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「スーパースターエコノミクス」と政治の役割
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2014年07月17日 兵頭正俊 兵頭に訊こう
最近、わたしは戦前戦中と現代とを比較して、批評するツイートを多く投稿している。
戦争に反対する人を、ひとりでも多く増やしたいからだ。
何事も主体的に自分の問題として考えなければならない。「戦争といっても先のことだ。それに自分は徴兵の年齢ではない」。このような考えがもっともよくない。
状況の変化は早い。2012年12月26日、自・公連立の第2次安倍内閣が発足してから、わずか1年半で、日本は戦争する国に転落しつつある。
内閣が憲法の解釈を変え、集団的自衛権の行使を容認し、米国を防衛するために自衛隊を海外派遣しようとしている。
1年半前に、だれがこのような状況の激変を予測しただろうか。日中戦争を「まさか」と思う向きには海外の論調を調べていただきたい。ウクライナよりも尖閣をめぐる日中対立を危険視する論調が多いのである。
先の太平洋戦争では、敗北が近くなると、徴用の年齢が12〜60歳に拡大されている。どうせ20〜30歳がかつぎ出されるのだろう、と甘く見ていると、そうではなくなる可能性が高い。
年配のわたしたちも、自分の子供、孫が戦場に担ぎ出される可能性を考えて、自分の問題として戦争には反対する必要がある。
日中戦争が始まれば、日本は複数の原発に、米国さえ怖れている中国の長距離巡航ミサイル、あるいは弾道ミサイルを打ち込まれておしまいである。
これらのミサイルは、日本や韓国を完全に射程圏内に入れている。このことには緘口令が敷かれているのだろう、日本の政治家もメディアも一切言及しない。日本国内で反戦の動きが強まるからだ。
かりに勝っても、複数の原発にミサイルを撃ち込まれて、もはや住める国土がなくなるというのが、日中戦争になる。こういったことを考える能力や責任感が、安倍晋三や山口那津男、石破茂などにはないのである。
結局、日本人は変わらなかったのだ。伝統的に軍国主義に走る1%と、長いものには巻かれろ、という奴隷根性の99%。
戦時中も日本国内にいて自殺した軍人がいたが、これは敗色濃厚な戦況を儚んで自殺したのではなかった。訓練が厳し過ぎて自殺したのである。この歪んだ暴力といじめ体質は、現在の自衛隊のなかにまだ生きている。
太平洋戦争中に、軍部と官僚は巨万の富を蓄財していた。戦時中の軍人といえば狂信的な軍国主義者、精神主義者のように誤解されがちだが、とんでもない。戦後、進駐してきたGHQは、敗戦国のあまりの富の多さに驚愕し、この者たちはギャングだ、後8年は世界を相手に戦争ができた、とつぶやいた。
その頃、ボロをまとい、餓死線上の国民に対しては、「そのうちカミカゼが吹く」、「1億総玉砕」を説いていたのである。日本の支配層ほど、いっていることと、やっていることの違う存在はない。
戦後70年ほどたったが、戦前・戦中と同じく、これから貧富の格差はますます拡大していく。これは日本だけの現象ではない。欧米でも中国でもアフリカでも南米でもそうだ。世界中で貧富の格差が拡大していく。
企業家や官僚はそれを無邪気に推進している。政治がそれを止めないといけないのだが、現代の政治は企業家や官僚の支配下に置かれ、止めることができない。
それどころか日本の安倍晋三にいたっては、先頭に立って格差社会を拡大し続けている。
安倍晋三についてはふたつの論評がついて回る。ひとつはナショナリストとしての見方である。もうひとつは新自由主義者としての見方である。
これについては、何度か論じてきたので、ここでは詳しくは展開しない。結論だけいっておくと、安倍晋三はナショナリストではない。やっていることは国家国民を毀損する反日に満ち溢れている。
「戦後レジームの転換」といったところで、戦後レジームそのものが虚構の上に成り立っている。安倍晋三が「転換」すれば、「戦後レジーム」は逆に強化される。かれは元に戻ることになる。
売国とともに始まった敗戦後の日本を、TPP参加で最終的に米国に叩き売る姿に、それが象徴的に現れている。「戦後レジームの転換」を、言葉の本来の意味で成し遂げようとすれば、それはTPP不参加しかありえない。
すなわち安倍晋三の正体は、新自由主義者であり、強欲資本主義者であり、カジノ資本主義者であり、売国奴である。
先のメルマガでも紹介したが、海外からも「アベノミクスとして知られる安倍政権の経済政策は、本質的には信用詐欺(confidence game)のようなものだ」(リチャード・カッツ)と正体を暴かれてきた。
選挙はまだ2年先なので、この間、日本は安倍にさらに徹底的に壊されるだろう。気をつけなければならないのは、その徹底的な破壊に未来の破壊が含まれていることだ。
つまり今は消費税増税のような形では目に見えないが、何年何十年か後に、未曽有の厄災を日本民族に与える破壊を安倍晋三はやっている。
それは次の3点である。
1 海外への原発の輸出(原発事故の補償と地球環境の汚染)
2 海外への武器の輸出(軍需産業の肥大化と、「戦争する国」から「戦争しなければやっていけない国」への転落)
3 集団的自衛権の行使の容認(米国防衛のために死ぬ若者と、軍事予算の肥大化)
これはすべて安倍晋三がやったことだ。この3点とも日本の未来に大きな災いをもたらす。さらなる増税につながることが一目瞭然だ。それも長きにわたって。
経済の世界的なトレンドは、安倍晋三の破壊を何十倍にも強める方向に動いている。比喩的にいえば、日本丸は大きな危険な滝に向かって流されているのだが、船長の安倍が、さらに滝に向かって船足を伸ばそうとしているのだ。
エリック・ブラインジョルフソン(MIT教授 マネジメントサイエンス)、アンドリュー・マカフィー(MITリサーチ・サイエンティスト) 、マイケル・スペンス(ニューヨーク大学教授 ノーベル経済学賞受賞)の3人は、共同執筆の「デジタル経済が経済・社会構造を変える――オートメーション化が導く「べき乗則の世界」」のなかで、次のように書いている。
「いまや機械がさまざまな人間の労働に取って変わりつつある。このプロセスが広がることで、より多くの資本が作り出されている。つまり、将来における本当の勝者は、安価な労働力をもつ国や通常の資本を所有する投資家ではない。むしろ双方はオートメーションによって追い込まれていく。
大きな追い風を背にするのは、技術革新を実現し、新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造する一握りの人々だ。
このクリエーティブな社会階級の所得が増大することで、全体の所得分配は統計学モデルで言う「べき乗則」に準じたものになる。非常に少数の勝者が富の多くを手にし、ロングテール、つまりその他大勢の人々は低所得に甘んじることになる。
つまり、今後重要になっていく生産要素はアイディアであり、これが労働や資本以上の価値をもつようになる。優れたアイディアを提供できる人が非常に大きな報酬を手にする。
逆に言えば、多くの人が応分の生活レベルを維持し、多くの人をプレイヤーとして取り込める経済や社会を作っていくのは、今後ますます大きな課題になっていくと考えられる」(『Foreign Affairs Report』2014 NO.7)
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