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欧州なら即刻辞任 高市総務相らが「ネオナチ」とツーショット写真
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014091202000174.html
2014年9月11日 東京新聞:こちら特報部
高市早苗総務相や自民党の稲田朋美政調会長が、ナチス・ドイツを信奉する極右団体男性とツーショット写真を撮影していた。海外の主要メディアは「安倍政権のネオナチ関与疑惑」などと盛んに報じている。議員側は「人物像は知らなかった」と釈明するものの、もともと右翼的な言動で知られる政治家だ。日本の政界やメディアの反応は鈍いが、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の惨禍を味わった欧州の基準では、即刻辞任モノの一大スキャンダルである。 (鈴木伸幸、上田千秋)
■国際社会の信用失う 中央も地方も右翼化する政界
「ネオナチの写真が安倍晋三首相の頭痛の種」。英紙ガーディアン(電子版)が九日、こんな見出しで問題のツーショット写真を掲載した。「日本のネオナチ」を標ぼうする極右団体「国家社会主義日本労働者党」の山田一成代表と一絡に高市、稲田両氏が写っている。いずれも2011年夏に議員会館で撮影された。
高市氏の事務所によれば、雑誌の取材を受けた際に山田氏が補助員として現れ、取材後に写真撮影を求められた。稲田氏の場合も事務所によると、同様の経緯だったそうだ。両氏とも撮影時に山田氏の素性を把握しておらず、その後も接触はないという。
同党は、ナチスと同じく国家社会主義や反ユダヤ主義を掲げている。ホームページ(HP)には、ナチスのシンボル「かぎ十字」が躍る。英文の団体名は「National Sotioalist Japanese Workers Party」。「Japanese」を「German」に入れ替えればナチスそのものだ。海外でのイメージはすこぶる悪い。
ツーショット写真もHPにアップされ、今月三日の内閣改造前後からネット上で問題視された。現在は削除されている。ガーディアンは「両政治家が山田氏に共感しているかは、何の証拠もないが、安倍政権がより右傾化したという批判を勢いづけた」と論評した。
ガーディアンの記事が話題になっているが、もともと口火を切ったのはAFP通信だった。八日に配信すると、欧米を中心に世界各地で大きく報じられ、ガーディアンも引用した。AFPの小澤治美記者は「偽造でないかを確認して記事化した。国際基準からすればニュース」と説明する。
ここに来て高市氏が、ヒトラーの名前を冠した選挙指南書「ヒトラー選挙戦略」(一九九四年の出版直後に絶版)の広告に推薦文を寄せていたことも発覚。同氏の事務所は「本人が著者を知らず、推薦文について記憶がないのでコメントできない」としている。
一方、日本のメディアは、ようやくく共同通信が九日夜に配信したが、ガーディアンなど海外の報道ぶりを紹介しているにすぎない。国際基準では即刻辞任でもおかしくないスキャンダルだ。八八年には、ナチス肯定とも取れる発言で西ドイツのイエニンガー連邦議会議長が辞任している。ところが、日本のメディアの反応はすこぶる鈍い。
国際ユダヤ人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(米ロサンゼルス)のエーブラハム・クーパー副所長は、「こちら特報部」に寄せたメールで「安倍首相はアジアで指導力を発揮しようにも、不幸な過去の歴史が邪魔をしている。今回のような事態は、日本への不信感を深めるだけだ。高市、稲田両氏はあらゆる機会を使って説明責任を果たすべきだ」と主張した。
■官房長官「責任ない」 差別・偏見広がる懸念
実は、高市、稲田両氏だけでなく、自民党自体も2000年六月の衆院選直前、山田氏との関係が取り沙汰されたことがある。自民党広報本部が各事務所などに対し、山田氏が社長を務める会社が出版した単行本の購入を指示したと共産党の機関紙「赤旗」が報じた。単行本は共産党を批判する内容で、選挙戦に活用するつもりだったようだが、自民党報道局は「資料が残っていないほか、当時の担当者も辞めていて確認できない」としている。
ツーショット写真騒動の背景には、自民党の右傾化がある。高市、稲田両氏は、右派政治家の筆頭格なのだ。日本最大の右派組織といわれる「日本会議」の国会議員懇談会の役員名簿(今年四月一日)によると、高市氏が副会長、稲田氏が政策審議副会長に就いている。
八月十五日の終戦記念日には、両氏とも靖国神社参拝を欠かさない。今年の参拝時は、稲田氏が行政改革相、高市氏が自民党政調会長の要職にあった。稲田氏は参拝の際に「今の平和で豊かな日本が、国のために命をささげた方々の積み重ねの上に成り立っているという思いで参拝した」と胸を張った。
もっと言えば、中央のみならず、政界全体で右傾化が進んでいる。ジャーナリストの安田浩一氏によると、ヘイトスピーチ(差別扇動表現)を繰り返す排外主務団体「在日特権を許さない市民の会(在特会)」などが主導するデモでは、保守系地方議員の姿を見かけることがよくあるという。
在特会とは直接関係はなくとも、同じような考え方を持つ議員は少なくない。一例を挙げれば、金子快之(やすゆき)・札幌市議はツイッツターに「私が在特会のメンバーだとの風評があるようですが、そのような事実はありません。但し、在日特権の見直しは必要だと考えます」と書きこんでいる。金子氏は「アイヌ民族なんて、いまはもういない」などのつぶやきが物議を醸し、所属していた自民党札幌市支部連合会を除名になった人物だ。
安田氏は「地減に貢献すべき議員が、地域を分断するようなデモに加わったり、考えを持ったりするのは問題があるだろう。マイノリティーに対する差別や偏見、排外主義は草の根の社会だけではなく、政治の世界にも浸透していると言わざるを得ない」と懸念を強める。
菅義偉官房長官は十一日の会見で、ツーショット写真について問われたが、高市、稲田両氏が山田氏の素性を知らなかったことを理由に「(責任は)全くないと思う」と突っぱねた。
このまま幕引きとなってしまうのか。麻生太郎副総理兼財務相が昨年七月、「ナチスの手口を学んだらどうか」という趣旨の発言をしたにもかかわらず、結局うやむやになった「先例」もある。
東京造形大の前田朗教授(刑事人権論)はこう警告する。
「国連人種差別撤廃条約は、日本を含む加盟国の政府に差別撤廃を求めているが、高市、稲田両氏は逆のことをしている。(山田氏を)知らなかったでは済まされず、欧州などでは辞任を迫られるような事案だ。政治家の持つ影響力への自覚に欠ける。第二次大戦後、国際社会が一定の共通認識のもとに平和な世界をつくる努力をしてきたのに、日本は価値観を共有していないのかと思われてしまう。このままでは国際社会の信用を失う結果になる」
<<<デスクメモ>>>
まだナチ党が弱小政党に甘んじていたころ、ヒトラーのポーズ写真を集めたポストカードセットが発売された。それを見た喜劇王チャプリンは「この顔はもはやコミカルではなく、不気味である」と言ったという(『ヒトラー演説』)。最近の日本では、不気味な面構えの「自称・保守政治家」が増殖している。(圭)
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