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2014年09月03日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆米国は、太平洋の覇権を一国では維持できなくなってきている。理由は、深刻さを増している財政難にある。
朝日新聞は9月2日付け朝刊「国際面」(10面)の「『積極的平和主義』の実像 世界現場から」というワッペン付きの記事に「太平洋 海自に増す期待」「災害訓練で中心的役割」「財政難の米、軍事費削減」の見出しをつけて、米国の窮状をレポートしている。
「米国は急増した国の赤字を減らすため、軍事費を含めた歳出削減を迫られている。2012年度から10年間で当初の計画よりも4870億ドル(約50兆円)を減らすうえ、『シークエストレーション』と呼ばれる強制削減条項も課されている。現在は議会の合意で一時的に緩和されているが、16年度からは復活する可能性があり、米国防総省は、すべて適用されれば10年間の削減額は1兆ドル(約104兆円)を超えると予測する。毎年、日本の防衛予算の2倍以上を削ることになる。米戦略国際問題研究所(CSIS)のライアン・クロティ研究員は、『予算カットによる軍事力の削減を埋め合わせるため、米国は同盟国や友好国により多くを求めている』と話す。財政的な事情に加え、単独行動よりも多国間で協調した取り組みを重視するオバマ政権の姿勢が、安倍政権の集団的自衛権行使を巡る憲法解釈変更への支持にもつながっており、今後は災害救助だけではなく、軍事面でも日本の役割に期待する局面が増える可能性がある。(ワシントン=大島隆)」
米軍将兵150万人、文官80万人の給料遅配が続くなかで、給料をまともにもらえるのが、沖縄駐留米軍の将兵と文官だという話が広まった。原資は、日本政府が駐留米軍に提供している「思いやり予算」(防衛省予算に計上されている「在日米軍駐留経費負担」の通称。金丸信防衛庁長官が1978年6月、在日米軍基地で働く日本人従業員の給与の一部=62億円=を日本側が負担すると決めたことから始まった)である。このため、米軍の将兵と文官の間で、「沖縄勤務」に人気が高まったという。
◆こんな話を聞くと、「米軍も落ちぶれたものだ」という感慨が湧き上がってくる。米軍の将兵多数を戦死させたり、傷痍軍人にさせたりして、スペインと大日本帝国を負かして、折角手にした「太平洋におけるシーパワー」をどうするつもりなのかと他国のことながら、考えてしまう。
米国は、スペインとのいわゆる「米西戦争」(1898年4月25日〜8月12日、戦場=西インド諸島・太平洋)に勝利して、カリブ海を制覇し、西太平洋への根拠地としてフィリピンを手にして世界帝国への道を決定的なものにした。続いて、太平洋で大日本帝国と覇権を争い、ミッドゥェー海戦(1942年6月5日から7日にかけての海戦)で大日本帝国海軍機動部隊の航空母艦4隻とその艦載機を多数一挙に喪失させて、太平洋戦争における主導権を握り、アルフレッド・セイヤー・マハン海軍大佐(1840年9月27日〜1914年12月1日、退役後、少将)の名著「海上権力史論」(The Influence of Sea Power upon History、1890年刊)を具現化したのである。
マハンは「国家がシーパワーを発展させるためには、集中や大胆さが海上作戦での原則である」と考え、「地理的位置、海岸線の形態、領土範囲、人口、国民性、政府の性格がシーパワーに影響を及ぼす要素であり、これらから構成されるシーパワーは生産、海運、植民地の連鎖とこれを保護するための海軍のそれぞれのバランスのとれた発展が海洋政策では求められる」と説いた。米国は太平洋戦争後、マハンの理論通り、太平洋でシーパワーを強化し、覇権を維持してきた。
◆ところが、中国共産党人民解放軍が、海軍と空軍を近代化して、「太平洋戦略」を展開し、覇権争奪戦に乗り出してきた。それも悪いことには、米国が深刻な財政難に見舞われているときに、露骨に太平洋進出と覇権争奪を図ろうとしてきたのである。日本固有の領土である尖閣諸島を狙い、領海・領空侵犯を頻繁に繰り返し、米軍に対して挑戦してきている。
こうなると、米国一国で太平洋覇権を堅持するのは難しい。そこで、日本政府にと沖縄駐留米軍の駐留に関わる諸経費(思いやり予算を含む)の増額を求めるとともに、米軍の補完部隊である日本の陸海空3自衛隊にかなりの部分を「肩代わり」させるしかない。
「ジャパン・ハンドラーズ」(日本操縦者)の1人であるハーバード大学のジョセフ・ナイ教授(元国防次官補)が最近、「中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆弱性が高まっている」と警鐘を鳴らし、「将来的には日本が在日米軍基地を管理し、米軍は各拠点を巡回配備(ローテーション)すべきだ」と主張しているのは、そうした米国の深刻な財政難を背景としている。沖縄タイムスが8月31日午前9時31分、「『沖縄の基地 脆弱に』ナイ氏米誌で警鐘」という見出しをつけて、以下のように配信した。
「【平安名純代・米国特約記者】元国防次官補のジョセフ・ナイ氏(現米ハーバード大学教授)が米誌に寄稿し、中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆弱(ぜいじゃく)性が高まっていると警鐘を鳴らしていたことが分かった。将来的には日本が在日米軍基地を管理し、米軍は各拠点を巡回配備(ローテーション)すべきだと主張している。米オンライン政治誌ハフィントン・ポストの7日付の寄稿で、ナイ氏は、多くの日本人が非対称な同盟に憤りを感じ、『とくに沖縄の米軍基地の重荷にいら立っている』などと指摘。安倍晋三政権の集団的自衛権の行使容認などを評価する一方で、『日米両政府は同盟の構造を再考する必要がある』と問題提起した。その上で、『中国の弾道ミサイルの開発で、沖縄の基地の脆弱性は増している』などと状況の変化を指摘。航空自衛隊と米空軍が共同使用する三沢空軍基地を例に挙げながら、『中国の弾道ミサイルの開発で、沖縄の基地の脆弱性は増している』と主張。米軍基地を自衛隊の管理下にした上で、米軍が自衛隊の基地や施設を自由に使用する形式への移行を提唱している」
◆「国連軍」の旗の下で韓国に駐留している米軍は、朝鮮半島から「逃げ出そう」としている。アフガニスタン・イラク戦争で事実上、敗れた米国では、全土に「厭戦気分」が漂っていることも大きな理由だ。第2次世界大戦後、おおむね10年サイクルで大戦争を起こさなければ、米国経済の繁栄を確保できない「異常な国」になっているので、もうそろそろ大戦争を勃発させなくてはならないのに、深刻な財政難の下では、戦費調達もままならない。そこで軍資金と兵力調達を日本政府に「おねだり」しているうえに、韓国軍と3自衛隊合同部隊で、朝鮮半島有事に当たらせようとしているのだが、正規軍でもない3自衛隊に米軍の「肩代わり」をさせようとしてもムダである。太平洋の覇権は、米国にしっかり堅持してもらわなくてはならない。日本は、「カネは出しても、口と腕力は出さない国」であり続ける必要がある。
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