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朝日新聞は5日付の朝刊で従軍慰安婦の問題を巡る同紙の報道内容を検証する特集記事を掲載し、「一部に事実関係の誤りがあった」と認めた。これについて自民党の石破茂幹事長は5日、「地域の平和と安定、隣国との友好や国民感情に影響を与えてきた報道だ。検証を議会の場でも行うことが必要かもしれない。真実を明らかにしなければ、この先の平和も友好も築けない」と述べ、国会として何らかの対応を行う可能性に言及した。党本部で記者団の質問に答えた。
政権与党の幹事長が、報道内容を国会で検証する必要性に言及したことは、言論機関に対する政治権力の圧力と取られかねない。
朝日新聞は「韓国・済州島で強制連行した」との証言を「虚偽だと判断し、記事を取り消す」とし、「裏付け取材が不十分だった」などとしている。石破氏はこれについて、「非常な驚きを持って受け止めている。裏付けの取れない記事を、なぜ今日まで正しいとしてきたのか」と批判した。
さらに石破氏は「多くの人々がこの報道を前提に、いろいろ議論してきた。取り消された報道に基づいて生じた関係の悪化、怒りや悲しみや苦しみを氷解させるために必要なら、議会がその責任を果たすのはあり得ることだ」と語った。
関係者の国会招致についても「地域の新しい環境の構築に有効ならそういうこともあり得る」と実施する可能性に言及。「糾弾するとかいう話ではなく、報道に基づいて日本に怒りや悲しみを持っている国々、この場合は特に韓国に対する責任でもある」と述べた。ただ一方で「議会のことなので、私の一存で決めるわけにいかない。私が『すべきだ』と言っているのではない」とも語った。
朝日新聞が誤りを認めると同時に「戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできない」としたことを踏まえ、石破氏は「書かれた社の責任を果たされたい。続き(の検証)を読まないと判断できないが、疑問が氷解したわけではない」と解明を促した。【高橋恵子】
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■解説
◇報道の自由、懸念残す
自民党の石破茂幹事長が従軍慰安婦に関する報道の誤りを認めた朝日新聞の記事を受けて、国会での検証や報道の責任に言及したことは、報道の自由と政治の関係を巡って論議を呼びそうだ。
石破氏は従軍慰安婦について「国民も非常に苦しみ、そしてまた国際的な問題ともなっている」と述べた。当時の慰安婦報道全体に問題があったかのような言い方だが、そもそも政府は6月、慰安婦への旧日本軍の関与を認めた1993年の「河野談話」について、有識者を集めた検証の結果、談話の継承を確認したばかりだ。
さらに記事を読んだ感想として「真実を明らかにしなければ、この先の平和も友好も築けない」「社会の木鐸(ぼくたく)、公器たる新聞が十分な裏づけも取れないままこういうことをやったのかについて、疑問が氷解したわけではない」とまで踏み込んで、国会による報道の検証の必要性を示唆した。
だが本来、報道の内容には、報道機関自身が責任を持つべきだ。ジャーナリズム論を専攻する小黒純・同志社大大学院教授は「今回の報道について国会で検証するようなことがあるとは思えない。政治的に利用しようとしているのを感じる」と話す。
安倍政権が発足してから、地方紙の報道に対して防衛省が監督権限のない日本新聞協会に申し入れをするなど、報道に対して政治が口を出す場面が目につく。
民主主義社会で、報道の自由が保障されなければならないのは言うまでもない。【青島顕】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140806ddm001010196000c.html
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