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内閣改造を伝える新聞各紙
安倍改造内閣の支持率の傾向が読売・日経と毎日で違う理由 菅原琢(政治学者)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140905-00000018-wordleaf-pol
THE PAGE 9月5日(金)17時28分配信
第2次安倍内閣で内閣改造が行われたが、各社の世論調査では、内閣支持率が急上昇している。読売新聞では「改造前の前回調査の51%(8月1〜3日実施)から13ポイント上昇」(※1)して64%、日経新聞では「8月下旬の前回調査を11ポイント上回っ」(※2)て60%、共同通信でも「内閣支持率は54・9%と、前回8月調査より5・1ポイント上昇した」(※3)そうである。
内閣改造は、「政権浮揚」を目的に行われるとよく報道される。これらの支持率上昇という結果を見ると、今回の内閣改造は少なくとも内閣支持率の「浮揚」には成功したように見える。
だがその一方で、毎日新聞は「安倍内閣の支持率は47%で前回調査(8月23、24日実施)と同じだった」(※4)とする結果を発表している。
このように内閣支持率の傾向が各社で分かれたのはなぜだろうか? ――おそらくその答えは、質問文の改造、である。
9月5日午前6時現在で、質問文がネットで公開されているのは共同通信のみである。上記の西日本新聞の記事にpdfファイルで質問文が公開されている(※5)。これを見ると、今回の支持率調査の質問文は「安倍晋三首相は内閣を改造しました。あなたは、この安倍内閣を支持しますか、支持しませんか。」となっている。当然、改造前の8月の調査では「安倍晋三首相は内閣を改造しました」という文は挿入されていないだろう。
継続的に調査し、その増減傾向を見る目的があるとすれば、このように質問文を変えるのは好ましくない。この共同通信の例では、純粋に安倍内閣を支持するかどうかだけでなく、内閣改造を支持するかどうかを聞いているように聞こえる。あるいは改造という言葉に惹かれて「支持」と回答する回答者もいるだろう。この結果、内閣支持率は上がることになる。
他紙の質問文についてはまだ公開されておらず、あるいは公開されたとしても正確でない可能性があり、今回の件について現時点で断定することは難しい。しかし過去の例では、質問文を「改造」した調査では高くなり、質問文を「改造」しなかった調査では大きく変化しないという傾向があることは明らかである。拙著『世論の曲解』(※6)のコラムでは、福田改造内閣の際の結果について取り上げているので、ご関心のある方は参照していただければと思う。
この福田改造内閣のときは、読売新聞、日経新聞、産経新聞・FNN共同、報道ステーション、日本テレビの各調査で質問文の改造が行われ、最も小幅な日本テレビで5.8ポイント、調査手法も異なっていた読売新聞は14.8ポイントの大幅なプラスとなっていた。この一方、質問文を変えなかった朝日新聞は前月と全く同じ、毎日新聞は3ポイント増と、小幅な動きにとどまっていた。現時点で発表されてないが、朝日新聞が世論調査をしているとすれば、毎日新聞と同様にあまり支持率は変動していないはずである。
継続的調査で質問文を変えない意義も、過去の例を確認すれば明確である。福田内閣が改造した2008年8月の日経新聞の世論調査結果を、その前後と比較してみよう。なおこのデータは日経リサーチのページ(※7)で確認することができる。
2008年6月定例 「あなたは福田内閣を支持しますか、しませんか。」 支持する 26%
2008年8月改造直後「あなたは改造後の福田内閣を支持しますか、しませんか。」 支持する 38%
2008年8月定例 「あなたは福田内閣を支持しますか、しませんか。」 支持する29%
このように、質問文の改造で一時的に支持率が上昇しても、次回調査でまた低下してしまうことになる。質問文改造派の他紙でも同様の傾向が見られ、質問文非改造派ではこうした大幅な上下動は確認されなかった。仮に質問文を正直に公開しない新聞社があったとしても、来月以降の数字と比較すれば、「何かやった」ことは明白となるだろう。
ちなみに野田内閣の第3次改造に際する読売新聞の調査では、改造時に7ポイント上昇し、次月ではこれが15ポイント低下した。紙面掲載の質問文は3回の調査とも同じであったが、おそらく改造時には質問文を変えていたか、冒頭で内閣改造について触れていたと想像することができる。
このように質問文の改造によって数字が動くことは、単に調査のやり方として問題があるだけでない。質問文改造効果を無視してこの数字の上昇を捉え、記事を書けば、世論に関する認識を誤ることになる。質問文改造効果で数字が上がっただけのものを、「支持率回復」「安倍首相にとって追い風」としてしまう。さらに悪いことに、次回調査の際には急激な数字の低下の前に新たな(間違った)説明を加えなければならなくなる。したがって、内閣支持率の質問文を改造するのは、メディアにとっても決して良いことではないのである。
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菅原琢(すがわら・たく)政治学者、主著に『世論の曲解』(光文社新書)。「政治」の章を担当した『平成史:増補新版』(小熊英二編著、河出ブックス)好評発売中。
※1 「改造内閣支持率64%、女性登用評価…読売調査」(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140904-OYT1T50106.html
※2 「内閣支持率、11ポイント上昇し60%に 日経世論調査」(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS04H2V_U4A900C1MM8000/
※3 「内閣改造「評価」46.9% 消費再増税に7割反対、世論調査」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/112225
※4 世論調査:改造内閣支持率横ばい 谷垣幹事長に47%評価(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20140905k0000m010145000c.html
※5 PDFデータ(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/import/politics/20140904/20140905.pdf
※6 『世論の曲解』(光文社)菅原琢
http://www.amazon.co.jp/gp/product/433403537X?ie=UTF8&camp=1207&creative=8411&creativeASIN=433403537X&linkCode=shr&tag=sgt04-22
※7 日経電話世論調査(日経リサーチ)
http://www.nikkei-r.co.jp/phone/results/2008/index.html
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