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個人消費「低迷」で景気は「後退局面」…政治判断で消費税10%をスキップできるか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40306
2014年09月01日(月) 高橋洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
先週は石破の乱≠ゥ、と色めき立ったが、結局、大山鳴動して鼠一匹……どころか、鼠一匹も出なかった。
政治家の側近がいろいろと語るのは政治闘争の常であるが、驚いたのは、石破幹事長本人が8月25日のラジオ番組で「首相と100%(考えが)一緒の人が答弁するのが一番いい。『違う』と答えたら国会が止まる」公言し、しかも幹事長続投を示唆してしまったことだ。
ここまで本人が言うからには、かなりの覚悟があったと思うのだが、どうもその後の安倍陣営による反撃で、石破氏本人はあっさり撃退されてしまったようだ。29日昼の安倍首相との会談は手打ちだ。朝日新聞には、「石破氏入閣受諾、『次はあなた』が最後の決め手」とまで書かれてしまった。
禅譲をほのめかされて潰れていった人はこれまでも多い。優柔不断の印象にもなってしまった。はたして、石破氏はどう次の戦略を練るのか。
政局は起こらなかったが、経済面での消費増税の影響はじわじわと効いている。石破の乱≠フ間の26日、政府は月例経済報告を発表している。
■「駆け込み需要の反動」ではなく「消費増税による需要減」
基調判断は変わっていない。つまり、消費増税の影響は軽微で、すぐに盛り返すということだ。ただ、先行きについて、先月までの「海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている」という表現が、「駆け込み需要の反動の長期化や海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある」と書き換えられている。
「駆け込み需要の反動の長期化」というのは、あまり正しい表現とは言えない。消費増税は、増税前に駆け込み需要をもたらし、増税後はその反動減とともに、増税による可処分所得の減少を通じて需要の減退がある。駆け込み需要とその反動減は、ならしてみれば影響はない(消費時期が異なるだけ)が、3%増税分の消費減少効果がある。それを「駆け込み需要の反動の長期化」と言ってはまずい。「消費増税による需要減」である。
特に、1989年の消費税創設では同時に物品税の廃止があり、97年の消費増税では先行して所得税減税が行われている。こうした点を踏まえれば、89年も97年も消費増税の影響を相殺するような仕組みがあったが、今回の増税ではネット増税であり、「消費増税による需要減」が出るはずであるので、それを月例経済報告で記述しないのはおかしい。
26日の月例経済報告の後、29日に重要な統計が続いで発表されている。総務省による7月の家計調査、国交省による7月の新設住宅着工、経産省による7月の鉱工業生産だ。それぞれ、7月の消費、住宅投資、生産・在庫の状況を知るためには必須の統計だ。
7月が重要なのは、7-9月期のGDPで消費税率10%への再増税を今年の12月に決めるからだ。消費税増税をスキップしようとすれば、政治的には、新たな凍結法案を国会で成立させる必要があり、増税の根拠になっている自民、民主、公明の3党合意をひっくり返すことだから、かなり厳しい。
政治のプロから見れば、これは不可能に近い話だ。しかし、7-9月期のGDPがとんでもなく悪い数字なら、その不可能もひっくり返るかもしれないというのも、また政治だ。
そこで7月の経済指標に注目すべきだが、新聞はまともな分析ができないのか、ちょっとおかしな記事も少なくない。例えば、29日の日経新聞は「鉱工業生産0.2%上昇 消費支出は5.9%減」と報じている。
役所の公表文の数字をそのまま持ってくるから、変な見出しになっている。鉱工業生産0.2%上昇というのは前月比の数字で、消費支出が5.9%減というのは前年同月比の数字で、両者は違うベースのものなので、一緒に掲載するのはまずい。
筆者もかつて役所勤務で統計発表の仕事をしたことがあるが、発表された統計の記事を書くのは、若い記者ばかりだった。統計を勉強したことがなく、データをエクセルで加工できず、役所の発表文をそのまま記事にしていた。
今でも、その傾向は変わらないのだろう。経産省の鉱工業生産の発表文では前月比+0.2%の数字があり、総務省の家計調査の発表文では、前年同月比▲5.9%と前月比▲0.2%の数字がある。役所の発表文をそのまま写すにしても、鉱工業生産で前月比+0.2%、家計調査で前年同月比▲5.9%を並べる神経が筆者には理解できない。せめて、鉱工業生産で前月比+0.2%、家計調査でも前月比▲0.2%だろう。
この記事を書いた記者は数字の大きさしかわからず、その意味はまったくわかっていないのだろう。そうした記者はいつまでたっても、まともな分析はできない。
今では、各省のサイトからデータのエクセルファイルをダウンロードでき、役所の発表文になくとも、はっきり言えば役所の発表文など見なくても、統計に関する記事は書ける。そのほうが役所の誘導に乗らずに、まともな記事が書けるはずだ。しかし現実は、新聞記者の勉強不足から役所の言いなりの記事が多い。
■「見たくないものを見ない」のは自殺行為
いずれにしても、29日に発表された総務省による7月の家計調査の数字を、これまでの本コラムで書いてきた図に加えてみよう。
これからわかることは、7月も相変わらず不調である。消費について言えば、97年増税の時にはリバウンドしていた。97年は、7-9月の消費のリバウンドはあったが最後はダメだった。しかし今回は、そのリバウンドさえもない。
総務省は天候のせいと言うが、昨年も夏が暑く異常気象だった。今年の異常気象がどれほど昨年と異なっているのか疑問であり、何か言い訳のために取って付けたような印象だ。
8月の月例経済報告では、個人消費について「一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる」とされているが、どこが持ち直しなのだろうか。「反動の長期化」を認めているのであるから、「低迷している」がちょうどいい表現だ。
投資については、住宅投資を見るために、国交省による7月の新設住宅着工を見よう。これも、これまでの本コラムに新たな数字を加えたものだ。
また、それだけではなく、企業設備投資も見なければいけないので、内閣府から14日に公表された6月の機械受注統計を加えなければいけない。その図も下の通りだ。
これも冴えない。結局、生産自体が弱くなっているのだ。経産省による7月の鉱工業生産を見ればわかる。
そこで、今が景気のどのような局面なのかを見るために、在庫循環図を見よう。これも、7月21日付の本コラム(→こちら)で紹介したものだ。かつて内閣府では、こうした分析を経済白書などでも多用していたが、なぜ今の段階で行っていないのだろうか。ひょっとして分析を行うこと自体を自粛していれば、見たくないものを見ないという、現状を把握する上では自殺行為になる。
これを見ると、7月21日付の本コラムよりも左回りの状況になっている。これは、景気後退局面になっているかもしれないことを示唆している。政府にとって、最も不都合な情報だろう。
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