04. 2014年8月06日 09:32:32
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何度も言っているように、今の国内外の情勢を考えれば、成長戦略が機能して、生産性が上昇しなければ、実質生活水準は下がり続けるのは、当たり前の話 http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140805/269650/?ST=print 消費増税に立ちはだかる景気後退のリスク 新家義貴・第一生命経済研究所主席エコノミストに聞く 2014年8月6日(水) 渡辺 康仁 駆け込み需要の反動減で4〜6月期は大幅なマイナス成長になったとの見方が広がっている。企業の生産活動も振るわず、景気後退のリスクもささやかれ始めた。新家義貴・第一生命経済研究所主席エコノミストは年末の消費増税の判断にも影響を与える可能性があると指摘する。 (聞き手は渡辺康仁) 内閣府は8月13日に4〜6月期のGDP(国内総生産)を発表します。消費増税前の駆け込み需要の反動がどの程度になるかかが注目されています。どう予測していますか。 新家 義貴(しんけ・よしき)氏 第一生命経済研究所主席エコノミスト。1975年広島県生まれ。1998年東京大学法学部卒業、第一生命保険入社。同年第一生命経済研究所出向。2002〜2004年に内閣府出向後、同研究所に復帰し、日本経済の分析・予測を行う。2011年4月から現職。(写真:清水盟貴) 新家:現在のところ4〜6月期の実質GDPは前期比年率で6.8%減になったと見ています。6月くらいの時点では4〜5%のマイナス成長という見方が多かったですから、想定よりも相当悪かったということになると思います。
やはり個人消費が思ったほど戻っていません。消費増税後の4月の反動減がかなり大きく、5月、6月も戻り方は鈍いですね。エコノミストの多くは反動減の大きさを読み誤りました。企業はもっと厳しめに見て覚悟もしていました。だから、「想定内」という言葉が出てくるのだと思います。その証拠にマクロの統計が落ちている割には景況感は冷え込んでいません。私を含めエコノミストは想定が甘すぎたのでしょう。 消費増税によって実質の可処分所得が減っていますから、その影響も出ています。GDPが年率で6.8%減少するうち、かなりの部分は個人消費や住宅投資の反動減で説明できますが、実質的な所得の減少で消費が減っている面もあります。反動減だから大丈夫とは言い切れなくなっています。4〜6月期のGDPははっきりとした弱い結果になったという評価にならざるを得ないと思います。 多くのエコノミストが反動減を読み誤ったかもしれないというのは、家計の行動がそれだけ大胆だったということでしょうか。 新家:家計は既に1989年の消費税導入と1997年の引き上げを経験しているから慣れているという考え方もありました。エコポイント制度などを活用して耐久消費財を購入した世帯も多かったため、駆け込み需要はそれほど膨らまないだろうという見方があったのも事実です。 しかし、実際には消費者は価格に敏感で賢くなっています。値上がりする前に購入しようという心理が強く働き、駆け込みと反動減が思ったよりも大きくなったのでしょう。 増税による所得減の影響を甘く見すぎていた可能性もあります。5、6月の戻りが鈍いというのは、消費者が所得の実質的な減少を見て支出を絞っている可能性を示唆しています。 このまま消費の抑制が続くのか、反動減が和らいで戻ってくるのか。そこはまだはっきりしません。しばらく前は7〜9月期には復調してくるという見方もありましたが、ペースは少し遅いかもしれませんね。 景気は今年1月がピークの可能性 7〜9月期の成長率はどうなりそうですか。 新家:4〜6月期が大きなマイナス成長になりますから、そこから戻る力は当然働きます。前期比で見るとそれなりに高い成長になるのは自然だと思います。7〜9月期は年率で3%程度のプラス成長になる可能性もありますが、それで良しとするのでしょうか。
駆け込み前の昨年10〜12月期と比べると消費の水準はまだ低い可能性があります。7〜9月期の成長率が高いとしても、それをもって景気は大丈夫とか、反動減を乗り越えたと言えるかは微妙なところです。 私が疑問に感じているのは、政府は7〜9月期の成長率を見て10%への消費増税を判断すると言っていますが、果たしてそれだけで判断していいのかということです。表面上、成長率は年率で2〜3%に達する可能性はあるとはいえ、他の月次指標や業界統計なども踏まえて総合的に判断すべきなのでしょう。個人的には消費税引き上げは望ましいと思います。しかし、7〜9月期の成長率に重きを置きすぎるのはいかがなものかなと思いますね。 6月の鉱工業生産指数(速報)が前月比3.3%低下と大幅なマイナスになりました。家計だけでなく企業部門にも不安はありませんか。 新家:4〜6月期のGDPは7%くらいのマイナスになると予想していましたが、生産がこれほど落ち込んだのには驚きました。3.3%という数字だけでなく、在庫が増えていたことも懸念材料です。生産は4〜6月期に続いて7〜9月期も前期比でマイナスになるかもしれません。減らした分の在庫を戻すというよりも、在庫が積み上がっている可能性があります。企業はもともと慎重に見ていましたが、需要はそれをも下回っている。あまりよくないパターンになっているように見えます。 場合によっては定義上、景気後退と認定される可能性が出てきていることには注意が必要です。景気動向指数を加工した「ヒストリカルDI」を見ると、今年の1月にピークを付けています。まだ条件を満たすかは微妙なところですが、今年2月からミニ調整、あるいはミニ景気後退が始まっていることは否定しきれません。 1月が景気のピークだと言われてもピンとこないかもしれませんが、駆け込み需要に備えて企業が前倒しで生産を増やしたことを反映しているとも言えます。 そういう意味でも景気は想定していたよりも悪いですね。数カ月前までは誰も景気後退とは言っていませんでした。先行きの見方を大きく変えているわけではありませんが、現状が下振れていることは間違いありません。 増税延期の可能性も否定できない 仮に景気後退という話が出てくると、消費増税の判断にも影響を与えそうです。 新家:その可能性はあります。ただ、政府がどう判断するかで、どちらとも取れるかもしれません。1つは、景気のミニ調整があったとしても、既に底は付けている可能性が高いという判断です。月次指標で見ると回復に向かっているということであれば、引き上げも可能でしょう。 一方で景気後退があったことを重視すれば、増税を延期しようという話が出てきてもおかしくはありません。政府が判断する12月頃の市場の動向にもよりますが、景気の足取りが思わしくないことが政策判断に影響する可能性が出てきたと見ています。良し悪しは別にして、難しい政治判断になると思います。 消費増税を決める場合、政府が経済対策を打つことを想定していますか。 新家:経済予測は消費増税があるという前提で作っていますし、その際には経済対策も打ち出されると考えています。補正予算の是非はともかく、何もしないことは政治的には考えにくい。公共投資も含めてそれなりの規模になると思います。 最終的には安倍晋三首相の真意がどこにあるかにかかってきます。 新家:結局は政治判断です。エコノミストが景気は弱いと言っても、政治の方で良い理由を見つけられなくもありません。下手に延期すると逆効果という見方も確かにあります。日本経済が思った以上に弱いと思われたり、財政再建への意欲が足りないと受け止められたりするリスクがあります。 しかし、今年の春に続いてまた来年も引き上げるとなると期間が短いですから、ちょっと延期しようという考え方もあるでしょう。来春の統一地方選挙なども踏まえた判断になると思います。 日銀の追加緩和、メインシナリオは来春 日銀が追加緩和に動くという見方が根強くあります。消費者物価指数(CPI)との関連で、今後の対応をどう見ていますか。 新家:CPIについては、私はわりと日銀の見方に近いですね。伸び率は鈍化しますが、1%(消費増税の影響を除く)は割れないのではないかと見ています。その意味で年内の追加緩和の可能性は低いというのが私の見方です。 メインシナリオは来年の春です。来年4月頃にCPIの伸び率が1%台後半くらいまで高まれば別ですが、仮に1%台前半のままだと日銀が目標とする2%との距離はかなりある。「2年で2%」の目標達成が難しいとすれば、何らかのアクションを迫られる可能性が高まります。 ただし、ここへ来て今年秋の追加緩和という可能性も否定できなくなっています。発端はやはり4〜6月期のGDPです。仮に7〜8%という大幅なマイナス成長になれば、エコノミストは2014年度の成長率予測を下方修正するでしょう。日銀はいまだに実質1%の成長を見込んでいますから、日銀との乖離がまた大きくなる。日銀もここまでの落ち込みを想定していなかったでしょうから、1%成長のハードルは高いと受け止めざるを得なくなると思います。 政治サイドからも「大丈夫か」という声が出てくる可能性があります。4〜6月期のGDPの発表後に追加緩和への期待が高まることも想定されます。 このコラムについて キーパーソンに聞く 日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。 |