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2014年08月31日
本日は、アベノミクスにある数々の欠点の中から、パリバ証券の河野龍太郎のインタビュー記事を掲載しておく。末尾に、筆者の感想も蛇足で加えておくことにする。多くのエコノミストの中で、異色な河野氏だが、政府に阿ることの少ない「イケイケどんどん」なエコノミストではない。
≪ アベノミクスに4つの誤算、円安のデメリットが顕在化
(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに聞く)
――4〜6月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は年率でマイナス6.8%と大きく落ち込みました。消費の回復も遅れています。これまで消費増税の影響は「想定内」との見方が多かったですが、実は「想定外」のことが起きているのではないでしょうか。
河野:4〜6月期のGDP統計の結果、今の日本が直面している構造的な問題が明らかになったと考えています。実は今年の春頃から、日本経済に様々な問題が見えてきました。一言で言えば、「アベノミクスの4つの誤算」です。
――4つ、もあるのですか。
河野:はい。まず1つ目が、実質ベースの円安がかなり進んでいて、しかも海外の景気が持ち直しているのに、供給制約から実質輸出が伸びていない点。
2つ目が、企業の業績が回復しているのに、設備投資が更新投資や省力化投資の域を出ず、能力増強投資となっていない点。
3つ目が、個人消費が弱い原因は、消費増税の反動減だけではなく、実は円安で実質購買力が損なわれているという点。
そして4つ目が、人手不足や資材価格の高騰によって公共投資の執行が遅れている上に、いわゆる「クラウディング・アウト(政府の追加財政によって、結果的に民間投資や個人消費が抑制されてしまうこと)」の効果で、民間の建設投資が抑制されてしまっている点です。
それぞれの点を、順を追って説明してきましょう。
――よろしくお願いします。
潜在成長率の8倍も成長したから人手不足が起きた
河野:まず、前提として、私たちは日本の潜在成長率が大きく低下していること、そして、経済のスラック(供給能力の余剰)がほとんどなくなっていることを認識すべきです。
多くのエコノミストが潜在成長率は1%弱と試算していますが、私は0.3%に過ぎないと分析しています。しかし、2013年の実質成長率は大盤振る舞いの追加財政や消費税の駆け込み需要の影響もあって2.3%にもなりました。その結果、急に人手や設備が足りないということになった。
過去20年、総需要不足だけではなく、実は供給能力も低下していました。つまり、潜在成長率が0.3%しかないのに、その8倍も成長したものだから、人手不足などが一気に顕在化したのです。
生産設備もむしろ減っているので、輸出も伸びません。2013年以降、物価で調整すると、輸出は悪化していないものの、増えてもいません。世界経済は2012年の終わりから回復しています。米国の景気は昨年4月から回復していますし、中国も今年の春から持ち直しています。それでもなぜ、日本は回復しないのでしょうか。
過去20年の景気回復のパターンを振り返ると、輸出が伸びると生産が増え、家計所得が向上して消費も回復する。そして、企業の業績も回復し、設備投資も増えるというものでした。しかし、今回はこの回復パターンの起点になるはずの輸出が伸びていません。供給制約によって、その前提が狂っているのです。
円安でも輸出が伸びないという、政府・日銀の誤算
――なるほど。
河野:これまでであれば、世界の景気が回復すれば、日本では電機・IT(情報技術)セクターが回復していました。しかし、今回はそうなっていません。
その原因は、電機セクターは2000年代中頃に、過剰なストックを国内で積み上げてしまった反省から、国内の生産能力を大幅に減らしているからです。例えば、薄型テレビの生産能力はリーマンショックを経て大きく減りました。「ガラケー」と呼ばれる日本独自の携帯電話の国内生産も、iPhoneなどスマートフォンの登場でほとんどなくなりました。部材の生産も、半導体を作らなくなったことで減少しています。
ただし、電機セクターの生産能力の低下は、昨年の段階で既に分かっていました。誤算だったのが、自動車セクターの生産が回復していないことです。 北米では日本車が売れているのに、輸出が伸びていません。日産自動車やホンダがメキシコに工場を作るなどしたことから、国内生産が落ちているからです。部品についても、中南米から買う割合が高まっています。
「3.11」の反省と電機セクターの教訓で国内生産伸びず
――しかも、これほど円安が進んで企業業績が改善しているのに、国内の生産を増強しようという機運も高まらない。これが2つ目の誤算ですね。
河野:その背景には、「3.11」の反省があります。東日本大震災後、国内のサプライチェーンが分断されて生産に影響が及んだことから、部品の生産拠点を分散しようという動きが加速しました。その結果、日本での生産は増やさず、海外生産を増やすという流れになりました。
実質ベースで円安はプラザ合意当時の水準にあります。それほど円安が進んでいるのに国内生産が増えないのは、政府や日銀にとって誤算だったでしょう。
実は、国内生産を抑制するきっかけになっているのは、欧米がバブルで円安も加速した2006〜2008年頃に、電機セクターが国内生産を拡充するという誤った経営判断をした教訓があります。この教訓が広く輸出企業に広がっており、一時的に円安になっても生産を増強しようという機運は高まりません。
そもそも、海外に生産を移転するのは、国内で安価な労働力を調達できなくなったからです。マクロ的に見れば、モノの生産からサービスへと労働力が移動しているのです。このマクロ的な流れを、一時的な円安で変えるのは難しい。
実際、民間企業の設備投資は減価償却以下の水準でしかなく、能力増強になっていません。2009年以降、生産ストックは減っており、日本は構造的な問題を抱えているわけです。
円安によるインフレで実質所得が減少
――3つ目の誤算、実質所得の低下についてはどう分析していますか。
河野:消費が抑制されている一因も円安にあります。名目所得は増えているのに、円安でインフレになっているので、実質所得は昨年後半から減っています。実質所得が減っているのは、消費増税の影響だけではないのです。
昨年後半から消費増税の駆け込み需要で耐久財の消費が伸びる一方で、非耐久財の消費は弱かった。非耐久財の消費が弱かったのは、円安で実質購買力が減っていたからです。しかし、耐久財の駆け込み需要があり、全体として見ればそれが目立たなかった。ところが実際には、駆け込みも反動減も、1997年の消費増税の時よりも大きかった。
冒頭で解説した通り、供給能力に余剰があるときは円安のメリットは出ます。円安によって輸出が伸び、生産も増えて家計も良くなるからです。しかし、今は円安でも輸出が伸びないうえに、実質所得も減っている。円安のデメリットが目立っています。むしろ、今の日本経済には、円安よりも円高の方がメリットが大きい。
追加緩和も財政出動も手仕舞いを検討すべき
――円安が逆効果ということになると、アベノミクスそのものの前提が揺らいでいるということにもなりませんか。
河野:アベノミクスの一番の功績は円安誘導でした。アベノミクスが始まった当初は、確かに円安のメリットはありましたが、昨年くらいからデメリットの方が大きくなってきています。
実は、これは重大な意味を持ちます。円安のデメリットが大きいということは、円安に誘導する金融政策が日本経済にとって逆効果をもたらすということです。「今すぐ利上げをしろ」とは言いませんが、明らかに追加緩和はすべきではありません。異次元緩和(QQE)の手仕舞いを議論する段階に来ています。 また、財政政策の見直しも必要です。最近、民間で設備投資計画の見直しが相次いでいます。小売企業が人手不足や資材の高騰によって出店計画を下方修正していることなどは、その典型でしょう。
実は、この一因は、政府の公共投資が人手不足に拍車をかけていることにあります。政府の公共投資が労働力を抱え込んでしまっているのです。これが、4つ目の誤算です。そのため、今、政府がやるべきことは、むしろ公共投資を抑制して抱えていた労働力を民間に解放し、民間投資を促進することです。
消費税率10%引き上げ前に政策判断を間違うリスク
――消費税率を10%に引き上げるために、財政出動によって景気を下支えしようという動きも出ていますが。
河野:そうですね。消費税率を10%に引き上げるために、景気対策として追加の金融緩和や財政出動を求める声が強まっています。これは、さらに民間投資を抑制してしまうリスクがあるため、危険です。むしろ、アベノミクス3本の矢の1本目(金融緩和)、2本目(財政出動)の手仕舞いを始めて、3本目の構造改革を急ぐ必要があります。
成長率を高めるには、潜在成長率を高めるしかありません。潜在成長率が下がっている状況で、財政出動によって完全雇用状態となればインフレは加速します。そうなれば、名目賃金は上がったとしても、実質賃金は下落してしまいます。まさに(景気悪化とインフレが同時に進行する)スタグフレーションの状況に陥るわけです。
こうした兆候が見えてきてから政策を転換すればよいという見方もありますが、日本は巨額の公的債務を抱えており、インフレ率が上昇すれば財政破綻のリスクを抱え込むことになります。
マクロ政策はできるだけ早く転換すべきです。私は昨年から、大規模な金融緩和策や財政出動には一貫して反対してきました。昨年春から余剰供給能力がなくなっていたからです。こうした状況で追加緩和や財政出動をするのは、マクロ経済の作法からはあり得ません。
低成長時代にあった経済の仕組み作りを
――潜在成長率を高めるために、何をすればいいのでしょう。
河野:アベノミクスの一番の問題は、デフレ脱却と成長が大切だという正論を掲げることで、解決しなければならない喫緊の課題である社会保障問題の解決を先延ばしにしてしまったことです。
先ほど資本ストックが全く伸びていないとお話ししましたが、資本ストックの原資となる国民純貯蓄が、社会保障費によってほとんど食われてしまっている状況にあります。つまり、社会保障改革をしなければ資本ストックは伸びず、潜在成長率は上がらないわけです。
ただし、潜在成長率を高める努力をしたとしても、劇的に変化することはないでしょう。そもそも私たちは、低成長時代にあった経済の仕組みを作らなければならないのです。 ≫(日経BP:河野龍太郎に聞く、聞き手大竹剛)
上掲載のコラムで目新しいポイントは『政府の公共投資が人手不足に拍車をかけていることにあります。政府の公共投資が労働力を抱え込んでしまっているのです。これが、4つ目の誤算です。そのため、今、政府がやるべきことは、むしろ公共投資を抑制して抱えていた労働力を民間に解放し、民間投資を促進することです』と云うところだ。財政出動させて景気の下支えが、実は民間の経済活動を阻害している。20世紀型財政政策が通用しない“グローバル経済の罠”があったと云うことだ。
河野氏はエコノミストの立場から、言を濁しているが、経済成長神話に拘泥するな、と言っていることになる。遠慮がちに、低成長と言っているが、野人側から言わせてもらえば、マイナス成長が当然の日本と云う国の現実を認めた上で、財政金融政策と社会保障制度を同時並行で行わない限り、爆発的パンデミックが起きる可能性は目の前に迫っている。変わることを毛嫌いする官僚組織の言いなりになることは、変わっているのに、変わっていない時代の政策で乗り切ろうとすることになり、下痢で苦しむ患者に下剤を処方している藪医者なのだろう。
まあ、これもわが国の大改革、あらゆる“神話のそう棚ざらい”をするきっかけになれば、その悲劇は「奇禍」である。その奇禍を生かすも殺すも、その責任は、国民の選択眼に依拠するので、賢明な有権者が増えることを期待する。殆ど可能性のない期待を望まなければならないほど、日本と云う国の“全システム”は崩壊方向に進むだろう。まあ、GPIFが必死で国民の富を減らしてはくれるだろうが、それでも、国民は預貯金、タンス預金を切り崩し、5年は生きながらえそうだ。いやはや、わけの判らん将来に向けてと言いながら、現実的将来から目を背ける世論、これは運命的かもしれない。
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