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「日本真正保守党」の立ち上げを宣言した田母神俊雄・元航空幕僚長 =6月2日、アパホテル東京潮見駅前(写真:産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140719-00000530-san-pol
産経新聞 7月19日(土)14時49分配信
6月2日に田母神俊雄元航空幕僚長が「日本真正保守党」設立を宣言した際の講演を3回にわたり連載した記事は、多くの方に愛読いただいた。おかげさまで『田母神戦争大学』(産経新聞出版)も5万部突破の快進撃だ。ただ、同書を誤読し、講演の内容を誤解している読者がいないか、筆者としては懸念が残る。よってここに延長戦を開始したい。(溝上健良)
■勝てると思っていませんでしたか
ドイツの優勝で幕を閉じたサッカーのW杯(ワールドカップ)。わが日本代表は戦前には「史上最強」との評もあったものの、結果は皆様ご存じの通りだ。別に日本代表を責めるつもりはない。W杯では前回優勝のスペインがまさかの1次リーグ敗退を喫し、開催国ブラジルも準決勝で大敗した。サッカーとはそういうものだと思うしかない。
ところで週刊誌などで時折「もし日中両国が軍事的に衝突したら」といった特集が組まれる。それらの記事では装備と士気、練度を考えれば日本側が優勢、との分析が多くみられる。そうした誌面をみて一安心する読者も多いことだろう。
その点、『田母神戦争大学』では本の帯で堂々と「中国が軍事的に強いという認識は間違いだ!」とうたっているため「日本の国防は安泰」だと思ってしまう読者が大多数なのではないかと、筆者としては心配でならないのだ。
3回にわたる連載にはさまざまな反響があった。激励や同意の一方でもちろん批判もあり、それ自体は筆者はあまり気にしないのだが1点、見逃せないレッテル貼りがあった。それは「この記事は結局『田母神戦争大学』のステマ(=ステルス・マーケティング)ではないか」というものだ。これは心外である。
ステマとは通常、宣伝であることを隠して宣伝することを指す。本連載では3回とも書名をタイトルに掲げた上に、別の記事(「憲法9条の限界、露呈するか…」)では同書について(買ってね)とまで明記している。端から堂々と宣伝しているのであって、断じてステマではない。もっとも本連載が実はアニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」の新作ブルーレイ・DVDのステマだったと気づいた方はいるかもしれない。ご明察の通りだ。
まあその程度の誤読なら実害はないが、同書や連載記事を読んで「自衛隊は強い。日本の守りは万全だ」と気を抜いてしまわれると、これは大変なことになりかねない。『田母神戦争大学』では「中国は今、日本と戦争できない」ことが正面から論じられているのであって、自衛隊が中国軍に勝てるのかという点については田母神俊雄氏と共著者の石井義哲氏は慎重に言葉を選んでいることに注意せねばなるまい。
そもそも同書のまえがきで田母神氏は次のように述べている。「中国の台頭により我が国の安全が脅かされる事態になっている。我が国はこれに対し、早急に手を打っていくことが必要である」「軍事力を強化するとともに、中国の侵略があった場合は即座に自衛隊が行動できる態勢を整備しなければならない」。自衛隊の実力強化と法整備が早急に必要だと強調されているのだ。
そう考えれば、集団的自衛権の行使容認は1歩前進といえるだろう。ところで集団的自衛権の行使容認が閣議決定されたことで「徴兵制が導入される」とのデマが若者の間で(いい年をした大人の間でも)出回っているらしい。同書の中で田母神氏は「徴兵制の軍隊は、志願制より弱いのです。(中略)志願制で間に合うのであれば、徴兵制は採用すべきではないのです。だから、世界各国では、だんだん徴兵制がなくなっていっているわけですよ」と明言している。日本で徴兵制を導入する必然性はない、というわけだ。
徴兵制に関連して、北海道の農家出身のマンガ家・荒川弘氏が描いた『百姓貴族』(新書館)の第3巻で「徴農制」構想が取り上げられていたが、農家にとって結局は迷惑なのでやめたほうがいい、との結論だった。農業のプロが教育に労力を割かれ、素人がやっと一人前になったと思ったら都会へ帰ってしまい、また次の素人がやってくる…ではたまらないというわけだ。徴兵制についても現在の日本では同じことがいえるだろう。
ただ少子化が進んで若者の絶対数が減っていったらどうなるかは、別途考える必要がある。今月開かれた全国知事会議では「日本は死に至る病にかかっている」などとする少子化非常事態宣言が出されたが、そもそも日本という国家の存続が危ぶまれることになりかねない。憲法改正とともに少子化問題の解決策を示した小説『ミッション建国』(楡周平著、産経新聞出版)も、多くの方に読んでもらえればと願っている。
3回にわたる連載では他に「英検3級記者」についての反響が大きかった。英検3級ながら海外出張につき英語で取材するハメになって悪戦苦闘した話などもあるので、機会があれば紹介してみたい。
また各回の「記事が長い」との声も多かった。これについては国際政治・軍事情報に詳しい「余命3年時事日記」という人気ブログがあるが、筆者としてはその記事の長さもちょっと意識してきたのだ(長さだけならいい勝負をしている)。写真などを使わずに気の遠くなるような長文を読ませる手法など、同ブログから学ぶことは多い。興味のある方はぜひご一読を(「余命」と検索するとすぐに出てきます)。
おっとこの調子でいくとまた「脱線しすぎ」との声が出てきそうだ。本題に戻ろう。
■百戦錬磨の中国・韓国軍
今回のサッカーW杯で日本代表は「史上最強」などとする前評判があったが、仮に過去のチームと比べて最強だったとしても他国に勝てるわけではないことに、多くの国民は気づいたのではないか。軍隊も同じことである(憲法解釈上、自衛隊は軍隊ではないことになっているが)。自衛隊が強いといえるかどうかは、少なくとも周辺の軍事大国と比べてみる必要があるだろう。何はともあれ現在、日本の2倍以上の軍事費をつぎ込んでいる中国軍の実績をみてみたい。
中国は今年で建国からわずか65年だがその間、戦争に次ぐ戦争を重ねてきている。朝鮮戦争や中越戦争が代表的ではあるがその他、小規模の国境紛争も数多い。また“国内”でもチベットを含め、自国民に対しても軍が容赦なく銃を向けている。25年前の天安門事件などはその最たる例だろう。そういえば月刊『正論』8月号で業田良家氏が描いていたマンガ「天安悶事件」(1〜3)は実に皮肉が効いていて秀逸だった。当局の徹底的な隠蔽により、事件の犠牲者数はいまだ不明のまま。かの国にはきちんと歴史に向き合ってもらいたいものだ。
なお『正論』8月号では佐瀬昌盛防衛大名誉教授が成蹊大の助教授だったころ、安倍晋三氏が大学進学する際の面接試験管をした話が載っている。単なる思い出話ではなく、27年ぶりの安倍氏と佐瀬氏との「再会」、さらにその後日談が展開されており実に面白い。佐瀬氏の文章は氏の人柄がにじみ出て独特の味があり、長文であっても読者を引きずり込む力がある。一読をお勧めしておきたい。
余談ながら6年前の北京五輪の際に、長野冬季五輪が開かれた縁で長野市でも聖火リレーが行われた。動員されたとみられる中国人が大挙、沿道を埋め尽くし、これでもかという厳戒態勢の中、リレー走者の前に男性(のちに亡命チベット人2世と判明)が「フリー・チベット(チベットに自由を)!」と叫びながら飛び出し、すぐに取り押さえられた。あの叫びは、英検3級の筆者にもハッキリと聞き取れた。後に男性は「チベットの惨状をどうしても訴えたかった」と語っている。中国がいかに厳しい弾圧を加えているのかが垣間見えた一幕だった。
ちなみに韓国はといえば、朝鮮戦争で全土が戦場となり、ベトナム戦争にも派兵している。本連載(中)で触れた通りに「ベトナム戦争に参戦した韓国軍が、現地でどれほど恐れられたか。韓国軍による『武勇伝』の数々は、とうていここでは書けないほどである」。さらには近年の北朝鮮との局地的な紛争も経験しているのだ。両国の軍隊とも「戦争慣れ」している点においては、自衛隊の比ではない。
ところで最近話題の長谷川慶太郎著『朝鮮崩壊』(実業之日本社)に興味深い記述がある。先の大戦経験者が「われわれ中国人は日本人にかなわない」、そのことは「第二次世界大戦で日本と戦った人間なら、骨身に沁みて分かります」と語ったのだという。たしかに当時の日本軍は強かったはずだ。日清・日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と、日本軍は戦争の経験が豊富で、指揮官にも実戦経験者が多数いたのである。まさに「父よあなたは強かった」あるいは「雪の進軍」の世界だ。
しかし発足以来、自衛隊は一度も戦場を経験していない。もはや指揮官にも戦争経験者はゼロである。その実戦ゼロの、軍隊ではないことになっている自衛隊が、もし実戦経験豊富な隣国の軍隊と戦うことになったら、どうなってしまうのか。陸自の特殊部隊が竹島(島根県隠岐の島町)を奪還するという空自OBによる『黎明(れいめい)の笛』(祥伝社)という小説があったが、現実問題として隣国に占領された国境の島を本当に奪い返せるのか、考えさせられる。
…と思いながら『田母神戦争大学』を読み返してみると、陸上自衛隊についてほとんど触れられていないことに気がつく。元空幕長と元空将補の対談本なので航空自衛隊の話が中心になるのは当然といえば当然で、紙幅の都合で陸自には触れられていないだけかもしれない。戦闘機同士ではミサイルが40キロも先から飛んできて「気がついたときには落とされている」戦いが展開されるとのことだが、地上戦であればうっかりすると相手の顔が見える状態での戦闘となる。法制度上の問題もさることながら精神面でも、陸自が百戦錬磨の隣国陸軍と対等に戦えるのか、不安が残る。
もっともそうした実情を本に書くわけにもいくまい。相手に付け入らせないためにはハッタリも必要なのだ。田母神氏も石井氏も、情報戦の一環としてこの本を書いている、とみるべきだろう。本当のところはどうなのかを知るためには、読者は行間を読まねばならない。その意味では非常に読み応えのある本である、と最後にダメ押しの宣伝をしておく。買ってね。
■護憲派のレッテル貼り
さて最近、「危険人物」「暴走老人」といったものに続いて「立憲主義に反する」とのレッテル貼りが目立つようになってきた。今月に入ってからのNHKの番組「日曜討論」でも、複数の野党幹事長が「集団的自衛権行使容認の閣議決定は立憲主義に反する」と主張していた。こうした主張の是非を検討する研究会が7月5日に都内で開かれたので、その内容を簡単に紹介しておきたい。
研究会を開いたのは憲法改正を目指す「『21世紀の日本と憲法』有識者懇談会」(民間憲法臨調、櫻井よしこ代表)で、大学教授や弁護士など約30人が参加し、元衆議院法制局法制主幹の浅野善治・大東文化大大学院教授が「憲法改正の論点整理−立憲主義との関係を視野に入れて」と題して基調講演した。
浅野教授は「今ある憲法を絶対的に支持していくことが憲法を守ることではなく、常に憲法が時代に合っているか再検討し、必要があれば修正していくことこそが憲法を守ることであり、立憲主義だといえる」と説明。「立憲主義に反する」とレッテルを貼ることで「憲法論議を押さえ込むことこそ時代錯誤だ」と一部“護憲派”の論調にクギを刺した。
基調講演に続いて侃々諤々の議論が繰り広げられた。そもそも日本国憲法は有効かどうかとの問題提起もなされ、弁護士など法曹家も参加していただけに大変な議論になった。いずれにしても現行憲法は出自に大きな問題を抱えており、早急な改正が必要だという点では合意が得られたように思う。
今年になって全国各地の県議会で「憲法改正の早期実現を求める意見書」の採択が相次いでいる。7月18日現在、18の県議会で意見書がまとまったほか、兵庫県では同様の意見書提出を求める請願が賛成多数で採択されている(ただ同県では意見書提出は議会の全会一致が原則として意見書提出には至っていない)。このままいけば全国の都道府県議会の過半数で早期改憲を求める意見書が採択されそうな勢いだ。地方からの声に国会がどう応えるかが問われているといえそうだ。
さて研究会では西修・駒沢大名誉教授が「歴史的事実としてぜひ認識してほしいが、昭和21年8月24日の衆議院での各党による日本国憲法案への最終的な意見表明の場で、共産党を代表して野坂参三氏は徹底的に現行憲法案に反対している。なかんずく9条については『これは一つの空文をもてあそぶものである』と、『わが党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない』と述べている。この発言はぜひ頭に入れておいていただきたい」と強調していた。この経緯については西氏の著作『図説 日本国憲法の誕生』(河出書房新社)に詳しい。この時点で共産党はすでに自前の「日本人民共和国憲法草案」を世に問うていたのだ。自民党以外の各政党には、完全な護憲政党は別として、その党なりの憲法草案を国民に示してほしいものである。
浅野教授は「立憲主義に反する、との主張にどう反論するかだが、そう主張する論者は『憲法は権力をしばるものだ』と言うはず。憲法は国民が作るから権力をしばれるのだ、ということになるが、そうであれば憲法を国民のために一番いいものにすることこそが立憲主義だといえます。つまり改憲論議があれば改憲論議をしっかりすることが必要なんです。護憲の主張も、憲法の中身で護憲をしてくれればいいんです。『立憲主義に反するからダメだ』というのは中身の話ではないですよね。憲法論議を抑えるのはもってのほかで、『立憲主義に反する』という人には『改憲論議をもっとしっかりやりましょう』と申し上げればいい」と指摘していた。
憲法改正をめぐりレッテルを貼って国民を思考停止に陥らせるのではなく、中身の議論が盛り上がるよう、引き続き憲法改正への動きや護憲派の動向を報じていきたい。
最後に、『田母神戦争大学』のあとがきで石井義哲氏は「真に自立した国家になるためには、憲法改正による再軍備と国連憲章の旧敵国条項の撤廃が必要である」と明記している。その理由を、われわれはよく考えてみる必要がありそうだ。
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