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規制改革で特に抵抗強いのは厚労省と国交省 官邸サイド脅す
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140721-00000018-pseven-soci
NEWS ポストセブン 7月21日(月)16時6分配信
政権発足以来スローガンとして掲げてきた規制改革に安倍晋三政権が前進しはじめた。混合診療の拡大、農協の組織改革、法人実効税率の引き下げなどが盛り込まれた成長戦略が6月24日に閣議決定された。『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館刊)をこのたび上梓した政策工房社長・原英史氏と、東京新聞論説副主幹で規制改革会議委員の長谷川幸洋氏が改革をめぐる攻防の内幕を話し合った。
長谷川:僕の目から見ると、とくに抵抗が強いのは厚生労働省と国土交通省です。昨年、薬のインターネット販売(*注)自由化が取り沙汰された際には、『完全自由化したら大変なことが起こる』という趣旨の有識者会議のペーパーを土壇場に厚労官僚がこしらえて、官邸サイドへの脅し文句に使いました。
そのペーパーに関していえばオープンなものでも、きちんと議論されたものでもない。追いつめられた官僚たちが“御用”の専門家に深夜、電話をかけ『こういうことでよろしいですね』といってまとめたものに過ぎません。
【*注】昨年6月、安倍首相は「すべての一般医薬品の販売を解禁」と明言。が、その結果生まれた改正薬事法では、大衆薬の99.8%は解禁したものの、0.2%は要指導医薬品としてネット販売を引き続き禁止することに。要指導医薬品は薬局での販売も規制強化され、本人が自ら購入しなければならいことになった。
原:薬がネットで購入できないことで、家の近くに薬局がない人や忙しくて店舗にいけない人は不便を強いられます。足が悪いお年寄りなど、薬局に出向くのが大変な人だって大勢います。
そもそも海外では薬のネット販売は当たり前なのに、なぜ日本ではダメなのか。役人は、「対面」でならば顔色を見ながら適切な薬を選び、副作用などの注意事項もきちんと伝えられると言います。しかし、従来は家族が代わりに薬局で「対面」して購入することは認められていたのですから、もともと論理破綻していたのです。
長谷川:副作用など、店頭で説明を聞き損なうよりネットで確認した方が確実ですよ。
原:規制改革が進まないのは、既得権者と彼らに支援された政治家、そして天下りなどを通じて既得権者と密接につながった役人が「鉄のトライアングル」をつくるからです。
薬事法の問題でいえば、日本薬剤師連盟からの多大な政治献金によって、政治家は陳情を無下にできなくなるという背景があります。また、政と業をつなぐ政治献金のほか、官と業をつなぐ天下りもあります。ごく一握りの既得権者を守るために規制が作られ、一般国民の利益が損なわれているのが日本の現状です。
長谷川:役人の言うことは、実態を見て考えれば、怪しいとすぐ分かる。社会福祉法人をめぐる議論でも、株式会社が保育所を運営するのはダメだ、利益優先になると言いますが、実は社会福祉法人の中には保育所や福祉施設を事実上、私物化して営利目的になっているところも多い。
原:株式会社は営利目的だからサービスをないがしろにするというなら、一流ホテルはどうなのか。民間企業はサービスが悪ければ淘汰されるので、結果的にサービス向上に熱心になるはずです。対して社会福祉法人は、たとえば法人税免除といった特権が与えられていて、淘汰されにくい。社会福祉法人は役人の格好の天下り先で、この両者が結託して株式会社を排除してきました。そのおかげで、待機児童問題はいっこうに解決しません。
長谷川:今年1月に施行された改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法などは、役人の手で法律以上に規制が強化されている典型ですね。
簡単にいえば役所が運賃の上限と下限を決め、従わないと運賃変更命令や車両の使用停止処分を出す。場合によっては事業許可を取り消すという内容です。企業努力で運賃を引き下げようにも、「役所がうんといわないから引き下げられない」というわけ。
これは全国でいっせいに適用されるわけではない、というのが国交省の言い分です。まずは、運転手の賃金水準や車両の稼働効率などを判断しながら、供給過剰の「特定地域」を指定。そこで初めて同法の適用が検討されることになっています。
ところが、役人の審査基準にあてはめると全国の6割以上、実は8割位じゃないかと思っていますが、大都市のほぼすべて指定されてしまう。しかもこれほど強いペナルティを科すにもかかわらず、運用の元になっているのは“局長通達”という、法律、政令、省令のさらに下の規定に過ぎない。国土交通省の裁量ですべて決められてしまう。
原:本当におかしなことですが、日本の場合、法律に書いてなくて、細かいことは省令や通達で自由に決められるようにしてある。法律に細かいことを書かないのは、役人の条文作りのテクニックのひとつ。こうした余地を残すから、国民の目の届かないところで規制が強化されていく。
また、さきほどの社会福祉法人の問題にしてもそうですが、根本を見直したらもっとすっきりとした制度にできるのに、元の制度を維持したまま横に変なプレハブを建てていくから複雑になっていくことが多い。
長谷川:それは集団的自衛権の話も実は一緒ですよ。
原:もはや一般の人がついていけず、政治家もマスコミもわからない。それで、詳しいことは役人に聞いてください、となるわけです。
※SAPIO2014年8月号
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