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時論公論 「動き出した東アジア外交」
2014年08月22日 (金) 午前0:00〜
出石 直 解説委員
こんばんは。ニュース解説、時論公論です。
地球儀を俯瞰する外交を掲げて、おととし12月の就任以来これまでに47か国を訪問した安倍総理大臣。しかし、隣国の中国や韓国との関係は冷え切ったままで、安倍総理に批判的な韓国のメディアからは「ドーナツ外交」などと揶揄されています。
その安倍政権の外交を担う岸田外務大臣は、先日、ミャンマーの首都ネピドーを訪問し、中国、韓国の外相と相次いで会談、北朝鮮の外相とも意見を交わしました。
ドーナツの穴を埋める外交がようやく本格化してきたようです。
今夜は動き出した東アジア外交について考えます。
先日、ミャンマーで行われたASEANの一連の外相会議は、これから秋に向けての東アジア外交の行方を占う重要なイベントでした。東南アジア諸国、日本、アメリカ、中国、韓国、北朝鮮などアジア太平洋地域の外相が勢揃いし、2国間の会談も活発に行われました。
ミャンマーでの日本の外交を軸に、中国、韓国、北朝鮮との関係を順に見て行きます。
【日中】
まず中国です。
第2次安倍政権になってから初めて実現した日中外相会談は、深夜、予告なしに行われるという異例のものでした
(P2:岸田発言)
午前零時を回って宿舎に戻ってきた岸田大臣は「両国関係の改善について、ゆっくりと、それぞれの意見を率直に述べ合った」と言葉少なに語っただけでした。
(P2:王発言)
一方の王毅外相はNHKの取材に対し「中国側の立場をはっきり伝えた。日本が中国との関係改善を希望するなら、実際の行動で示すべきだ」と述べ、あくまでも日本側の歩み寄りを求める立場に変わりがないことを強調しました。日本側が目指している日中首脳会談についても「それを言うのはまだ早い」と慎重な姿勢を崩しませんでした。
ようやく外相会談は実現したものの、両外相の発言を聞く限り、日中の溝はまだまだ深いと感じざるを得ませんでした。
【中韓】
むしろ際立っていたのは中国と韓国の蜜月ぶりです。
ネピドーに着いて真っ先に会談した両外相は、日本の歴史問題について「中国と韓国の立場は完全に正当であり正義だ」と日本をけん制、11月に北京で開かれるAPEC首脳会議に合わせて6回目の中韓首脳会談を行うべく調整を進めていくことでも合意しました。
「日本よりも韓国」という中国のあからさま姿勢が感じられる展開でした。
【日韓】
その韓国とのほぼ1年ぶりの外相会談は、冒頭から緊迫したやりとりで始まりました。
岸田大臣が「良好な日韓関係は相互の利益であり、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠だ」と水を向けたのに対し、ユン外相は「この一年を振り返ると、良い知らせよりもそうでない知らせの方が多かった」と切り出しました。
さらに、靖国神社参拝、教科書検定、河野談話の検証、防衛白書の発表、反韓デモやヘイトスピーチなどを次々と挙げ、「こうした状況によって、我々の努力は成果を上げることが難しくなった」と一気にまくしたてたのです。
ただ、会談に同席した外交筋によりますと、報道陣が退席した後はユン外相は態度を軟化させ、その後はなごやかなムードで会談は進められたということです。
外相会談に先立って行われたASEANとの会議の席では、ユン外相の方から岸田大臣に声をかけ握手を求める場面も見られました。
関係改善の兆しは、8月15日、日本の植民地支配から解放された日のパク・クネ大統領の演説からも伺えました。
大統領は「過去の歴史の傷を癒す努力が必要だ」と述べたものの、来年、両国が国交正常化から50年を迎えることを強調し、「未来志向的な友好協力関係に向かわなければならない」と、日本に対する直接的な批判は控え、全体としてかなり抑制的なトーンでした。
難しい問題は多々あるものの、少なくとも対話は続けていきたいという韓国側の意思は確かなようです。
【日朝】
最後に北朝鮮です。この春、就任したばかりのリ・スヨン外相は、キム・ジョンウン第1書記がスイスに留学していた当時、現地の大使をしていた人物で、キム第1書記に近い有力者とされています。
拉致被害者などの再調査が進められている最中でもあり、リ外相との会談が行われるかどうかに内外の関心が集まっていました。結局、最終日になって会議の合間に両外相が退席して別室で会うという形で意見交換が行われました。正式な会談としなかったのは、拉致問題の解決を急ぐあまり北朝鮮に歩み寄っているという誤った印象をアメリカや韓国などに持たれなくないという外交的な配慮があったからでしょう。
岸田大臣は、拉致被害者らの調査を着実に行うよう求め、核やミサイル開発についても
「日朝関係に影響を与える」として自制を求めました。
これに対しリ外相は「核やミサイルは日本を対象としているものではない」と応じたということです。
両者の間では、再調査の進捗状況などについてもっと突っ込んだやりとりがあったものと推察されますが、詳細は一切明らかにされませんでした。各国への配慮に加え、まさに今、物事が動いている時期だけに、ピリピリとした緊張感が感じられました。
ここまで、この夏、ミャンマーで展開された東アジア外交について見てきました。
中国、韓国、北朝鮮と、いずれも難しい国を相手に、外相会談、あるいは非公式な意見交換が実現しました。少なくとも「なかなか会えない、話もできない」という状況ではなくなり、日本の東アジア外交は新しい局面に入ってきたように思います。
ただ▽中国との関係では、尖閣諸島をめぐる対立、▽韓国との間でも、慰安婦問題をめぐって平行線が続いています。
▽北朝鮮とは、現在、進められている拉致被害者などについての再調査の結果次第です。
来月の第2週以降、外務省の局長級の協議で説明を受ける方向で調整が行われており、日本として受け入れられる報告となるかどうかにかかっています。北朝鮮がこのところミサイル発射を繰り返しているのも気になります。挑発がさらに激しくなれば拉致問題をめぐる政府間協議にも影響を与えかねません。
【まとめ】
こちらは秋の外交日程です。
▽ 9月には国連総会、▽11月にはネピドーでASEANの首脳会議、北京ではAPECの首脳会議、オーストラリアのブリスベーンではG20サミットと、秋は重要な外交日程が目白押しです。8月の外相レベルの外交を序盤戦とすれば、この秋からはいよいよ本格的な首脳外交が始まります。夏の外交で芽生え始めた対話ムードを、首脳レベルで実らせていくことができるのか。東アジア外交の秋の陣は、困難な問題を動かしていくという、かなりの力技が求められる展開になりそうです。
(出石直 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/195598.html
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