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2014年9月12日
吉田調書と吉田証言で吉田が重なり、混乱してしまうが、20011年3月11日の東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第一原子力発電所の放射能事故に関するヒアリングをまとめた調書の一部が公開された。
とはいえ、一部が黒塗りになっており、調書が完全開示されたわけではない。
安倍政権に都合の良い部分は公表され、都合の悪い部分は黒塗りにされている可能性は十分にある。
このことを念頭に入れておかなければならない。
中日新聞が「東電慢心 対策先送り」の見出しとともに報道した吉田昌郎元東電福島第一原子力発電所長の調書記載内容には重大な証言が含まれている。
伝聞証拠にはなるが、この資料が重要参考資料のひとつとして取り扱われることになる可能性がある。
最も重大な新事実は、津波対策の不備について、東電の勝俣恒久元会長が詳細を知り得る立場にあったことを示す証言になっている部分だ。
中日新聞は吉田調書の内容を以下のように伝えている。
翌08年2月、東電の土木調査グループは福島第一原発で想定する津波が7.7メートル以上になる可能性を社内会議で報告している。
3月には、さらにそれを上回る15.7メートルという試算が出たが、これは東日本大震災で実際に襲われた津波とほぼ同じ高さだった。
「入社時は、最大津波はチリ津波と言われていて、高くて3メートル。非常に奇異に感じた。そんなのって来るの、と」
吉田調書で、吉田氏は試算結果を聞いた当時の印象をこう語っている。
結局、東電は最新の試算結果を無視し、津波の想定を従来の6メートルから変えなかった。
この時、抜本的な安全対策を取っておけば、震災で受けるダメージを軽減できたかもしれないが、吉田調書はこう続く。
■お金が一番
「津波自体は、国とか地方自治体がどうするんですかという話とも絡んでくるでしょう。
東電だけが対応してもしょうがない。」
「当然のことながら一番重要なのはお金。
対策費用の概略をずっと(社内幹部に)説明していた」
「会長の勝俣(恒久)さんは、それは確率はどうなんだと。
学者によって説が違うから詰めてもらっているという話で終わって、それ以上の議論になっていない」
結果的に安全対策を先送りした吉田氏。
(ここまで中日新聞より引用)
吉田昌郎氏は2007年4月に新設された原子力設備管理部の部長を、発足時から2010年6月まで務めた人物である。
この吉田氏は、上記の15.7メートルの津波襲来の可能性が指摘された際に、この警告を無視して津波対策を講じなかった、現場の責任者である。
原発事故発生後、津波対策を講じなかった東電の責任を問う刑事告発が行なわれており、吉田氏がこうした刑事責任追及の可能性を念頭に入れて証言に応じている可能性が高いことを念頭に入れて吉田証言を読む必要がある。
津波対策を講じなかったことを正当化する発言が示される蓋然性が、基本的に高いのである。
こうした証言を読み解く場合に必要なことは、証言はあくまでも証言であって、事実である保証がどこにもないことだ。
発言者や発言者が所属する機関の利害に関わる問題では、発言者がその利害を踏まえて発言していることが十分に考えられるから、そのことを前提に置いて読み解く必要が出てくる。
ここで重要な問題は、吉田氏が
「対策費用の概略をずっと(社内幹部に)説明していた」
「会長の勝俣(恒久)さんは、それは確率はどうなんだと。
学者によって説が違うから詰めてもらっているという話で終わって、それ以上の議論になっていない」
と証言した部分だ。
津波対策の必要性、津波対策の費用などの詳細を、吉田氏は社内幹部に「ずっと」説明していたと証言している。
そして、その社内幹部には、勝俣恒久元会長も含まれていた。あるいは、勝俣元会長が説明を受けていた中心人物であるとも解釈し得る発言になっている。
福島第一原子力発電所の事故をめぐり、業務上過失致死傷罪などで告訴・告発され、2013年9月に不起訴とされた東京電力の勝俣恒久・元会長ら旧経営陣について、住民グループは勝俣恒久元会長ら6人の不起訴が不当であるとして、検察審査会に審査を申し立てた。
この事案について、東京第五検察審査会は本年7月31日に、勝又元会長ら3人について「起訴相当」議決を行った。
東京第五検察審査会は、勝俣元会長などが、津波対策の必要性などについて情報を得ながら、適切な津波対策を講じなかったことについての刑事責任を問う必要があると判断したのである。
吉田調書の内容は、この問題に関する勝俣恒久元会長の深い関与を裏付けるものになっているのである。
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