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【W杯と集団的自衛権】 岡田 武史さん
西日本新聞 2014年08月18日(最終更新 2014年08月18日 10時50分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/teiron/article/108511
◆情報を読み解く力必要
サッカー・ワールドカップ(W杯)の解説の仕事で約1カ月半、ブラジルに滞在した。帰国後、妙な感覚に陥ることが多い。私が普通だと思っていたことは実はそうではなく、逆に私が間違っていたのか、と。
ブラジルでまず感じたのは「スタジアム以外が全然盛り上がっていない」ということだった。イベントもなく、看板も街角にない。開催に反対する反政府デモなど、いろんな理由はあっただろうが、サッカー王国での大会に期待して行ったのに、これまでに見たW杯の中でも驚くほど街中が盛り上がりに欠けていた。
とはいえ、ブラジル代表の試合の日は違った。商店は全部閉まって、本当に街中から車も人もいなくなる。ブラジルが得点すれば方々から歓声が上がり、テレビを見ていなくても分かる。ブラジルにはサッカーが根付いており、一人一人が直接、W杯につながっていると実感させられた。
一方、日本はどうか。日本代表が負けても人々は渋谷でハイタッチをする。1次リーグで敗退した代表が成田空港に戻ると、千人を超えるサポーターが出迎え、歓声を上げてカメラを向ける。これは果たして普通のことなのだろうか。
「壮行会」と銘打った大会前のイベントは、ジャニーズ事務所のコンサートのような華やかさだった。メディアや広告代理店が空気を作り、多くの人がそれを介して、間接的にW杯に接しているようにも感じた。
私はこれまで、代表が掲げた攻撃的サッカーは悪くないと言ってきた。ただ強豪相手に攻められたなら、守らなければならない。これはごく当たり前のことだと思うのに、メディアもサッカー界も何も疑わず「攻撃的サッカー」へ流れてしまう。日本人は空気に流される。残念ながらメディアはそれを抑える安全弁として機能していなかった。
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安倍晋三政権が、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更を閣議決定したことを、ブラジルで知った。そんなことがあるわけはない、国会議員も国民もばかじゃない、まずは先送りだなと思っていたから心底、驚いた。帰国して、何事もなかったかのような空気に、また驚いた。
大国間に生きる小国として、自衛隊の存在を含め、安全保障政策については憲法解釈で対応してきた。だが、集団的自衛権までは無理があるだろう。これでは立憲国家ではなくなる。国民投票をした上で改憲し、その上で集団的自衛権の行使を認めるのなら、納得せざるを得ないが。
国民の側にも責任がある。単に選挙権だけを行使すればよいというものではない。民主党の失敗が引き金と思うが、誰が政権をとっても一緒と、半ばあきらめが出ているように思う。民主主義では、国民一人一人が責任を分担する、ということを忘れている。
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よく、コンピューターに人間が支配される映画がある。今まさに皆がえたいのしれない空気に支配され、思考停止に陥っているのではと恐怖感を持っている。
日本人がメディアを信じる割合は世界でも屈指の高さで、先進国では群を抜いているとの調査結果があるそうだ。一方、最近ではインターネットで自分の欲しい情報しか見なくなっており、興味がありそうなニュースが自動的に表示されるサービスまである。
今、国民一人一人が「メディアリテラシー」(情報を読み解く力)を身に付ける必要があるのではないか。自分で疑い、考え、判断ができる。そんな教育を学校でやっていく。遠回りに見えるが、それしか道はないように思える。
【略歴】1956年、大阪市生まれ。早大から古河電工(現J2千葉)入りし日本代表に。代表監督として日本を98年フランス大会でW杯初出場に導く。Jリーグ札幌、横浜M監督を歴任後、再び代表監督となり2010年W杯南アフリカ大会16強。
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※次回は宮本雄二さんの「提論」です
=2014/08/17付 西日本新聞朝刊=
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