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美濃加茂市内の中学校に設置された水源の浄水設備
最年少市長贈収賄事件の怪 危うい水ビジネスの罠、警察のスケープゴートか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140809-00010001-bjournal-bus_all#!bzhpCT
Business Journal 8月9日(土)3時0分配信
昨年、「全国最年少市長」と脚光を浴びてから一転、贈収賄事件の被告人として身柄拘束され続けている岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告(30)。学校プールの浄水設備導入をめぐって業者から30万円を賄賂として受け取った疑いがかけられるが、市長側は一貫して現金の授受を否定。警察、検察と真っ向から対立している。ただし、藤井被告がこの浄水設備にのめり込んできたのは事実だ。贈賄側業者と協働してきた関係者の証言からは、その危うい「水ビジネス」の実態が浮かび上がってくる。
●現金授受は否定、弁護団は「人質司法」批判
名古屋地検の起訴状によると、藤井被告は美濃加茂市議時代の昨年3月から4月にかけ、名古屋市の地下水供給設備販売会社、水源社長の中林正善被告(44)=贈賄罪などで起訴=から「浄水設備を市に導入してほしい」などと頼まれ、市議会で導入検討を促す発言をしたほか、市担当者に契約締結を働き掛けた。その見返りとして4月2日に10万円、同25日に20万円を中林被告から受け取ったとされる。
受託収賄容疑で今年6月24日に逮捕、7月15日に起訴されても、藤井被告は「現金は一切受け取っていない」と無実を訴え、市長も辞職しない意思を表明している。弁護側は再三、保釈請求などの手続きを取ったが、裁判所は「罪証隠滅の恐れがある」などとして却下。弁護団の郷原信郎弁護士は「否認する被告人を長期間拘束して冤罪を生み出す『人質司法』だ」と批判している。
今後は争点を詰める公判前整理手続きなどを経て初公判の日程が組まれる。藤井被告は浄水設備の導入を目指していたことは認めており、市議会での発言や市の担当者への働き掛けについては争わない見通しだ。法廷での意見陳述でも「この浄水設備が美濃加茂市民にとってよいものだと思っていた」と強調していた。そもそも市長本人が導入に前向きだったのに、業者がわざわざ賄賂を渡すこと自体、不自然だともいえる。
市長がここまでのめり込んだ浄水設備とはなんなのか。贈賄側の水源の資料や関係者の証言から、その詳細が見えてきた。
●災害対応の浄化設備、売り込みは偽りだらけ
「自然循環型雨水浄水プラント」と銘打ったその設備は、学校の校舎や体育館の屋根、そしてプールにたまる雨水を濾過器などで浄化、受水槽に貯めて災害時の「生活用水」などに活用するのだという。学校などのプールにはもともと濾過装置が付いており、使用時は常に水を循環、浄化している。ただし、それは髪の毛や雑菌を除去するのが目的で、飲用には適さない。
一方、水源のこの設備は通常の濾過装置とは別に、配管を新たに引いて濾過器などを取り付け、飲用レベルまで浄水する。ポンプなどの動力は太陽光発電でまかない、バックアップ用にプロパンガス発電機も備える「自立型」のシステムとなっていた。
中林被告はこれを「太陽光と雨が降る限り、災害時に最大限活用できる」「イニシャルコスト、ランニングコスト『実質0』という利用も可能」などとうたって自治体に売り込んでいた。工事費は600万円ほどかかるが、美濃加茂市では「実験として無料で設置する」として、藤井市長の母校である市内の中学校に据え付けることを決めさせた。
目的は立派に見える。ただ、中林被告について「最初からうさんくさかった」と明かすは、このプラントを一緒に開発していた京都府内の浄水設備製作会社の関係者だ。
同社はゼオライト系の独自の鉱物で、ヒ素やフッ素まで除去するという濾過器を開発、30年ほども前から全国の自治体や病院などに納入する実績を持っていた。そして3年前の11年、東日本大震災が起こると、「福島で水中の放射能を除去する試験もしていた」。こうした話を聞きつけた中林被告が、同社の濾過器を使いたいと依頼してきたという。
「初めは『名古屋でやる』と言っていたが、だめになったらしく美濃加茂になった。中林は『いずれ正式に採用され、金が入る』と約束していた」
しかし、今年2月に突然、愛知県警が同社に家宅捜索に入る。中林被告が銀行から融資金1000万円をだまし取ったとして逮捕された詐欺事件で、同社も共犯と疑われた。ところがのちに、中林被告が同社の印鑑を偽造したり、勝手に名前や実績を使ったりして設備を売り込んでいたことがわかった。「うちは被害者。今も大変な迷惑をこうむっている」と社長は憤る。
●名古屋の国会議員にも働き掛けたと吹聴
水源の資料によれば、中林被告は京都産業大学経営学部卒業後、野村證券に入社。名古屋支店営業部などで勤務後、退社して販売促進コンサルタントに。09年に水源を設立、「日本が世界に誇れる資源である『水』を取り扱う企業」とうたっていたが、登記上は「経営コンサルタント」から「飲食店の経営」「ホームページ制作」までを事業目的にしていた。異業種交流会などを頻繁に開いていたという。
名古屋市内の浄水設備会社は「事件があるまで、まったく聞いたこともない会社だった。われわれは狭い業界な上に、少子化などでプールのある学校も減り、はっきり言ってじり貧。災害時用の浄水設備も扱っているが、年に1つ売れればいいほう。そんなところで新しいビジネスを仕掛けるなんて、そもそも無理がある」と首をひねる。
そして、中林被告に振り回された京都の業者は次のように話す。
「中林は『名古屋の国会議員にも働き掛けている』と言っていた。全国の小中学校で採用してもらうためだと。どこまで本当かわからないが、美濃加茂市長はそうした証言に飛びついた警察のスケープゴートになったのではないか」
果たして藤井被告は賄賂を受け取っていたのか、はたまた無罪なのか、今後の裁判の動向に注視したい。
関口威人/ジャーナリスト
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