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2014年07月25日 「ジャーナリスト同盟」通信
2014年7月24日、公開された外務省の極秘文書の中に、50年前の1964年の大平正芳外相と米国のラスク国務長官の会談内容が存在、明らかにされた。日本国外相が「中華民国の台湾が、中国を代表するというフィクションの継続は困難である」という趣旨の発言をワシントンに明言していた。当時としては大変勇気のある発言で、もしも公になれば大平の命は危なかったろう。しかし、日中国交回復させるという大平の覚悟を、池田内閣のもとで示していた政治的意義は大きい。改めて保守本流政治家の本領を裏付けている。
大平の黄金の夢とでもいえようか。彼は日中国交回復を意図した石橋湛山内閣が1カ月で崩壊すると、これの実現は自分の使命だと悟ったのだろう。そして池田内閣を発足させると、まずは内閣官房長官になって寛容と忍耐の池田カラーを演出。改造後に日中国交回復のための外交責任者になった。
水面下での大平工作は、ワシントンに対しても自らアクセルを踏んでいた。その明らかな証拠である。時代の趨勢とはいえ、米国の外交責任者に明確に日本側の本音を打ち明けていた大平の勇気に感銘を覚える。
今の安倍・自公内閣は、これに水をぶっかけている。時代を逆流させている。
<大平・ラスク会談の極秘文書>
それにしても50年も秘密にしておく理由は、どういうことなのか。日本政府の秘密主義に主権者は戸惑うばかりだ。日本の官僚主義を露呈している。民主主義に反する行為だろう。20年程度で十分ではないのか。
50年も秘密にする官僚主義は、国民に奉仕していない証拠ではないのか。
ともあれ今回、大平・ラスク会談の中身が判明したことで、大平主導の日中国交回復であったことが、公文書でも裏付けられたことになる。
筆者はその概要を、大平の娘婿の森田一から、より詳しくは中国外交部OBの肖向前から聞かされていた。彼は72年当時、大平が信頼していたリベラル派の旧内務官僚・古井喜実から直接、説明を受けていた。彼は「大平さんは思いやりのある日本きっての政治家」と絶賛していた。
古井の名前を小川平二がよく口にしていた。宮澤喜一の叔父に当たる。小川の実父・平吉は戦前の政友会の大立者として知られ、孫文と親しかった。孫文の「博愛」の掛け軸を玄関に飾っていた。小川の実弟・平四郎は初代中国大使。1度彼に会って取材した。
<岸内閣の反中政策を池田内閣が反転攻勢>
安倍の中国敵視外交は、祖父・岸信介の遺伝といってもいい。彼は大陸反攻時の典型的な台湾派で知られる。岸内閣は、正にフィクションに過ぎない台湾の蒋介石と連携して、大陸侵攻に意欲的だった。ことあるごとに大陸派をいびっていた。
これを本来の姿に戻したのが、池田内閣である。吉田茂の保守本流を継承した寛容の外交政策である。外交の基本は寛容・友好に限る。
<大角連合政権で2度目の外相就任で決着>
大平は、佐藤内閣の7年8カ雌伏しながら、盟友の田中内閣実現に動いた。この期間はどんなにか長く感じたであろうか。自ら派閥を継承しながら、田中の決起を促した。
これを時代が後押しした。72年7月7日に田中内閣が発足すると、2度目の外相に就任、一気呵成に北京と決着をはかった。わずか3カ月の交渉だが、東京も北京も下地は出来あがっていた。周恩来は、田中内閣誕生前に肖向前や孫平化ら側近を東京に派遣していた。
このことからも、北京は東京の政局を詳細に掌握していたことが分かる。大平の太いパイプを見て取れる。
<寛容・思いやりの周恩来・大平外交>
時代は日中双方に寛容原則が確立していた。中ソ対立という外的要件もプラスしたが、台湾が中国を代表するなどというフィクションは、土台、通用しなかった。
周恩来は、計算すると戦争による途方もない損害賠償を放棄すると約束した。日本政府は、台湾政府との外交関係を断絶するという苦渋の選択をすることだった。台湾説得の役割を椎名悦三郎が担った。椎名は岸と同じ商工官僚だが、先見の明は岸を上回っていた。ワシントンもニクソンが訪中、前年の71年にはキッシンジャーが北京を訪問、根回しが済んでいた。
岸と実弟の佐藤内閣の下で進行してきたフィクション外交・北京敵視政策は、こうして完璧に打ち砕かれた。
この友好の流れを松下政経塾の野田内閣に次いで、今の安倍・自公内閣が強力に推進、保守本流が構築した日中関係を破壊している。これにはワシントンも懸念を抱いている。
<史上最悪の貿易赤字でアベノミクス崩壊>
新聞テレビを電通工作で抑え込んで、もっぱらアベノミクス宣伝で、事情にうとい国民をだまし続けて来たが、それも化けの皮が剥がれている。
7月24日に財務省が公表した貿易収支によると、上半期で7・6兆円という空前の大赤字。輪転機で円を刷りまくった急激な円安政策に赤ランプが灯ったことになる。
資源のない日本は、貿易立国として生き抜いてきた。その要が崩壊してしまった。貿易で生きられない日本は、即亡ぶだけである。経済大国の隣国との対決政治だと、その速度は早まる。
アベノミクスの副作用に呻吟する日本である。
<中国敵視政策の誤り判明>
安倍・自公内閣の中国敵視・改憲軍拡政策は、日本を破滅に追い込むことになる。歴史の教訓を学ばない皇国史観では、国際社会の信頼は得られない。
滋賀の選挙で判明したことは、安倍・国粋主義の下駄の雪に徹する公明党の無様な姿である。平和運動にかけてきた創価学会員は、安倍の戦争体制化に猛反発している。泉下で戦争遺児・影山友子も怒り、NOと叫んでいる。
<信濃町もフィクション放棄を>
このさい、創価学会は公明党から離反したらいい。解党させるのである。「選挙と功徳」というフィクションから離脱するのである。さもなければ、安倍と共に太平洋の藻屑となろう。国粋主義は21世紀において、正当性・大義を有することは出来ない。隣国との喧嘩外交・改憲軍拡の靖国は、時代錯誤・愚の骨頂である。
<日本人は大平の元へ>
繰り返すが、中国敵視政策は間違いである。日本人は大平の元へ走れ、といいたい。
2014年7月25日記
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