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官々愕々 時代遅れの「正義の味方」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40110
2014.08.16 古賀茂明「日本再生に挑む」週刊現代 :現代ビジネス
武器輸出三原則が撤廃されてから4ヵ月。続々と具体的な案件が表に出て来た。
今年に入って、世界各地で深刻な国際紛争が生じている。各地で繰り広げられる激しい戦闘を見ていて気づくのは、国境を越えていともたやすく武器が拡散している事実だ。「反政府武装勢力」と呼ばれるグループが、高度な武器を使って急速に支配地域を広げる現象が見られるが、それを可能にしたのが、米英仏ロ、サウジアラビア、カタール、イラン、そして最近は中国などの武器輸出である。表向きは、自衛のため、人道のためと言うのだが、本音は単純に自国の利権の維持拡大である。そこでは、自国の敵の敵は味方、味方の敵は敵という短絡的・短期的な視点で武器が供与される。
例えば湾岸の親米国であるカタール。民主国家ではないが、米国石油メジャーの利権を守ってくれるから米国にとっては大切な味方だ。そこで米国はカタールに武器を供与する。
スンニ派のカタールにとってシーア派は敵だ。シリアのアサド政権はシーア派。カタールの敵である。それと戦うスンニ派の反政府勢力は、アサドの敵だからカタールの味方だ。そこで、カタールは、彼らにこっそりと武器を供与した。ところが、その武器が、アルカイーダの流れを汲むスンニ派武装勢力ISIS(最近「イスラム国」と改称)に流出した。この武器を使って、「イスラム国」が、今、イラクで猛威を振るい、シーア派のマリキ政権を慌てさせている。イラクのマリキ政権は米国が作った政権だ。米国は武器も軍事訓練も供与してきた。米国のカタールへの武器供与は廻り廻って米国の首を絞めている。
このように、今や、「正義とは何か」がわからなくなっている。だから、どの国も、地域紛争に軍事介入することに極めて慎重だ。
安倍政権は、武器輸出解禁に当たって、国際紛争を助長しないように歯止めをかけたと説明した。しかし、実際には時代遅れの「正義の味方」路線を採っている。米国は正義で、日本の味方。だから米国の味方は日本の味方だし、米国の敵は日本の敵だと考える。極めて危ない考えだ。
7月17日、安倍政権は国家安全保障会議(NSC)で、三菱重工業による地対空ミサイル「パトリオット(PAC2)」に使う部品の対米輸出案件を承認し、その部品が組み込まれたPAC2完成品のカタールへの輸出まで認めた。
カタールについては「親米国で紛争に使われるリスクは低い」としているが、要するに、カタールは親米、つまり、米国の味方。だからカタールは日本の味方、という短絡的な審査で認めたのだ。しかし、カタールが何をやっているかを考えれば、明らかに認めてはいけない案件である。
米国の軍需産業は強大な政治力を持っている。だから、多少のリスクはあっても、そんな議論は蹴散らかされて、米国政府は危ない橋を渡る。日本はそれにのこのこと付き合って出て行くのだ。
日本の武器産業は、表向きは「政府の方針に従うだけ」と言いながら、内心諸手を挙げて喜んでいる。自民党の国防族ももちろん大喜びだ。しかし、それ以上に喜んでいるのが武器輸出を所管する経産省。NSCでの審査のお膳立ても経産省がする。そこに巨大な利権が生まれ、武器産業への天下りポストも大幅に増えるだろう。
70年かけて築き上げた日本の「平和ブランド」など彼らには何の関係もない。経産省は、予算も規制の権限も小さく、長らくその存在意義が問われてきただけに「安倍さんは救世主」という声が聞こえる。
『週刊現代』2014年8月16・23日号より
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