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朝日新聞の記事取り消しについて報じる9月12日付新聞各紙
朝日誤報謝罪、他メディア記者はどうみる?誤報を生んだ“特別な”事情、社長会見に疑問の声も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140912-00010007-bjournal-bus_all
Business Journal 9月12日(金)19時15分配信
9月11日、朝日新聞社の木村伊量社長は記者会見を行い、東京電力福島第1原子力発電所事故に関する政府事故調査・検証委員会による吉田昌郎元所長(昨年7月死去)への事情聴取、いわゆる「吉田調書」に基づき「所員が吉田氏の命令に違反し撤退した」などと報じた記事について、「待機命令に背いて職員が撤退したという事実はなかった」として取り消すと発表。「読者や東電関係者に深くおわびする」と謝罪するとともに、自らの進退について社内改革後に「速やかに決断する」と述べ、自身の辞任を示唆した。
また、「済州島で慰安婦を連行した」という慰安婦問題をめぐる報道(1982年)を今年8月の点検記事で取り消した件についても、「誤った記事を掲載し、訂正が遅きに失したことを読者におわびする」と謝罪した。
翌12日の全国紙各紙はこぞって一面トップで朝日の会見について報じ、「日本の国益を大きく損なったことを考えれば、謝罪は遅きに失した」(読売新聞)、「日本の立場や外交に深刻な影響をもたらした」(毎日新聞)などと厳しい見方を示している。中でも早い段階で朝日の「東電撤退報道」を否定する内容を報じていた産経新聞は、「自社の主張に都合のいい部分をつまみ食いし、全体像をゆがめて伝えたのではないかとの疑念は拭えない」と批判。さらに朝日が8月に掲載した慰安婦報道の点検記事について木村社長が会見で「内容には自信を持っている」と述べた点について、「本心では悪くないと考えているようにみえる」「言い訳と自己正当化に満ちた甚だ不十分な内容だったにもかかわらずだ」と論評している。
●「方向性ありき」だったのか?
今回の一連の朝日の動きについて、大手メディア関係者はどのようにみているのであろうか。
まず、産経関係者は11日の会見の開始時間をめぐり、次のように朝日の姿勢を問題視する。
「少なくとも前日には会見を実施することが決まっていたはずで、常識的に考えて昼間の時間帯に行うのが普通です。にもかかわらず夜7時30分という遅い開始時間となった背景には、新聞各紙に翌日の朝刊で鋭い指摘をさせないため、深夜の入稿締切まで余裕ある時間を与えなくないという意図があったのではないか。朝日としては、毎夜7時〜7時30分に放送されるNHKのニュース番組で生中継されるのを避けたい一方、夜9時や10時ではあまりに“他の新聞社対策”として露骨すぎる。そこでNHKのニュース番組終了直後の夜7時30分に設定したと思われ、姑息だと受け取られても仕方ないでしょう」
また、別の産経関係者は、今回朝日が誤報に至った背景について、次のように話す。
「吉田調書をすべて読みましたが、一般的な国語力を持つ人であれば、朝日のような『東電撤退』というようにはとても読めません。今回取り消された記事からは、最初から決まっている方向性に合わせて、調書の部分部分をつまみ食いしてつなぎ合わせたという印象を拭えません」
では、そのような「方向性ありき」の記事制作は、他の新聞社でも起こりうることなのであろうか。
「確かに新聞社ごとに会社としての主張の方向性があるので、そのようなことが起きる可能性は否定できません。しかし、どこの新聞社でも、特に企業不祥事関連のスクープ記事を掲載する場合、複数の人間で内容をチェックし、『こういう書き方のほうが確かにインパクトは強いけど、誤解を与えかねないのでもう少しバランスよい書き方をしたほうがよいのでは』などと議論して慎重に進めていきます。しかし朝日の場合、これまで連載『プロメテウスの罠』などで『反原発』『反東電』の一大キャンペーンを張ってきたことも影響し、とにかく『東電=悪』という方向性ありきで記事が書かれたのではないでしょうか」
同関係者によれば、今回取り消された記事を中心となって取材・執筆したのは、この『プロメテウスの罠』を担当した朝日特別報道部であり、その点が朝日として誤報を防げなかった理由でもあると分析する。
「同部は『プロメテウスの罠』(2012年度)、『手抜き除染』(13年度)と2年連続で新聞協会賞を取るなど朝日社内では“特別な存在”。それゆえ、朝日社内でも『同部の記事だから大丈夫だろう』ということで、記事内容への十分なチェック機能が働かなかったのではないか」
さらに別の産経関係者によれば、産経が朝日の東電撤退報道を否定する記事を掲載した直後、朝日から産経に抗議文が寄せられていたといい、「抗議文を送るほど自信があったにもかかわらず、一転して取り消し・謝罪とは……」と呆れた様子をみせる。
●現場レベルの意識の高さを評価する声も
一方、テレビ局関係者の反応は、どのようなものだろうか。
NHK局員は「多くのメディアが時間を割いて報道しているほど、局内ではそれほど大きな話題にはなっていません」と話すが、あるテレビ局ディレクターは、朝日の報道に対する批判が広がってから謝罪まで時間が空いた点について、「当初吉田調書を入手していたのが朝日のみだったため、『批判するほうが間違えている』と判断していた上層部の考え方に疑問を感じます。批判を受けた時点で、情報を精査する機能が働かなかったのだろうか」と疑問を投げかける。
同様に別のテレビ局番組デスクも、慰安婦報道について8月に取り消して以降これまで謝罪がなかったことについて、「誤報を認めつつも謝罪しないというのは、報道に携わる者にとって受け入れがたい。そもそも、読者・視聴者の信用を得なければ報道は成立しないということを、朝日上層部は理解すべき」と語る。
こうした批判的な声が目立つ一方、「ジャーナリスト・池上彰氏が朝日を批判する連載記事を一旦不掲載にしたことが発覚すると、内部の記者30人以上が上層部を批判するツイートを発したことには、朝日のジャーナリズムを感じた」(テレビ局記者)と現場レベルでの意識の高さを評価する声もみられた。
いずれにせよ、メディアは一方的に朝日を批判するだけではなく、今回の騒動を契機として、同じような過ちを犯してしまわないような仕組み・体制づくりが求められているといえよう。
11日の会見で木村社長は、問題となった記事掲載に至った理由について、「秘匿性の高い資料だったため、(吉田調書を)少数の人間の目にしか触れないようにしていた。その結果、チェックが甘くなり、検証が遅れたと反省している」と釈明。また取材の過程において「命令に背いた人がいたという思い込みがあった。職員に取材はしたが話は聞けなかった」と説明している。また、朝日としての思惑や意図があったのではないかとの指摘に対し、「意図的な記事ではない」と否定している。
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