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日本と事を構えている場合ではない?
日中首脳会談が実現しそうな習近平の5つの事情
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40090
2014年08月08日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
中国・北京で11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて、途絶えたままになっている日中首脳会談が開かれそうな気運が出てきた。ポイントは中国を取り巻く内外情勢の変化だ。はたして、安倍晋三首相と習近平国家主席の会談は実現するのか。
7月下旬に訪中した福田康夫元首相が習氏と極秘に会談し、膠着状態に陥っている日中関係を前進させるために首脳会談をもちかけたのは、各紙が報じたとおりだ。そのうえで、産経新聞は習氏が「現在の日中関係を打開しなければならないとの考えを伝えた」と中国側の前向き姿勢を報じている(8月7日付)。
中国はこれまで、尖閣諸島の領有権をめぐって争いがあることを認めない限り、日中首脳会談に応じない姿勢を示してきた。頑なな姿勢に変化が出てきた背景として次の5点を指摘できるだろう。
■南シナ海では中国は守勢に回る
まず南シナ海である。
中国の巡視船は5月以来、西沙諸島でベトナムの船に体当たりや放水を繰り返して緊張を高めていた(5月9日公開コラム、http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39215、を参照)。それは石油探査作業をベトナムに邪魔させないためだった。現場はベトナムの排他的経済水域(EEZ)の中だったが、中国は「自国の水域」と主張して深海探査リグを稼働させていた。
これに対して、ベトナムのグエン・フー・チョン総書記は「戦争に突入したらどうするか、と多くの人に聞かれる。われわれはすべての可能性を想定して準備をしなければならない」と語り、いざとなったら戦争も辞さない強硬姿勢を示した。
米国も対中姿勢を修正した。昨年6月の米中首脳会談では中国が提唱する「新型大国関係」に理解を示していたが、7月に北京で開かれた米中戦略・経済対話では、ケリー国務長官が「大国」の2文字を削除して語り、オバマ大統領も「新しい型とは意見の違いを建設的にコントロールすることだ」という声明を出している。
すると中国は7月15日に突如として石油探査の中止を発表し、探査リグを現場から撤収した。それまでの強硬姿勢からみれば、大きな方針転換だ。タイミングからみて、ベトナムの抵抗と米国の圧力が功を奏した形である。南シナ海で中国はあきらかに守勢に立たされている。
■周永康に勝利も、国内テロは止まらない
次に周永康問題だ。
先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40006)で指摘したように、この事件は習一派と周永康一派の権力闘争が本質である。習指導部が宣伝している「反腐敗(腐敗撲滅)」の闘争とは、一般国民向けのアピールを狙った大義名分にすぎない。中国の歴代指導者と党エリートたちは多かれ少なかれ、立場を利用して莫大な資産を築いている。習近平も例外ではない。
そうみれば、今回の摘発は習総書記が周と背後にいる大物である江沢民元総書記との権力闘争に勝利しつつあることを物語っている。習近平にとって、ライバルと目の上のたんこぶが消えつつあるわけで、それだけ自分の裁量権が広がる話である。
これまでは国内の政治的安定を確保するために対日強硬路線をとらざるをえなかった側面があった。だが、自分を攻撃する敵がいなくなれば、強硬路線を修正する余裕が出てくる。習指導部は11月のAPECまで周永康事件がどういう展開になるか、ずばり言えば、ライバルたちから反撃がないかどうかを慎重に見極めるはずだ。
3つ目は新疆ウイグル自治区を中心として国内で頻発しているテロだ。
これも産経新聞が伝えたが、7月末にカシュガル地区ヤルカンド県で起きた暴動について、死者は当初の100人規模ではなく「少なくとも2000人」(世界ウイグル会議の議長発言)という情報がある。正確な人数はともかく、今回の暴動は1989年の天安門事件を思い出させるような規模の騒乱だった可能性がある。
そうだとすると、習指導部にとって重大事件だ。これまでも国内でテロや騒乱に対して鎮圧作戦を繰り広げてきたが、どうにも止まらないところまできた感がある。習近平としては、国内の締め付け強化こそが最重要案件になりつつある。
国内問題にエネルギーを注ごうとすれば、日中関係を含む対外関係はできるだけ鎮静化させたほうが都合がいい。
■経済面では問題続出
それから、シャドーバンキング問題である。
このところ問題は一見、沈静化したように見えるが、根本的な解決には至っていない。各地の新興開発地が軒並みゴーストタウンになっているように、不動産バブルはとっくに弾けた。
不動産開発の原資になっていたのは、高利回りにつられて理財商品を買った投資家たちの資金である。ハイリターンの源は不動産バブルだったのだから、それが破裂すれば、高利回りの約束を守るすべはない。つまりシャドーバンキングも破綻する運命にある。
そうなると、いずれ中国は経済面でも苦境に陥る可能性が高い。そのとき米国と緊張を高め、日本も敵に回している状態は望ましいかといえば、そうではないだろう。
最後の5つ目が鶏肉問題だ。
使用期限切れの鶏肉を平気で出荷していたのは会社ぐるみだったと判明している。日中両国政府は8月6日から北京で食の安全に関する緊急実務者協議を開いた。協議の枠組みは2008年の毒入りギョーザ事件の後、設けられていたが、外交関係が悪化したのに伴って事実上、休眠状態だった。
それが再開された背景には、中国側に「この際、日本と政府間協議のパイプを開きたい」という秘めた意向があるとみていい。「災い転じて福となす」ではないが、不祥事を機に話し合いのとっかかりを見つけたい、という意図がにじみ出ているのだ。
実はこの協議、日本側は水面下で菅義偉官房長官の主導で始まった。少なくとも日本側に「まずは鶏肉問題を入り口に話し合うのであれば、相手の面子をつぶさないだろう」という深謀遠慮があったのは間違いない。
■日本は前のめりで動く必要なし
こうしてみると、日中首脳会談をどうするかは、すぐれて中国側の問題であると分かる。日本側は安倍首相が何度も「門戸は開かれている」と強調してきたように、べつに会談に事前の注文や条件を付けてきたわけではない。
だから、ここへきて日本側はあえて前のめりに動く必要はない。せいぜい鶏肉問題で「もう少し管理をしっかりしたらどうですか。困るのはそっちですよ」と注文をつけるくらいだろう。一部のマスコミは「緊張緩和に向けた外交努力が求められる」などと陳腐な決まり文句を繰り返すが、それは福田訪中でひとまず一段落だ。
次は中国がどう出るか、を見極める局面である。
(文中敬称略)
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