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2014年07月25日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆このところ、米英のマスメディアが、安倍晋三首相の「政治的命運」について、懐疑的な論評を示し始めている。世界最大の発行部数を誇る経済新聞「ウォールストリートジャーナル」が、7月24日付け社説で「この数週間は安倍首相にとってかなり厳しいものだった。油断していると、安倍氏が日本の首相でいられるのもあとわずかということになるかもしれない」とご託宣。(詳しくは、【参考引用】参照)。
安倍晋三首相は7月1日、「集団的自衛権行使容認・憲法解釈変更」を強引に閣議決定し、戦後69年もの間、「1人の戦死者」も出さないできた「平和国家日本」を「戦争ができる国」に大転換した。文字通り「運命の日」にしたため、国民有権者を不安がらせて、内閣支持率の低下を招いた。これに追い討ちをかけるかのように、原子力規制委員会が16日鹿児島県の九電川内原発の再稼働を認める審査書案を了承し、現在、審査書案に対する意見公募を実施している。安倍晋三首相は、九電上層部に対して「必ず再稼働させる」と固く約束したという。東電福島第1原発大事故の後遺症が未だに続いているにもかかわらず、あくまで「原発推進」にこだわる姿勢が、国民有権者の警戒心を強めているのだ。
◆安倍晋三首相に対する「油断していると、安倍氏が日本の首相でいられるのもあとわずかということになるかもしれない」という予感は、翻って、小沢一郎代表に向けての「大きな期待感」を抱かしているらしく、ロイターが7月22日午前11時44分、「インタビュー:安倍首相はピーク越えた、年内選挙ない=小沢一郎氏」という見出しをつけて、以下のように配信している。
「[東京 22日 ロイター]小沢一郎・生活の党代表は、ロイターのインタビューに応じ、安倍晋三首相はピークを越え下り坂に入ったと述べ、長期政権に懐疑的な見方を示した」(このサイトですでに済み)
政権というものは、一旦「ピーク」に達して、「下がり坂」に入ってしまうと、転落のスピードは速くなる。まさに「ころがり落ちる」という状態に陥る。こうなると、「支持率を浮揚」するのは、至難の業となる。しかも、恐ろしいのは、ピークに達するまで支持して、応援していたはずの「政界の仲間」まで掌を返して、離反していく。そればかりか、批判し始める。
◆しかし、情けないのは、折角「反転攻勢」のチャンスに恵まれている野党が、これを上手に掴んでいないということだ。野党第1党の民主党が最も情けない。いま「2大政党政治」の対立軸が、鮮明になってきており、民主党は以下の「3つの対立軸」の一方を国民有権者に訴える絶好のチャンスが目の前にぶら下がっているのに、ボンヤリしている。
世界統治観の対立=国連中心の平和と秩序維持派(国連平和維持軍)VS米英の多国籍派(多国籍軍)
□文明史観の対立=原発ゼロVS原発推進
□生活観の対立=国民の生活が第一VS企業利益優先
民主党は「国連中心の平和と秩序維持派(国連平和維持軍)」「原発ゼロ」「国民の生活が第一」を訴えて、自公連立の安倍晋三政権にしっかり、厳しく対峙していくべきなのに、わざわざ対立軸を曖昧にする者が少なくない。これらは、「安倍晋三首相に接近し、あわよくば連立政権入りしたいと願っている者たち」である。こんな連中を抱え込んでいたのでは、安倍晋三政権に取って代わる政権を樹立することはできない。「代表選前倒し」を叫んでいる岡田克也元副総理は、国民有権者に訴えるべき「国連中心の平和と秩序維持派(国連平和維持軍)」「原発ゼロ」「国民の生活が第一」を掲げることもなく、単に「話題づくり」のために動いている感が強い。海江田万里代表は、腹をしっかり決めて、「異質な分子」「異端分子」を切除して、党外に追放する必要がある。その第1号は、岡田克也元副総理だ。
【参考引用】ウォールストリートジャーナルが7月23日午後1時24分、「【社説】逆風にさらされる安倍首相」という見出しをつけて、以下のように配信した。
この数週間は安倍首相にとってかなり厳しいものだった。油断していると、安倍氏が日本の首相でいられるのもあとわずかということになるかもしれない。
先週、滋賀県の有権者は前民主党衆院議員の三日月大造氏を知事に選出し、安倍首相と自民党に予期せぬ非難を突き付けた。この結果は、安倍内閣が最近、同盟国への軍事的支援を可能にする平和憲法の解釈の変更を閣議決定したことへの反対票と広く受け止められている。大手メディアが実施した世論調査によると、安倍内閣の支持率は50%を下回るまでに低下し、上昇した不支持率は支持率と並んだ。
先週にはさらなるトラブルが持ち上がった。2基の原子炉(川内原発)の再稼働に関して、原子力規制委員会が新規制基準を満たしているとの審査書案をまとめたのだ。2011年3月の大地震と津波が福島第一原発の事故を引き起こして以来、日本では48基の原子炉が停止している。原発の安全性に対する国民の疑念は依然根深く、三日月氏も再稼働反対を政治綱領の中心に据えていた。安倍首相はこの件でも支持率を落とし得る。
こうした政治的難局の背景には、安倍首相が2012年の衆議院選挙で勝利したときに約束した大幅な経済改革をこれまでに実現できていないということがある。首相は、大規模な金融緩和と、少なくとも現時点では一部の輸出業者に恩恵をもたらしている円の急激な下落を促してきた。しかし、より抜本的な政治改革、経済再生へ向けた「3本目の矢」は今のところ見えていない。
安倍首相は法人税の引き下げを提案し、最終的にはより有意義な投資を促進するかもしれない企業統治改革に必要な措置も導入してきたが、しょせんはその程度である。一方で首相は、一般世帯の生活費の上昇と実質所得の低下を招くことになる3%ポイントの消費増税を4月から実施して経済に打撃を与えた。
こうしたなか、中国の強硬姿勢については心配でも、首相が抱く安全保障上の懸念に対して、有権者の関心が薄れていてもさほど不思議ではない。首相にとって好都合なのは、今のところ他に有望なリーダーがいないことだが、つい最近まで世界第2位だった経済大国としてはこのこと自体を悲しむべきだろう。
それでもいずれは対立候補が現れるはずだ。安倍首相がまごつけばまごつくほど、経済を本当に活性化する政策の推進が難しくなり、既得権益者たちの激しい抵抗に直面することだろう。環太平洋連携協定(TPP)はその最も顕著な例である。
安倍首相が有権者の信頼を回復するには、大胆な政策を断行して経済成長を活性化させるのがいちばんである。首相が提案する法人税減税をめぐる議論は、より広範な成長志向の税制改革を追求する上での好機となる。今のところ、首相は女性の社会進出を支援する措置で労働市場改革の周縁部をかじっただけだ。それよりもむしろ、雇用・解雇に関する規制を緩和し、雇用創出を促すことですべての労働者のためになる改革に取り組むべきである。
数週間の逆風で政治家が辞任に追い込まれるということはあまりないが、コースからそれたときに気付くのが賢明な政治家であろう。安倍首相の当初の爆発的な人気は、経済的な活気に満ちた日本という首相のビジョンへの熱烈な願望から生じていた。有権者と投資家は首相が改革をやり遂げるという証拠を見たがっている。
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