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国連人種差別撤廃委員会は29日、日本政府に対して、ヘイトスピーチ(憎悪表現)問題に「毅然(きぜん)と対処」し、法律で規制するよう勧告する「最終見解」を公表した。慰安婦問題についても、被害者への調査や謝罪を求めた。
「最終見解」は、日本が1995年から加入する人種差別撤廃条約に基づく対日審査の総括に当たり、01年、10年に続き3回目。勧告に法的拘束力はないが、外国人労働者への差別問題など、約30項目で是正を要請した。
東京や大阪を中心に在日韓国・朝鮮人を中傷するデモが最近活発になっていることを受け、同委員会は今回、「ヘイトスピーチ」問題について初めて勧告した。委員会はまず、ヘイトスピーチについて「デモの際に公然と行われる人種差別などに対して、毅然と対処すること」を求めた。
また、ネットなどのメディアやデモを通じてヘイトスピーチが拡散している状況に懸念を表明。「ネットを含めたメディア上でのヘイトスピーチをなくすために適切な措置をとること」などを求めた。ヘイトスピーチにかかわる官僚や政治家への適切な制裁を促した。さらに、ヘイトスピーチの法規制や、人種差別撤廃法の制定を要請した。
ヘイトスピーチを巡っては今年7月、国連規約人権委員会も「禁止」するよう日本政府に求めていた。
今回の国連人種差別撤廃委員会の「最終見解」では、慰安婦問題についても勧告があった。日本政府に対し、「日本軍による慰安婦の人権侵害について調査結果をまとめる」ことを促した。
その上で、心からの謝罪や補償などを含む「包括的かつ公平で持続的な解決法の達成」や、そうした出来事自体を否定しようとするあらゆる試みを非難することも求めた。(松尾一郎)
■ヘイトスピーチを巡る国連人種差別撤廃委員会の日本政府への「勧告」の骨子
・(ヘイトスピーチを取り締まるために)法改正に向けた適切な措置をとる
・デモの際に公然と行われる人種差別などに対して、毅然(きぜん)とした対処をおこなう
・ネットを含めたメディア上でのヘイトスピーチをなくすため、適切な措置をとる
・そうした行為に責任がある個人や組織について捜査し、適切と判断される場合は訴追も辞さない
・ヘイトスピーチなどをあおる官僚や政治家に適切な制裁を追求する
・ヘイトスピーチの根底にある問題に取り組み、他の国や人種、民族への理解や友情を醸成する教育などを促進する
■日本の現状、世界の常識と隔たり
国連人種差別撤廃委員会が、日本政府に対してヘイトスピーチへの毅然(きぜん)とした対処を求めたのは、日本の現状と、欧州など世界の主要国の常識との間に大きな差があるためだ。
かつてユダヤ人らの大量虐殺を許したドイツでは、刑法に「民衆扇動罪」を設けてヘイトスピーチを規制するなど、欧州では厳しく取り締まる傾向が強い。
主要国では、日本と米国がヘイトスピーチの法規制を義務化する人種差別撤廃条約の条文について留保している。ただ、米国では、差別的な言動は大きな社会的制裁を受ける。
日本の外務省は、法規制に慎重な理由として、「表現の自由などを不当に制約することにならないかを検討する必要がある」と説明する。しかし、今回、日本のヘイトスピーチデモを審査した委員たちからは「人種差別の扇動は、『表現の自由』には含まれない」といった意見が相次いだ。
http://digital.asahi.com/articles/ASG8Y5JPRG8YUHBI01G.html?iref=comtop_6_01
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