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2014年09月01日08:07
今朝(9月1日)の日経新聞のオピニオン面に編集委員・滝順一の「浮上した再処理国有化」というコラムが掲載されていた。この記事は現在、経産省・総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会で核燃料サイクルを中心にする日本の原子力政策がどのように議論されているのか、特にその重要な点を述べていると思ったので紹介したい。
まず滝順一編集委員は次のように書く。「政府の審議会の傍聴は退屈なことがしばしばだが、このときは眠気も吹き飛ぶ展開だった」一体何のことかと読んでいくと次のようなことがあったのだという。
(引用開始)
数人の委員が口々に同じことを言い始めた。「日本原燃は原子力発電環境整備機構(NUMO)と同じように認可法人にするのが望ましい」と。
(引用終わり)
この認可法人というのはわかりにくいが要するに民間企業である日本原燃を政府組織にするべきだという意見がでたということである。それでは日本原燃とはなにか。記事はこう続く。
(引用開始)
日本原燃(本社・青森県六ケ所村)は使用済み核燃料の再処理などを担う会社として電力会社などが共同でつくった。電力会社は電力料金や託送料に上乗せする形で消費者や需要家からお金を徴収して、再処理費用として積み立てている。
(引用終わり)
要するに日本原燃は、使用済み核燃料の再処理を行う民間会社であり、電力会社の共同出資で作った会社であると。電気料金から再処理費用が積み立てられているということだ。その企業をなぜ政府組織に改組するか。
(引用開始)
再処理工場が試運転段階で足踏みし、まだ本格操業に至らないものの、電力会社は積立金を毎年2千億円以上取り崩して日本原燃に支払っている。再処理工場建設などに使った借入金(残高約1兆円)も電力会社が債務保証している。
(引用終わり)
これで分かった。電力会社は失敗続きで完成が遅れた「金食い虫」の新規プロジェクトを共同で支えているのである。原子力事業は核を扱うその性質上、国と二 人三脚。国策民営と言われる理由もそこにある。電力会社は国の進めるがままに事業を進めてきた。その事業が見通しの甘いせいでうまくいかない。
これは我々 民間企業だけの責任だろうか。電力会社は発電所を動かして電力を販売する。それが基本的な仕事で、再処理ビジネスは国が保証するという暗黙の前提があるか ら続けているんだ。再処理という本業とは関係ない事業が我々を推し潰しかねないという危機感が電力会社にある。
じゃあ、国が責任をとってください、という声が出る。そして、再処理事業には経済的なコスト節減の意味も少ない。滝順一編集委員はこうも書いている。
(引用開始)
核燃料のリサイクルを目的とした再処理は発電コストを押し上げる。今後よほどウラン資源の供給が逼迫しない限り経済的な意義は小さい。競争環境下で民間が営むのは容易ではない。
(引用終わり)
シェールガスの開発、最新鋭の石炭火力発電、再生可能エネルギー・・。確かに原発そのものは世界中で建設されている。しかし、ウラン原料はまだまだ手に入 る。原子力事業そのものは続けるにしても、金食い虫の再処理をわざわざやる必要があるのかという疑問が出てくる。核燃サイクルの高速増殖炉もんじゅも成功 する見込みはない。
じゃあ、国が電力会社を「ベイルアウト」(救済)して、再処理事業を民間から買い上げて、それを不採算事業として廃止する方 向に持っていくのか。これで再処理を支えるという負担が軽くなった電力会社は安心して一定数の原子炉を廃止できるのか。ところがどうも問題はそういうふう に進まないかもしれない。続けて滝編集委員の記事を紹介しよう。
(引用開始)
ただ、リサイクル事業が大抵そうであるように、経済的な価値だけで再処理の意義を測れない面もある。再処理はエネルギー安全保障や核物質の管理など国の関与を正当化できる余地が大きい。事実上の国営も選択肢ではあろう。
(引用終わり)
「再処理はエネルギー安全保障や核物質の管理など国の関与を正当化できる余地が大きい」というふうに述べているのに注目してほしい、「安全保障」と書いて ある。安全保障といえば日本の場合は日米安保体制を暗黙のうちに意味している。外務省が関係しているということだ。つまり、外務省の核不拡散政策の中に日 本の核燃サイクルは位置づけられている。
もともと核燃料サイクルというのは使用済み燃料の中からプルトニウムを抽出することでその実施国に対し て核兵器開発の潜在的可能性を与えることや、抽出して生まれたプルトニウムが拡散する危険性があることからすでに核保有国な米国などに限定されていた。イ ギリスでは採算が合わないということでやめてしまった事業だ。日本は特別にアメリカから日米原子力協定によって包括的な再処理を認めてもらっている。
この 交渉をやったのが中曽根政権であり、外務省の原子力官僚たちだ。中曽根はかつて「青森県を日本の原子力基地にする」と講演で述べていた。つまり、核保有を 目指すと暗に発言していたわけだ。この潜在的核保有の意識を石破茂などもかつては公然と口にしていた。
しかし、米国にとって見れば核拡散は怖 い。だからできるだけ必要で無いプルトニウムを日本には持たせたくない。再処理事業をやってプルサーマル発電用のMOX燃料を作ってそれを順調に消費する ことが核燃サイクルの前提になっている。ところが外務官僚の中には、その青写真を示す前に、アジアの新興国の原発の使用済み燃料の再処理も含めて六ケ所活 用の私案を出す人もいる。アメリカの中には核燃サイクルを日本が継続することに反対の高官達もいる。リチャード・アーミテージですらそのひとりだという。 ただ、米国は表立って介入してしまう事はしない。日本が決めることだからだ。
だから、滝編集委員が以下のように書いていることは、嘘ではないにしても重要な事実を無視している。核燃サイクルは民間企業の民間プロジェクトではない。国策であった。
(引用開始)
とはいえ、電力会社が民間でやりたいと主張して国民から資金を徴収する格好で始めた事業である。「確実な推進ができるよう安定したスキーム(枠組み)」(豊松秀己・関西電力副社長)を望みたくなる苦境は理解するが、簡単に投げ出すことは許されない。
(引用終わり)
そのようにして国が救済したあとの核燃料サイクルを国が運営するのか。経産省の原子力ムラや文科省の原子力ムラの官僚たちはそのような考えだろう。国の事 業にすれば予算がつくからだ。一方で、金子勝のような民間の経済学者は日本原燃を公的資金を電力会社に投入しつつも、同社を認可法人のような公的組織では なく「廃炉専門会社」として生まれ変わらせ、六ケ所を核燃料サイクルの基地ではなく、廃炉研究のメッカにすべきだというようなことを書いている。(岩波 ブックレット『原発は不良債権である 』など)
公的資金をどのように使うかという点で政府・経産省の考えと金子勝ら民間の脱原発学者の考えは違うようだ。やはり国はまだまだ核燃料サイクルを放棄する決断ができていない。それは以下の様な記事から分かる。
(引用開始)
フランス次世代炉開発で協力合意 原子力機構、もんじゅで試験
(福井新聞/2014年8月8日午前7時10分)
日本原子力研究開発機構は7日、フランスが開発を進める次世代高速炉の設計や研究開発に関し同国原子力・代替エネルギー庁などと協力することで合意し、実 施取り決めを締結した。ナトリウムを原子炉の冷却に使う同タイプの高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)で次世代炉の燃料を燃やす試験を目指し、約2年かけ 実施の可否を検討する。
取り決めは日仏両首脳が5月に高速炉技術の開発で合意したことに基づくもの。
フランスの次世代高速炉は実用炉の前段階となる実証炉の位置付けで、放射性廃棄物の量や毒性を減らす「減容化」技術などの実証に活用する計画。既に概念設計が始まり、基本設計を経て2019年末に同国政府が建設を判断する予定。25年ごろの運転開始を目指している。
協力の取り決めには三菱重工、建設を担うアレバNP(フランス)なども参画し、原子力機構は次世代高速炉の安全性向上のための設計や原子炉技術、燃料などの研究開発に協力する。締結期間は基本設計までの19年末まで。
もんじゅでは次世代炉で想定されるプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を入れて運転し試験を行う計画。燃料の仕様など技術的な検討や予算について協議し、15年度末ごろに実施を判断する。
もんじゅは4月策定のエネルギー基本計画で「減容化技術などの向上のための国際的な研究拠点」と位置付けられており、原子力機構はこの協力を基に減容化研究などに向けた高速炉の安全性向上につなげていきたい考え。
ただ、機器の点検漏れ問題で原子力規制委員会から運転再開準備の禁止命令を受けているほか、敷地内破砕帯の調査、新規制基準の策定といった課題もあり、再稼働は見通せない状況となっている。
(引用終わり)
このように原子力ムラはなんとかして高速増殖炉「もんじゅ」を延命させたいわけである。同じように核燃サイクルが民間が手に余るなら、それを政府が救済し て継続させるという狙いがあるだろう。民間会社がやっても、政府がやってもツケは電力料金や税金という形で国民にかかってくる。六ケ所再処理工場が本格稼 働してしまえば、この高コストを国民が強いられることは間違いない。私は必ずしも原子力発電そのものには反対しないが再処理は「無用の長物」であり、研究 レベルではともかく、事業レベルでは不要であると述べているのはこのコスト問題が主要な理由である。
私には経産省のプランよりも金子勝のいう 「廃炉専門会社」方式で日本原燃を改組することが望ましいと考える。廃炉という作業は原子力を続けるであれ、やめるであれ、長期にわたって必要なものだ が、核燃料サイクルは不要なものだからだ。必要なものにお金をかけるのが正しい税金の使い方である。
このように核燃料サイクルをどのように処理 するか、あるいは継続させるかという議論が行われている。経産省の原子力小委員会には原子力情報資料室や政府の原発事故調査委員会の委員であった脱原発派 の人間や「ミスター再処理」ともいうべき山名元・京都大学教授や森本敏・前防衛大臣などもおり、脱原発派と推進派が双方入り乱れている。滝順一編集委員の記事 では山名元のコメントしか引用されていない。ただ、最終的には国会議員たちが日本原燃を含めてどのように取り扱うのかを、経産省の進める安に対して対抗案 として出していかない限りは、原子力ムラの延命策が勝利してしまうのではないか。
いずれにせよ、この「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会」の議論には注目しなくてはならない。
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総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(第5回)
日時:平成26年8月21日(木曜日)17時00分〜19時15分
場所:経済産業省本館地下2階講堂
出席者
委員長
安井 至 独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長
委員
秋池 玲子 ボストンコンサルティンググループシニアパートナー&マネージング・ディレクター
遠藤 典子 東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員
岡 素之 住友商事(株)相談役
岡本 孝司 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授
開沼 博 福島大学うつくしまふくしま未来支援センター 特任研究員
崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー、NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長
佐原 光一 中核市市長会 会長/愛知県豊橋市長
高橋 信 東北大学大学院工学研究科教授
辰巳 菊子 (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問
友野 宏 新日鐵住金(株) 代表取締役副会長
伴 英幸 NPO法人原子力資料情報室共同代表
日景 弥生 弘前大学教育学部・教育学研究科教授
増田 寛也 (株)野村総合研究所 顧問/東京大学大学院客員教授
圓尾 雅則 SMBC日興証券(株)マネジングディレクター
森本 敏 拓殖大学特任教授、前防衛大臣
山口 彰 大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授
山名 元 原子力損害賠償・廃炉等支援機構 副理事長/京都大学原子炉実験所教授
専門委員
池辺 裕昭 (株)エネット代表取締役社長
岸本 薫 全国電力関連産業労働組合総連合会長
豊松 秀己 関西電力(株)代表取締役副社長執行役員 原子力事業本部長
服部 拓也 一般社団法人日本原子力産業協会理事長
松浦 祥次郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長
オブザーバー
勝野 哲 中部電力(株)代表取締役副社長執行役員
経済産業省
上田資源エネルギー庁長官、高橋エネルギー庁次長
多田電力・ガス事業部長、吉野大臣官房審議官、土井大臣官房審議官
村瀬電力・ガス事業部政策課長、畠山原子力政策課長
内閣府
板倉原子力政策担当参事官
文部科学省
石川研究開発局原子力課課長補佐
欠席者(敬称略):
委員
西川 一誠 福井県知事(杉本委員代理)
山地 憲治 (公財)地球環境産業技術研究機構理事・研究所長
吉岡 斉 九州大学教授
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denkijigyou/genshiryoku/005_giji.html
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浮上した再処理国営化
原子力維持か 電力救済か 編集委員 滝順一
2014/9/1付日本経済新聞 朝刊
政府の審議会の傍聴は退屈なことがしばしばだが、このときは眠気も吹き飛ぶ展開だった。
8月21日に開いた経済産業省の総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会。
電力自由化がこれから進むと、電力会社は地域独占を謳歌できた地位から離れ競争環境に置かれる。そんな時代に原子力発電をどう維持するか。それが議論の主題だった。
数人の委員が口々に同じことを言い始めた。「日本原燃は原子力発電環境整備機構(NUMO)と同じように認可法人にするのが望ましい」と。
日本原燃(本社・青森県六ケ所村)は使用済み核燃料の再処理などを担う会社として電力会社などが共同でつくった。電力会社は電力料金や託送料に上乗せする形で消費者や需要家からお金を徴収して、再処理費用として積み立てている。
再処理工場が試運転段階で足踏みし、まだ本格操業に至らないものの、電力会社は積立金を毎年2千億円以上取り崩して日本原燃に支払っている。再処理工場建設などに使った借入金(残高約1兆円)も電力会社が債務保証している。
一方、NUMOは再処理後に残る非常に放射能が強い廃棄物(高レベル放射性廃棄物)の最終処分の実施主体として、法律に基づき設けられた。ガラスで固め金属容器に収めた廃棄物を地下深く埋める計画だ。電力会社などが拠出金の形でお金を積み立てており、処分事業に充てる。
ともに核燃料サイクルのバックエンド(川下)を担うが、前者は民間の株式会社で事業リスクを電力会社が負っているのに対し、後者は法律の裏付け、つまり政府の後ろ盾がある。
仮に再処理事業がうまくいかないなどの理由で日本原燃が傾けば、電力会社の経営に直接響く。
日本原燃は必要があって、2010年に資本金を倍増する4千億円の第三者割当増資を行った。原発を持つ電力会社10社がそのほとんどを引き受けた。いま、電力会社にはそんな余裕はない。
「日本原燃をNUMOのように」との意見は、再処理事業などに伴うリスクを電力会社から切り離し、国がかなりの部分を負うことを意味する。
これほど重要なことがさらりと提案された。事務局によるシナリオが発言の背後にあることを疑わせる。委員会はネット中継もされていない。不透明なこと、このうえない。
核燃料のリサイクルを目的とした再処理は発電コストを押し上げる。今後よほどウラン資源の供給が逼迫しない限り経済的な意義は小さい。競争環境下で民間が営むのは容易ではない。
ただ、リサイクル事業が大抵そうであるように、経済的な価値だけで再処理の意義を測れない面もある。再処理はエネルギー安全保障や核物質の管理など国の関与を正当化できる余地が大きい。事実上の国営も選択肢ではあろう。
とはいえ、電力会社が民間でやりたいと主張して国民から資金を徴収する格好で始めた事業である。「確実な推進ができるよう安定したスキーム(枠組み)」(豊松秀己・関西電力副社長)を望みたくなる苦境は理解するが、簡単に投げ出すことは許されない。
そうしたいのなら、なぜ民間でやりきれなくなったのか、財務内容を含めて詳細を開示し国民に対し十分に説明する必要がある。
委員会で異論を口にした人もいた。山名元・京都大学教授は「国営はデメリットもある。(国有でありながらビジネスマインドが高い)仏アレバのような組織ならいいが」とクギを刺した。アレバは原子炉も核燃料も製造する巨大な複合企業である。
NUMOは電力会社などの出向者が主体の組織で、2000年の発足以来、最終処分場の選定でほとんど実績を残していない。再処理をNUMOのような組織に任せるというのでは、核燃料サイクル推進の本気度が疑われる。
国策民営でやってきた原子力事業を競争市場で維持するには知恵と実行力、さらには大義のようなものが要る。
例えば原発の新増設。英国は新たな原発を建設するため、風力発電などの導入優遇策である「固定価格買い取り制度」に似た推進策を編みだした。原発の電気の値段を政府が長期間にわたり保証する仕組みだ。
日本でも参考にする動きがあるが、英国が地球温暖化抑制のため50年までに国内の二酸化炭素(CO2)排出を80%減らす大胆な目標を掲げているからこそ成立する政策だ。
火力発電の代替を「すべて再生可能エネルギーで賄うより原発を導入した方が電力料金を安くできる」と英エネルギー・気候変動省のリズ・キーナガン・クラーク副部長は話す。まともなCO2削減目標を持たない日本では議論の外だ。
日本政府には原子力をどれほどの規模で維持していくかのビジョンすらない。展望もなく原子力小委員会という狭い土俵で議論していては、原子力維持の方策がいつの間にか電力会社の救済策に化けかねない。
過去にも電力会社が原子力政策への貢献を盾に自由化の足取りを遅らせたことがある。これからも一定規模の原子力は必要だが、それは既存の事業者を温存することと同義でない。
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