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安倍首相悩ます改造人事、「石破安保相」押し切ればしっぺ返しも
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40138
2014年08月11日(月) 田崎 史郎「ニュースの深層」 現代ビジネス
人事面において、政界が官庁、民間企業と根本的に異なるのはその人事が国民注視の下で行われ、その評価がただちに内閣支持率の上昇、あるいは低下となって表れることだ。官庁、企業の人事は組織内が機能するかどうかだけの観点で行えばいい。しかし、政界の人事、とりわけ9月3日ごろに行われる内閣改造・自民党役員人事は支持率に大きな影響を与え、第2次安倍政権「第2章」の行方を左右することになろう。
■菅官房長官、3副長官は順当に留任
首相・安倍晋三は9日、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典出席のため訪れた長崎市内のホテルで記者会見し、内閣改造について「官邸のまさに要になっている官房長官には、安定的に政策を進めていく上で今後とも引き続きその職にとどまってもらいたい」と述べ、官房長官・菅義偉を留任させる意向を表明した。内閣改造の1カ月近くも前に「発令」するのは極めて異例だ。
しかし、違和感は全くない。菅が600日近く続いたこの政権で果たした役割や、第1次安倍政権で総務相を経験し、今後取り組む最大課題である地方創生のツボを心得ていることを考えれば順当な人事と言える。
1次政権の反省を踏まえたという点で注目されるのは菅の留任と合わせ、加藤勝信、世耕弘成、杉田和博の3官房副長官の留任も表明してしまったことだ。1次政権で首相補佐官らスタッフを重視した結果、各省との対立が深まり、政権が機能不全に陥ってしまった。
この反省から、2次政権では「官房長官─官房副長官」というライン重視に切り替えた。かつ、菅は3副長官に任せるべきところは任せ、安倍の言の通り、扇の「要」の役割を果たしている。
安倍は首相補佐官も留任させる考えを示したが、あまり大きな意味はない。この政権での首相補佐官の役割は小さい。
首相補佐官のうち、国会議員は衛藤晟一(参院当選2回、衆院4回)、礒崎陽輔(参院当選2回)、木村太郎(衆院当選6回)の3人。いずれも、安倍に対する忠誠心は強いが、政権への貢献度はそう高くない。しかし、首相補佐官を外すと、閣僚や副大臣などで処遇せざるを得なくなるという事情を考慮したとみられている。
■石破に替わる党幹事長も難題
焦点は自民党幹事長・石破茂の処遇だ。安全保障法制担当相を打診と大きく報道されているが、安倍は「(人事は)まだ全く決めていないわけだから、打診することはない。それははっきり申し上げておきたい」(7月31日、サンティアゴ)と否定している。報道と安倍の言の間にズレが生じているのは次のような理由からだ。
安倍と石破は7月3日夕と同24日昼にそれぞれ1時間程度、2人だけで会い、人事について話し合っている。実は、安倍は石破に2つのことを言っている。
「安全保障法制担当相を石破さんにやってもらうのが一番安心する」
「これから来春の統一地方選などがあり、選挙を誰が取り仕切るのか、難しい」
この内容が漏れ、朝日新聞が7月29日朝刊で「首相、幹事長交代の意向 安保相を打診、石破氏難色」と報じ、他紙も追随した。石破から話を聞いた側近議員が「『石破外し』の口実」ととらえ、リークしたのが原因だった。
一方、安倍は2人の会談内容が漏れたことに不信感を抱き、次第に頑なになった。安倍は今のところ、「石破安保法制担当相」を押し切る構えだ。
しかし、この人事方針は危うい。選挙においては石破ほど熱心な議員は見当たらない。10月の福島知事選、11月の沖縄知事選で連敗すれば、幹事長を交代させた安倍の責任も問われる。
また、菅と石破は強い信頼関係で結ばれており、菅と新幹事長がこうした関係を構築できるかどうか分からない。何よりも、石破を外すと「安倍は強引」という印象を与え、支持率に下げ要因として働く。世論の反応も計算に入れなければならないことが政界人事の難しさだ。
安倍は夏休みを終え、仕事を再開する25日以降に具体的な人事工作に乗り出す。まだ、引き返す余地もあるが、石破の人事を強行した場合、安倍はいずれその代価を払わざるを得なくなるだろう。
(敬称略)
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