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2014年8月28日
日銀総裁に黒田東彦氏を起用した人事は失敗であったと考える。
その理由は、黒田氏が中央銀行としての日本銀行の立場、職責、使命感に基いて行動しているのではなく、出身母体である財務省の利害、財務省の立場に立って行動していると見られるからである。
米国ワイオミング州のジャクソンホールで開催されたシンポジウム。
米国金融政策関係者の夏の恒例行事である。
避暑と観光を兼ねての下記研修である。
誰でも夏にこのような風光明媚な場所でくつろぎたいと考えるようなところだ。
黒田氏は昨年に引き続いて今年もこのシンポに参加した。
そこで述べたのは、日本経済が7−9月期から回復するという見解だった。
黒田氏によると、輸出が伸びて成長率が回復するのだそうだ。
時事通信社が発表したシンクタンク11社の2014年度日本経済成長率平均値は実質で0.5%である。
これに対して、日銀は1.0%成長を予想している。
1%成長も景気堅調と言える数値ではない。
しかし、民間予測は軒並み下方修正されて0.5%に引き下げられた。
8月13日に発表された4−6月期GDP統計を見れば、日本経済の現状先行きに対して警戒論が浮上するのは当然のことだ。
ところが、黒田氏は景気強気論をぶち上げている。
黒田氏の最重要関心事項は2015年度増税である。
安倍政権は11月17日に発表される本年7−9月期のGDP統計を見て増税を判断するとしている。
本年度の増税実施の判断は、昨年8月発表の昨年4−6月期GDPを見て決めるとされた。
去年は4−6月期統計を見て決定し、今年は7−9月期統計を見て決めるとの違いが出ているのは、財務省が増税決定に都合の良い数字を選んで使っているだけのことに過ぎない。
昨年は円安・株高・補正予算の影響で4−6月のGDP成長率が高く出るように仕組まれた。
本年は消費税増税の影響で4−6月期が大幅に落ち込むのに対して、7−9月期には反動でプラス数値が記録されると予想されている。
増税に日本経済が耐えられるのかどうかを吟味検討するのではない。
増税を強行するために、都合の良い数値を選別して利用しているだけなのだ。
4−6月期のGDP統計を精査し、現在の日本経済の状況を、虚心坦懐に、冷静に見つめるならば、黒田東彦氏がジャクソンホールで述べたような、能天気な日本経済見通しは示し得ないはずである。
かつて日銀の経済分析能力は高かった。
日銀による政策判断ミスは過去に何度か散見されるが、経済分析については、基本的に手堅い、隙のない対応が示されてきた。
ところが、黒田氏の発言は根拠に乏しい。
輸出が牽引して日本経済が回復すると主張するが、実は円安進行下でも日本の輸出は大幅拡大を示していない。
製造業の行動様式が構造変化している。
製造業は二つの理由で生産の海外移転を推進している。
一つは生産コストの問題だ。
ドルベースでの人件費コストにおいて、日本での生産は有利ではなくなっている。
製造業の特徴は生産物を運搬できる点にある。
運搬できるなら、グローバルに生産コストの低い立地が選ばれるだろう。
製造業の拠点は、このために、時間の経過とともに構造変化する。
日本の製造業が躍進したのは、日本のドルベース人件費コストがグローバルな基準で低かったからである。
この比較優位が消滅して、現時点では、エマージング市場がその比較優位を確保している。
製造業生産拠点の海外シフトは、今後も継続する可能性が高いのだ。
二つめに、企業が為替リスクを回避する意向を強めていることだ。
企業が為替レートを操作することはできない。
そして、為替市場では、時に、思いもよらぬ大変動が生じる。
日本で生産して輸出するというビジネスモデルは、企業が巨大な為替リスクを負うことを意味する。
プラスに出ることもあるがマイナスに出ることもある。このような攪乱要因を除去するには、海外需要を満たす生産活動は海外で行うことが合理的になる。
2015年を展望して、海外経済が力強く成長率を切り上げるとの見通しは成り立たない。
したがって、輸出が伸びて日本経済が力強く回復する可能性は高いとは言えない。
黒田氏が公約に掲げているインフレ率2%も実現しない可能性が高い。
これまでインフレ率が上昇した最大の要因は、円安進行であるが、円ドルレートは昨年5月以降、円安に振れていない。
中央銀行総裁である黒田氏が、中央銀行マンとして、公正な経済分析を示さず、財務省の増税路線を支援することだけを考えて行動するなら、日銀の信頼はこれから大きく毀損されてゆくことになる。
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