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産経新聞に牙を剥いた「言論の自由」軽視の韓国 国内メディアの軽薄さも浮き彫りに
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140825-00010007-bjournal-bus_all
Business Journal 8月25日(月)22時33分配信 江川紹子/ジャーナリスト
産経新聞ソウル支局長が、2度にわたって韓国の検察当局の事情聴取を受けた。記事が、「朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する名誉毀損に当たる」などとして告発を受けていたためだが、韓国大統領府も、産経新聞に対して、民事、刑事上の責任を問う考えを表明している。
●たとえ“毒”のある論評であっても
問題となったのは、加藤達也支局長が8月3日に産経新聞のサイトにアップしたコラム。「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と思わせぶりなタイトルがつけられている。事故の日、朴大統領の所在が不明になり、関係のある男性と密会していたというウワサが、韓国社会の中で流れており、それは政権のレームダック(死に体)化が進んでいる証しだ、といった内容。言いたいことは分かるが、「証券筋が言うところでは」と、真偽不明の、というより、かなり怪しげな噂をことさらに紹介している点などは、朴大統領に対する“悪意”がぷんぷんする、というのが私の読後感である。
ただ、産経流の“毒”がまぶされているとはいえ、コラムの大半を占めている情報は、韓国の新聞中央日報に掲載されたコラムに書かれたもの。にもかかわらず、大統領府がこれだけ目の敵にするのは、やはり産経新聞だから、だろう。
韓国の東亜日報は社説で、「産経新聞は、保守嫌韓新聞として悪名高い」「産経新聞のような低劣な新聞を日本の他のメディアと同等に扱うことはできない。政府も取材制限など適切な措置を講じなければならない」などと断じている。韓国国民にすれば、大統領は自分たちの国を代表する存在だ。大統領に対して批判的である人たちでも、外国の「嫌韓新聞」に揶揄されることだけは許せない、と憤慨する気持ちは分からないではない。
しかし、である。大統領府だけでなく、韓国メディアも感情的になりすぎて、民主主義の根幹とも言える言論の自由を置き去りにしてはいないか。
「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」
これは、18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールが言ったとされる(ただし、その証拠はないらしい)有名な言葉だが、言論の自由の真髄はこれだろう。民主主義社会では、様々な立場による分析や主張が、自由に流通することが望ましい。自分とは異なる、あるいは自分が不快に思う言論だからといって、排除していたのでは、言論の自由は守れない。むしろ、立場の違う者の言論の自由こそ、しっかりと守らなければならない。
もちろん、人の名誉やプライヴァシ―を傷つける言論は制約を受ける。だが、その程度は、対象が一般人の場合と公人の時では異なる。大統領は、公人中の公人。底意地の悪い批判や悪意の籠もった論評をされることも、やはり甘受すべきだろう。確かに、“毒”はまぶされているとはいえ、この程度のコラムでいちいち刑事事件にされたり、外相会談に持ち出されて外交問題化するのでは、民主主義国家である韓国の「言論の自由」のありように疑問を投げかけざるをえない。
●日本より先んじている、韓国の取り調べ
日本について誤った印象を与える、もしくは政府に批判的な情報をしばしば伝える海外メディアもある。そうしたメディアの記者の刑事責任を問うたり、禁足を命じるなどしたら、「日本には言論の自由、報道の自由はあるのか」と笑われるだろう。日韓関係には、その歴史的経緯など特異な事情もあるが、それによって言論の自由にダブルスタンダードを作ることがあってはならない、と思う。東亜日報社説のように、産経新聞に対する規制を求めるというのは、言論・報道機関が言論の自由に箍(たが)をはめようというものではないのか。韓国のメディアには、少し頭を冷やしてもらいたい。
その一方で、刑事の手続という点では、「さすが韓国」と言いたくなる点もあった。
加藤支局長は、産経新聞社がつけた弁護士と通訳を伴ってソウル中央地検に出頭し、事情聴取を受けた。この弁護士と通訳は、終始取り調べの場に立ち会うことができた。取り調べ自体は、検察側が用意した通訳を介して行われたが、その訳が正確であるかどうかを産経の通訳がチェックすることができた。加藤支局長に対して特別待遇をしたわけではないだろう。韓国では、日本よりはるかに早く、取り調べの録音・録画(可視化)が始まり、弁護人が同席することも認められる。
日本では、やっと法制審議会特別部会で、裁判員裁判対象事件と検察特捜部による独自捜査事件に限って、可視化を行う提言がまとまったばかりだ。刑事事件の取り調べに関しては、韓国が先んじていると言わなければならない。私が事実を確認した産経新聞の広報担当者も「(韓国では)こんなことができるんですね〜」と驚いていた。
また、日本も、言論の自由に関して韓国を笑っていられる状況ではない。昨年7月の参議院選挙の直前、TBSのニュース番組が紹介した市民団体のコメントに自民党が反発。番組では、安倍首相の発言がむしろ多く紹介されていたのだが、自民党側は「わが党へのマイナスイメージを、巧妙に浮き立たせた」として、TBSの取材拒否を決めた。結局、公示前にTBS側が謝罪文を出して取材拒否は終わったのだが、政権与党のこうした振る舞いは、「選挙が近い時期に批判は許さない」という態度に見えた。しかも、巻き添えを恐れたのか、ほとんどのメディアが、自民党の対応に批判をしなかった。
今回の、産経新聞に対する韓国政府の対応に対しても、他のメディアの反応は、私にはかなり物足りない。
批判的な、あるいは価値観の異なる言論に対して、どれほど寛容でいられるかで、その政権の“民主主義度”が分かるように思う。また、1つのメディアの言論の自由が脅かされている時に、他のメディアがどういう対応をするかで、その国のメディアの質や“言論の自由度”が見えてくるのではないか。
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