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生活必需品に軽減税率導入がないと消費者には死活問題 photo Getty Images
消費増税へ法人減税かバラマキか 本格化する官邸と財務省のせめぎあい
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39961
2014年07月29日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
この秋に予定されていた税率を10%に引き上げる消費増税の第2弾の正式決定を人質にとって、6月に決定した成長戦略に盛り込んだ法人減税の具体化を財務省に迫る官邸の戦略が鮮明になってきた。
■消費増税を人質に法人税減税を目論む安倍政権
菅義偉官房長官が先週金曜日(7月25日)の午後の記者会見で、消費増税の第2弾の決定時期について「12月上旬」と述べたうえで、「(安倍政権は)デフレ脱却最優先の政権で、状況を慎重に見極めたいというのが首相の思いだ」と強調し、その早期決定を切望している財務省に釘を刺したからである。
一方の財務省は、年末に向けて編成作業が本格化する2015年度予算で、首相の経済政策の1枚看板である成長戦略に4兆円の特別枠を設けることで官邸への恭順の意を示し、消費増税に対する首相らの理解を得ようと躍起になっている。
10%への消費増税第2弾は、今年4月に実施された8%への引き上げ(第1幕)に続くものだ。財政再建や税と社会保障の一体改革の基本策として、民主党の野田佳彦政権時代に当時野党だった自、公両党との合意に基づき、財政再建を進めるための措置とされていた。
だが、安倍晋三首相は、与野党合意時代に自民党総裁の地位になかった。それゆえ、消費増税の実現に強い思い入れはない。
むしろ、同首相が経済政策の目玉に据えているアベノミクスに基づくデフレ脱却と成長戦略に重心を置いているのは周知の事実。
つまり、財政再建や一体改革は政権の方針として優先順位が低い。消費増税第1幕でも、政権は水面下で消費増税の棚上げをちらつかせて、財務当局から広範な予算のバラマキを含む補正予算の編成を引き出すなど、激しい駆け引きを繰り広げた経緯もある。
■財務省は、当面官邸に恭順の意
現在のところ、年末に向けて、内閣改造や解散・総選挙の噂が絶えず、政局の行方が不透明な要素はある。
しかし、今回の菅発言は、そうした政局の行方とは関係なく、安倍政権として、消費増税第2弾の正式決定に容易に応じる考えがないことを改めて強調することで、安倍政権の経済界向けの公約の目玉である法人税減税の具体化に強い意欲を示す狙いがあったとみられている。
その法人税減税は、米国を除く先進諸国の中で最も高い法人税率を是正することによって、内外の企業を日本に呼び込み、雇用の拡大を含めた成長に繋げようという施策。企業の誘致にはエネルギーの安定供給を始めとしたインフラや資本市場の整備が必要で、法人税減税だけで簡単に企業を誘致ができるものではない。
とはいえ、国際的な税率の引き下げ競争が起きている中では、避けて通れない側面もある。
ちなみに、安倍政権が6月に閣議決定した成長戦略(『「日本再興戦略」改訂2014』)は、法人税減税について、「数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す」と公約しているものの、具体策にはまったく言及してない。
しかも、実施には「2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保する」「課税ベースの拡大等による恒久財源の確保をする」などの厳格な条件を付けたうえで、「(今)年末に向けて議論を進め、具体案を得る」と議論を先送りする格好となっていた。
財務省は、折からの税の自然増収の発生もあり、いたずらに官邸に睨まれて、「恒久財源の確保」という歯止めを骨抜きにされたくないのだろう。早くも、省を挙げて、官邸に恭順の意を示すのに躍起になっている。
■直間比率見直しと、軽減税率の導入は不可欠
その典型例が、来2015年度予算の編成方針だ。予算編成は、例年通り8月末までに各省庁からの概算要求を締め切り、12月に政府予算案を閣議決定する予定。
その概算要求で、財務省は、各省庁の公共事業など裁量的経費の一律10%カットを打ち出す一方で、成長戦略や骨太戦略を念頭に置いた特別枠(上限4兆円)を設置する方針を打ち出した。これを7月25日の閣議に提出し、政府(官邸)の了解を得ているのだ。
財務省としては、単年度予算を痛めて、多少は歳出が拡大に歯止めがかからない結果になったとしても仕方ない。ここは、安倍政権が掲げる成長戦略への協力姿勢を示すことによって、恒久財源なしに法人税減税論議が進み将来に大きな禍根を残すことを避けようと目論んでいるらしい。
先進国で最も政府部門の債務が巨大な日本にとって、本来ならば、恒久財源のない減税措置は避けるべきだ。
しかも、法人だけを優遇すれば、2度の消費増税によって、納税負担が増している消費者(国民)が不公平感を強める懸念がある。
それでも敢えて減税をやるのならば、法人税だけでなく、個人の所得税を含む直接税全体を減税の対象とし、消費税の再引き上げを含む間接税を大幅に増税する「直間比率」の見直しに踏み込むのが筋である。そうした抜本税制改革を断行しなければ、法人減税に対する国民の理解を得るのは難しいだろう。
また、軽減税率の導入論が、中小企業の事務コスト増大を理由に、葬られようとしている問題もある。だが、このコストの増大を避けていると、引き続き「転嫁」のサイクルの外に中小企業が放置される問題が解消せず、次第に商取引のサイクルそのものから中小企業が締め出される結果を招きかねない。
肝心の消費者にとっても、食品などの生活必需品に高い消費税率が適用されることは死活問題だ。直間比率見直しとなれば、軽減税率の導入は今まで以上に取り組むべき大きな論点になるだろう。
6月の成長戦略(『「日本再興戦略」改訂2014』)に盛り込んだように、法人税減税に「数年」の歳月をかけるのならば、「直間比率」の見直しを軸にした税制改革や、軽減税率の導入問題の解決にも舵を切るべきだと思うが、安倍首相、いかがだろうか。
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