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安保相固辞し総裁選モードに入った石破氏に安倍首相との経済論戦を期待する
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40224
2014年08月25日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
9月3日の内閣改造に向けて、政治の動きが活発化してきた。先週半ばまで、焦点であった石破氏は安保相を受けるという報道だった。ところが、マスコミは先週末から一転して、石破氏が安保相を受けないというトーンになってきた。各報道機関の23日の見出しは以下だ。
NHK「石破氏 安保法制担当相就任は慎重に判断へ」
朝日「石破氏「安保相就任は困難」
毎日「石破氏:安保相を辞退へ」
読売「石破氏の安保相固辞」
産経「石破氏、安保相固辞の意向」
この種の話は、本人が語ることはないが、取り巻き・側近がいろいろと解釈してマスコミに話している。報道をまとめると、集団的自衛権の限定行使について、基本は同じであるが、石破氏は「国家安全保障基本法」が必要という立場であるのに対し、安倍首相は現行法改正で十分という立場の違いのようだ。
これを聞いて、石破氏らしい「法的な緻密さ」だと思った。石破氏本人からその趣旨のことが発せられたのは確かだろう。
なお、石破氏は集団的自衛権の議論は強く緻密だが、同氏が、個人の正当防衛は個別的自衛権にだけ対応しているものと思いこんでいるのは不可解だ。刑法の規定を読めば、自分または他人の権利侵害に対処するもので個別的自衛権と集団的自衛権に対応している。2014年05月19日付けの本コラム「飼い主を守る猫」でも行使する「集団的自衛権」に反対するマスコミの国際感覚の欠如」を参照してほしい。
■内閣改造でも石破氏周辺は「冷や飯」の公算
石破氏は、集団的自衛権の限定行使については自公両党での協議にも加わっていた。その場では、限定行使を実施するために、あくまで中身の話をしたのであって、法整備や法形式までは議論していない。だから、その点で異を唱えても許されるという考えだろう。
しかし、これは多くの人にとって意外だろう。集団的自衛権は、限定であれ、行使できるかどうかが問題で、そのための法形式は些細な問題に見える。もし、「国家安全保障基本法」がないと解決できない問題があれば、それを具体的に言えばいい。それは、いずれに国会に出される集団的自衛権行使のための「一括法」に法的に盛り込むことが可能だ。それで、当面は支障がないはずだ。
おそらく今年末までに実務的に日米ガイドラインを改定し、その上で集団的自衛権行使の一括法を、これまた実務的に行いたい安倍首相にとっては、そんな法形式などの空理空論より、現実問題に対処したほうがいいと思うだろう。ほとんどの政治家は法形式にこだわらないが、その点、石破氏には独特のこだわりがあるのだ。
ただし、理由は何であれ、石破氏の周囲の国会議員は、石破氏が安倍氏との対決モードなったことを喜ばしく思うだろう。というのは、今回の内閣改造でも、来年秋の総裁選まで石破氏の周囲は冷や飯を食わされる公算が高いのだ。
かつては、自民党内の派閥のトップが総裁の椅子を争った。今でもその傾向は残っているが、派閥を越えた連携もある。以下の表は、2012年9月の自民党総裁選における各総裁候補の推薦人名簿だ。
2012年9月の自民党総裁選は、第一回投票で、安倍141票(議員票54、地方票87)、石破199票(議員票34、地方票165)、町村34票(議員票27票、地方票7)、石原96票(議員票58、地方票38)、林27票(議員票24、地方票3)。議員のみによる決選投票で、安倍108票、石破89票と両者は僅差だった。
決選投票では、安倍首相は54票から108票へと54票上積み、石破氏は34票から89票へと55票上積みしている。町村の27票、石原の58票、林の24票を奪った形だ。
各候補は、決選投票になった場合、お互いにどう行動するかをすり合わせていたのだろう。大胆な推測であるが、安倍首相と石破氏が決戦投票になった場合、町村氏の票は安倍首相へ、林氏の票は石破氏へ、石原氏の票は安倍首相と石破氏の半分ずつといったところが基本線だろう。
結果として割り振られた党3役、閣僚、官邸のポストは当然、安倍氏の推薦人が多く、キャスティングボートを握った石原氏の推薦人がその次に多かった。町村氏の推薦人は、安倍首相と同じ派閥(清和会)であるが、本来はじめから応援していても当然であった。同じ派閥で2人も総裁候補を出した遺恨もあってか、割り当られたポストは少ない。
今回の内閣改造は大幅な入れ替えになる。これまでの慣行で初入閣の人の再選はまずないから、改造すれば大幅になるのは当然だ。今では、派閥で押し込むというより、一緒に戦ったということが考慮されているようだ。
もちろん、この推薦人に名前がなくても、麻生太郎財務相や菅義偉官房長官のように安倍首相を支えるキーパーソンはいる。ただし、安倍首相以外の候補の推薦人になった政治家は、政権の中枢に入る確率は低くなる。担いだ親分が負けたら、政治では「一回休み」である。
総裁選は政治家の戦いなので、掲げた政策の旗の下で一緒に戦ってくれた人に報いるのは政治家として当然だ。石破氏を推薦した人で入閣したのは、田村憲久厚労相だけだ。田村厚労相は、安倍首相が雌伏していたときに「デフレ脱却議連」で一緒に行動していた人という特殊事情が入閣に効いたのだろう。今度の改造で、石破氏の推薦人が入閣する確率はきわめて低いだろう。
もし、報道通りに、石破氏が安保相を受けずに無役になると、自民党内の様相は一気に変わる。来年秋の総裁選モードに突入だ。政策面でも変化があるかもしれない。総裁選でも同じだが、党内対立は国民にとって政策の品定めができる「政策のウィンドー・ショッピング」のようになって、政策が進化・変化する可能性が出てくる。筆者はそこに期待している。
■聞きたいのは「消費税増税の是非」
2012年9月17日付の本コラム〈金融政策のイロハも知らない自称「金融財政のスペシャリスト」も登場!「経済政策」から見た自民党総裁選5氏の「通信簿」〉(→こちら)では、安倍首相の経済政策が5人の総裁候補者の中で群を抜いていることを書いた。その成果がアベノミクスで、消費税増税までは良好なパフォーマンスだった。
そこでも書いているが、安倍首相と石破氏の経済政策は、まったく異なっている。安倍首相は、デフレに対して金融緩和、財政再建は経済成長で対応するという立場だ。筆者の理解するところでは、この考え方は世界標準だ。一方、石破氏は、デフレでも金融緩和はやるべきでないと言い、財政再建は増税で対処するという考えだった。
集団的自衛権の限定行使について、石破氏は安倍首相と意見が違うというが、それは法的形式の問題だ。また、石破氏の指摘は長期的に解決すべきであり、当面の現実問題の対応では、安倍首相と大きな差はない。とすれば、今回はむしろ政治家として、安倍首相に対抗することを宣言したというのが実態だろう。集団的自衛権の限定行使について意見が違うというより、むしろ政治的な便法と考えた方がいい。こうした形式論や観念論を持ち出すところが、石破氏らしいところだ。
この際、経済政策で前回総裁選のような論戦を再現してもらいたい。さすがに、金融緩和について石破氏が前のような不要論を言うとは思えないが、この点について両者のどちらが先見の明があったかどうかも議論したらいい。
さらに、本コラムで再三書いている通り、消費税増税は多くのエコノミストが「影響は軽微」と予測していたが、それに反して経済を痛めつけている。この点でも、石破氏は今でも増税に賛成なのかどうか。安倍首相も2012年9月時点での消費税増税に対する見方と、昨年秋の増税決定時に今の経済状況が見通せていたのかどうかなどを虚心坦懐に語ってほしい。
今年12月に予定されている消費税増税の判断で、「増税すべきでない」と経済評論家は簡単にいう。経済政策としてはそうだが、政治的にはまず不可能だ。
なぜなら、民主党政権時代に来年10月からの消費税増税法が既に成立している。これは、当時の民主、自民、公明の3党合意に基づくもので、それを延期しようとすれば、新たな法案を成立させなければいけない。しかも、3党合意を反故にすれば、特に公明党との関係は政治的には難しい。自民党内も大騒ぎで、安倍下ろしになるかもしれない。
ただし、普通であれば不可能なことも、政治的な動きが激しくなると、奇跡が起こることがある。かつて、小泉元首相は「いろいろと努力していると奇跡が起こることもある」と言っていた。さて、今回は奇跡が起こるだろうか。
その奇跡には、内閣改造後の補正予算、追加金融緩和の後に、消費税増税をスキップして、来年度の予算政府原案を作り、年内に解散総選挙というスケジュールが続く。
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