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安倍首相支持率の命運を握るのは谷垣幹事長? photo Getty Images
谷垣幹事長を巡る安倍官邸と財務省の消費増税「取り込み合戦」が始まった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40443
2014年09月16日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
先々週(3日)の内閣改造・自民党役員人事で、女性閣僚の登用に次いで政権支持率のアップに寄与したのが、谷垣禎一前法務大臣の自民党幹事長への起用だった。
日本経済新聞の世論調査は、内閣支持率が60%と前回調査(8月)に比べて11㌽上昇した。その内訳にみると、小渕優子経済産業相など女性閣僚の登用を58%、谷垣氏の起用を46%、そして石破前幹事長の交代を32%の人がそれぞれ評価したという。
谷垣人事への評価が高かったのは、まず谷垣氏が総裁経験を持ち、大物幹事長の誕生となったからだろう。加えて、タカ派色の強い安倍晋三首相や石破氏と対照的に、親中派でハト派と目されているかららしい。集団的自衛権を巡る解釈改憲で政府の右傾化に不安を感じた人たちが、バランスがとれると歓迎したとされている。
一方、まったく違う観点から谷垣人事に注視する向きもある。それは、来秋実施予定の消費税率の再引き上げを阻止する布石として、あえて増税容認派の谷垣氏を自民党執行部に取り込んだのではないかというものである。
谷垣氏は1945年3月生まれ。東京大学法学部を出て1979年に8度目の挑戦で司法試験に合格、3年後に弁護士登録をした。その翌年、旧京都2区から衆議院議員選挙に出て、初当選。現在の選挙区は京都5区で、当選11回を誇っている。
政治家としてのキャリアで最も目を引くことのひとつは、1998年に旧大蔵政務次官、2003年から財務大臣をそれぞれ務め、財務省と太いパイプを持つことだ。
2009年に野党に転落した自民党で、損な役回りと言われながらも総裁職に就き、複数の選挙で勝利して政権奪回の基礎を築いた。そして、「社会保障と税の一体改革」に関する3党合意を、民主党政権の野田佳彦首相らとまとめ、解散・総選挙への布石を打った功績もある。
こうした経緯から、谷垣幹事長が、財政再建の重要性や増税の必要性に理解を示してきたことは有名だ。このため、今回の内閣改造・自民党役員人事を受けて、野党から「増税シフト内閣だ」(小沢鋭仁日本維新の会国会議員団幹事長)といった批判も噴出した。
■安倍首相は財政再建や消費増税に思い入れなし
だが、谷垣幹事長と違い、安倍首相は、もともと財政再建や消費増税の実現に強い思い入れがない。むしろ、首相が拘っているのは、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認など安全保障政策の見直しにある。その実現に必要な支持率を維持するために、経済優先路線を掲げてアベノミクスを前面に押し出してきた格好だ。
今春の消費増税の実施決定の際も、容易にはゴーサインを出さず、財務省から財政政策での大盤振る舞いを引き出すのに腐心した。今回も、増税を認めてほしければ、法人税率の引き下げと地方創生のための大型予算措置を実施するよう、財務当局に大幅譲歩を迫る構えをみせている。
首相は内閣改造を受けた3日の記者会見でも、「消費増税は社会保障制度を次の世代に引き渡す責任を果たし、子育て支援をしっかりと行うためのものだ」と増税の意義を認めつつも、「しかし、我々はデフレから脱却をして、経済を成長させる必要がある。麻生太郎副総理・財務大臣はもちろん、同じ閣内にいた谷垣氏もまったく同じ考えだ。先般、実は谷垣氏とこの問題について話をした」と優先順位の違いを強調している。
さらに、「7月、8月、9月の経済の回復を含めて、経済状況等を総合的に勘案したうえで年内に判断する。今後とも冷静に分析を行いながらしっかりと対応する。早期に経済を成長軌道に乗せ、アベノミクスの効果を全国津々浦々に波及させるように、谷垣氏とも力を合わせながら全力を尽くす」と持論の慎重姿勢を前面に押し出した答弁をしているのだ。
これに対して、同日の自民党役員人事決定を受けて行われた記者会見での谷垣氏の受け答えは、なかなか意味深長だった。
谷垣氏は一応、「法律上は8%から10%へ上げていくというレールが敷いてある。消費税(増税)が財政の安定に寄与し、政策の選択肢を広げる」として、「基本は法律に書かれたとおり進めていくということ」と、従来通りの基本姿勢を示した。
しかし、すかさず、「同時に、景気情勢もよく見ていかなければならない。特に7−9月期は、大変な雨が降り、いろいろな問題がある。消費が落ち込んでいる面や、野菜価格が上昇している影響にも十分目を光らせながらやっていかなければいけない」と補足。
さらに、「総理のご指示は、『よくその辺の諸般の事情をよく目配りして進めてほしい』ということでございました。政調会長ともよくご相談をしながらやってまいりたいと思っております」と、安倍首相の意向を尊重していく考えを明確にしているのである。
■安倍首相と財務省の利害一致が気懸かり
そこで、新体制の発足直後に永田町・霞が関を取材すると、案の定、幹事長人事によって、増税に否定的な首相が谷垣氏を取り込んだと受け止める向きは意外なほど多かった。中には、「財務省が目の色を変えて巻き返しに奔走している」と打ち明ける別の経済官庁の幹部もいた。
谷垣幹事長を巡って、水面下で首相官邸と財務省が激しい取り込み合戦を繰り広げているという話は、事実とみてよいだろう。そのことを感じさせずにおかなかったのは、13日の民放のテレビ番組での谷垣幹事長の発言だ。
「(税率を)上げたときのリスクはいろいろな手で乗り越えられる。上げなかったときのリスクは金利動向など、なかなか打つ手が難しい」と述べて、幹事長就任時の発言より、予定通り来年10月に消費税率を10%に引き上げることに軸足を置くスタンスを示した。同じ人物の発言にもかかわらず、政治家や官僚の発言で肝心な意味を持つことが多い語尾の部分がこれだけ違うのは注目に値する。
経済の実態が安倍政権の“大本営発表”よりも遥かに深刻だとみられることは、これまでも何度も本コラムで指摘してきた通りである。
しかし、その一方で、日本は、政府部門の抱える債務が先進国で最大だ。消費増税の実施はある種の国際公約であり、もし、その実施を先送りすれば、日本国債や日本株に対する信任の低下を免れない。
こうした中で、年末へ向けて、増税判断のカギを握る谷垣幹事長を巡る首相官邸と財務省の闘いが激しさを増すのは確実となっている。
最も気掛かりなのは、法人減税や地方へのバラマキという飴を大盤振る舞いして持率を維持したい首相官邸と、予定通りの増税を実現したい財務省の利害が一致し、増税前に経済の好調が演出されて、それだけで終わらないかという点である。
われわれ国民・納税者は、政府が一丸となって、先送りが続く社会保障改革や成長戦略をきちんと成し遂げ、増税後にその悪影響を乗り切る体制がきちんと作られるか注意深く監視していく必要がありそうだ。
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