聞社広報部が知るはずはなく、知っていてはならないものなのだ。と言うのは、週刊誌の広告は発売日より前に新聞社に提示されるが、あくまでも、広告の適格性を審査するため。もし編集部門に自由に開示できるなら、スクープのピンハネが自在にできてしまう。
そこで、翌3日、新潮社広報宣伝部から「広告の目的外使用である」と、朝日新聞社広告局に抗議したところ、4日、同じ朝日の広報部長から弊社広報宣伝部長宛に、「おわび」と題した文書が届いたのである。
〈広告審査のためにご呈示いただいた広告原稿を本来とは違う用途で用いたことは、通常の商慣習を逸脱した行為であり、深く反省しています。(中略)おわびを申し上げます〉
吉田清治氏による“慰安婦狩り”の虚言を繰り返し報じ、32年間も放置しながら、今なお一切の「謝罪」を拒んでいる新聞社が、簡単に〈深く反省〉し〈おわび〉するとは面食らうが、ともかく呆れるのは、自ら認めているように、部外秘のはずの本誌の広告原稿が、社内にダダ漏れになっていたことである。
危機管理コンサルタントの田中辰巳氏が言う。
「広告原稿を受け取った朝日側は、内容に問題があれば広告主に“編集サイドに確認させていただいていいでしょうか”と、問い合わせるべきで、それをしないのは裏切り行為。いきなり他部署である広報部からクレームがついては、怖くて広告を出せません。週刊誌のスクープばかりか、一般企業が新商品の広告を朝日に出すときも、渡した原稿を他部署が勝手に見て、自分たちの企業活動に使う可能性が疑われます」
はたして、朝日新聞は意図的に不誠実を繰り返しているのか、それとも、組織が機能せずに支離滅裂になっているのか。いずれにせよ、池上彰氏の話を聞いても、朝日の主張との齟齬が次々と浮かび上がる。
■「自分たちは被害者」
朝日は6日付朝刊に、池上氏の連載不掲載問題について、東京本社報道局長の市川速水氏の名で〈読者の皆様におわびし、説明します〉と題した“釈明”を掲載した。そこには、池上氏に原稿の〈修整の余地があるかどうかを打診しました〉と書かれている。しかし、池上氏に聞くと、
「8月28日、朝日の担当者から“至急会いたい”という電話があり、来てもらうと、“今回は掲載を見送りたい”と言われました。そのとき修整の提案はありませんでしたよ」
と返答するのだ。また、先に紹介した本誌への、朝日新聞広報部長からの「申入書」に、〈連載中止を正式に決めたわけではありません〉と書かれていたことをぶつけても、
「“信頼関係が崩れたと判断しますので、これ以降は打ち切らせてください”と申し入れたので、私はこの連載はもう終わったと思っていました」
そう答えるのだ。亀裂をなるべく小さく見せたいという、朝日の焦りが垣間見えるではないか。また、池上氏は連載の今後について、
「朝日新聞は率直に誤りを認めたので、それは受け入れましたが、“じゃあ連載を再開しよう、とはいきませんよ。今後の姿勢を見て考えさせてください。今は白紙です”と答えました」
と言う。だが、以下に述べるような対応を続けているかぎり、池上氏が朝日への信頼を取り戻すとは、到底思えないのだが。
くだんの“釈明”記事には、池上氏の原稿掲載が難しいと判断した理由が、
〈関係者への人権侵害や脅迫的な行為、営業妨害的な行為などが続いていました。/こうした動きの激化を懸念するあまり、池上さんの原稿にも過剰に反応してしまいました〉
と書かれているが、それがなぜ池上氏の原稿を不掲載にした理由になるのか、日本語としても、サッパリわからない。要するに、ごまかしだからである。
「掲載を拒否したら読者や他メディアからどんな反響があるか、と考えて行動するものなのに、朝日には戦術も戦略もないから、自分たちへの批判をかわすことだけに必死になっている」
と、元朝日編集委員の川村二郎氏。京都大学名誉教授の中西輝政氏も断じる。
「朝日はさも自分たちは被害者であるかのような、言いわけがましい理屈をつけ、池上さんの記事を載せれば、関係者への人権侵害が広がるかのような物言いになっている。しかし、これは単純に、朝日が池上さんの言論の自由を侵しているわけですよ。100%自分が悪かったと素直に謝ればいいのに、実に見苦しい」
ちなみに、朝日社内では、先の“釈明”記事を掲載する前日、全社員宛てに、市川氏と東京本社編成局長の渡辺勉氏との連名で、〈「池上彰コラム」の経緯を報告します〉と題したメールが届いていた。そこにはコラム不掲載の理由が、
〈池上氏に対して状況を説明し、「いま、このまま掲載すると読者の混乱を招き、朝日への攻撃をエスカレートさせる恐れがある」という全社的な危機管理の面からの報道・編成局長室の判断を示し、このままの掲載は難しいと伝え、修整の可能性も打診しました〉
と書かれている。すなわち、ごまかしの言いわけに加えて、上層部の判断が危機管理をも考えた結果だったと、自画自賛しているのだ。しかし、このメールに対して朝日の労組には、
〈その判断こそ「危機管理が全くできていない」ものですし、(中略)その人物には危機管理を任せることはできません。今すぐ、今回の件に関わった役員は退陣し、謝罪会見なり開くべきです〉(総局)
〈なぜ池上さんの記事が「攻撃をエスカレートさせる」と判断したのか、まるで理解できない。それは、記事内容がわれわれ社員が考えていることと同じだったからだ〉(編集・男性)
といった声が多数寄せられているのである。
むろん、読者も同じ思いを抱いているようで、
「慰安婦問題で批判にさらされてから8月下旬まででも、長期契約者の解約が20軒ありましたが、池上問題が起きてからは、あっと言う間に40軒にまで膨らんでしまった。ほとんどの方から、一連の対応に対するお叱りの言葉をいただいていますが、こちらではどうすることもできません」(神奈川県内の販売店)
書き手も読者も社員も広告主も無下にして、独りよがりの自己弁護を続けた結果の、四面楚歌である。
「特集 続・おごる『朝日』は久しからず」より
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