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日本の「強制連行」叩きをやめない米韓連合 朝日新聞の大誤報撤回は国外で無視されている
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41585
2014.08.27 古森 義久 JBpress
ワシントンの2つの大手研究所で、慰安婦問題をはじめとする日本の歴史認識をテーマとした大規模なシンポジウムが相次いで開かれた。
どちらも、朝日新聞が「強制連行」説を誤報と認め、取り消した後の出来事である。だが両シンポジウムともに、韓国の駐米大使などが、従来の「強制連行があった」「日本軍によって20万人が性的奴隷にさせられた」という日本糾弾を繰り返した。米国側の関係者の一部もこれに同調し、期せずして日本非難の大合唱となった。日本政府を代表する声はいずれの集まりでも皆無であり、日本の対外発信の欠如を改めて印象づけた。
■朝日新聞の訂正を認めない韓国
米国の大手シンクタンク「ヘリテージ財団」が8月19日に開いた「歴史が北東アジアの将来の前進を阻む」と題する討論シンポジウムでは、日韓の歴史問題をめぐる摩擦が主題となった。全体会議の基調演説者は、米国駐在の韓国大使、安豪宋氏である。安大使はこの演説で以下のように日本を批判した。
・日韓関係が悪化しているのは、日本側の政治指導者が過去の事実を認めないためだ。
・特に慰安婦問題に関して、日本の政治指導者たちは過去に起きたことを公正かつ正直な方法で認めていない。過去の事実を否定することで問題を解決しようとしている。
・日本側が最近、慰安婦問題で河野談話の検証結果を発表したことは不当であり、これまでの日本政府の政策に反して日韓関係を悪化させている。
安大使はさらに質疑応答で以下のように述べた。
・(「日韓首脳会談は、韓国側が前提条件をつけているから開けないのではないか」との質問に答えて)日韓首脳会談は、会談の結果、両国の関係が改善されることが事前に保証されていなければならない。だから事前の準備は前提条件ではなく、常識のことなのだ。
・(「慰安婦問題では、日本を非難する際の最大の情報源となってきた朝日新聞が、軍による強制連行の報道を誤報と認め、取り消した。安大使はそれでも日本側の強制を主張するのか」との質問に答えて)強制は河野談話でも認めている。強制の要素はそのほかにも十分に確立されている。「強制連行」については、これまでにも日本側の関係者たちから何度も疑問が提起されてきたが、その種の否定的な態度が日韓関係の改善を阻んでいるのだ。
要するに韓国は、朝日新聞の訂正を認めないのである。そして具体的な証拠を示すこともなく、ただ日本側の強制連行否定を不当な態度だとして非難するのだ。
このシンポジウムでは、基調演説以外に2つのパネルがあり、それぞれに米韓の専門家が3〜4人ずつ登壇して意見を述べた。そこでも米国側の専門家はみな朝日新聞の訂正を無視して、従来の「20万人の性的奴隷」とか「日本軍による強制連行」という虚論を繰り返した。
韓国側のパネリストの1人、在米韓国人学者の李晟允氏(タフト大学教授)の日本叩きは徹底していた。「日本側の歴史認識が日韓関係の真の正常化を阻んでいる」「日本軍の性的奴隷だった慰安婦の強制連行を否定するのは無責任な修正主義だ」「実際には強制連行を否定するのは日本政府だけだろう」などと露骨に事実に反する主張を述べ続けた。そこでも朝日新聞の虚報取り消しを無視する態度が明白だった。
■「河野談話の見直しは間違い」
これに先立つ8月13日、ワシントンのもう1つの大手研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」でも、日本の歴史認識、特に慰安婦問題への対応などを批判するシンポジウム「米国・韓国・日本3国関係――韓国の見解」が開かれた。
このシンポジウムは、韓国の元国会議員で国際政治学者の朴振氏が日本非難の基調講演を行い、それに関して質疑応答をする形で進められた。朴氏の演説には以下の諸点が含まれていた。
・日本は「普通の国」になりたいのならば、過去の侵略や残虐行為などの間違いを素直に認め、心から謝罪しなければならない。
・日本政府は河野談話の見直しを図っているが、そうした考え方は事実から見ても、法的に見ても、間違っている。多数の女性が慰安婦として日本軍に強制連行されたことは河野談話も認めている。
・慰安婦問題は、法的な問題でも、政治的な問題でもない。人道主義や倫理の問題なのだ。だから日本は誠意ある対応を続けねばならない。
朴氏は、「日本軍による強制連行」があったと断じて、それを基に一連の日本糾弾を打ち上げた。やはり朝日新聞の誤報訂正への認識はツユほども感じさせない。
■日本の声は小さすぎる
2つのシンポジウムを通じて痛感したのは、テーマが日本の歴史認識であり、日本の慰安婦問題であったのにもかかわらず、被告役の日本の立場がまったく考慮されていない点である。より具体的に言えば、これだけ大規模な日本についての討論の場に日本の代表が誰もいなかったという事実である。
ヘリテージ財団のシンポジウムでは、質疑応答の冒頭で米国人の参加者から「日本の駐米大使はなぜここにいないのか」という質問が出た。確かに、日本がこれだけ批判や非難の対象となるのならば、日本の立場の説明の機会が与えられて当然だろう。だが、日本政府の代表は壇上には1人もおらず、会場で発言したり質問する政府関係者もいなかった。
朝日新聞の慰安婦問題についての大誤報も、まったく話題にならなかった。ヘリテージ財団のシンポジウムで、安豪栄大使に朝日新聞の誤報撤回への反応を問いただしたのは私だった。日本側からは誰もこの重要な大誤報を指摘する気配がなかったので、私が質問したのである。
このワシントンでの2つのシンポジウムから浮かび上がるのは、第1に、日本政府機関、つまり在米日本大使館の発信があまりにも不足していることの危険性である。米国の首都の公開の場で、韓国側が米国の一部勢力と力を合わせて日本叩きを大合唱している。その日本叩きには根拠がないのに日本からは誰もなにも反論しない。こんな状態が続いてよいはずがない。
第2には、これもまた対外発信の問題と絡み合っているのだが、いま日本国内で論じられている慰安婦問題に関する朝日新聞の大誤報が取り消されたことが、日本の国外では無視されているという現実である。
朝日新聞の誤報訂正は8月5日と6日に掲載された。日本の歴史認識をテーマとしたCSISとヘリテージ財団のシンポジウムが開催されたのは、8月13日と19日だった。いずれも朝日新聞の訂正が出てから1週間とか2週間ほど後なのである。
それにもかかわらず、朝日新聞の訂正は話題に上らなかった。肝心の慰安婦問題を細かに検証する舞台だったのにもかかわらず、である。
日本が慰安婦問題の虚偽情報によって受けた不当な汚辱を晴らすのならば、朝日新聞の虚報の撤回を、ぜひとも米国のような第三国にも認知してもらわなければならない。だが、現実はそうではない。となれば、日本は慰安婦問題での対外発信の方法を大幅に変えることが急務となろう。
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