02. 2014年7月15日 10:38:36
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G0が常態化すると日本の立場も韓国のように厳しくなり過去の政策基盤との整合性が取れなくなって内政の混乱も進むだろう http://diamond.jp/articles/print/56057 シリーズ・日本のアジェンダ「集団的自衛権行使」容認の是非 【第9回】 2014年7月15日 ダイヤモンド・オンライン編集部 安保政策のなかで誇張される集団的自衛権 冷ややかで警戒感を帯びる米国の視線 ――小野田治・米ハーバード大学シニアフェロー(元航空自衛隊空将)×加藤嘉一・国際コラムニスト対談【後編】 前編に続き、元航空自衛隊空将で、現在は米ハーバード大学アジアセンターシニアフェローの小野田治氏と、国際コラムニストの加藤嘉一氏に、集団的自衛権の議論をお届けする。両氏はアメリカで日本政治の専門家や軍事、安全保障、北東アジアの国際関係の専門家と日々接しているからこそ、日本に対するアメリカの視線が見えてくる。話を聞くと、想像以上に日本に対する厳しい視線があるようだ。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部?片田江康男) 議論はジャパニーズミステリー アメリカにとって行使容認は当然 ――日本の集団的自衛権について、アメリカではどう見られているのでしょうか。 加藤?日本ではこれだけ話題になっていますが、アメリカの学者や識者と話していると、「集団的自衛権??当然行使すべきでしょう。That's it」みたいな雰囲気ですよね。 おのだ・おさむ 1954年神奈川県生まれ。防衛大学航空工学科(第21期)卒。77年10月第一警戒群(笠取山、三重県)に勤務。79年3月第35警戒群(経ケ岬:京都府)保守整備部門の小隊長。82年12月警戒航空隊(青森県三沢基地)警戒航空隊の部隊建設に従事。保守整備部門の小隊長。89年8月航空幕僚副長副官(東京都市ヶ谷基地)。96年8月防衛研究所第44期一般課程(東京都目黒基地)。99年3月航空幕僚監部防衛課装備体系企画調整官(東京都桧町基地)。00年8月第3補給処資材計画部長(埼玉県入間基地)。01年8月航空幕僚監部防衛課長(東京都市ヶ谷基地)。02年12月第3補給処長(埼玉県入間基地)。04年8月第7航空団司令兼百里基地司令(茨城県)。06年8月航空幕僚監部人事教育部長(東京都市ヶ谷基地)。08年8月西部航空方面隊司令官(福岡県春日基地)。10年12月航空教育集団司令官(静岡県浜松基地)。12年7月勧奨退職。 小野田?まさに、そうですね。
加藤?アメリカでは基本的に「憲法改正するのか、解釈変更するのか、それは貴国の内政問題だ。ただ、われわれは同盟国としての日本にしかるべき役割を求める」という雰囲気です。英語では「It's your own business」という文言が使われることが多いですね。アメリカでは「日本は集団的自衛権行使を容認すべきか」という論点での議論は起こりえない状況でした。 小野田?日本がどうすべきかという議論にはなりませんでした。議論の余地はないんでしょう。私もそういう印象を受けています。 ?アメリカで私がよく聞かれるのは、「日本で集団的自衛権の議論が盛り上がっているが、その本質は何か」ということです。 ?アメリカの日本政治専門家は、「安倍政権は集団的自衛権行使容認には至らないのではないか」と見ていたようです。米国では全体の戦略が策定され、そこからブレイクダウンして個別の具体的な政策がつくられていきますが、日本の場合は、ともすると本質から外れた細かな点に議論が集約されてしまって、議論が混迷して深まっていかないということを知っているんだと思います。 ?そういう日本の議論の特徴を知らない、日本の専門家ではない学者の方々は、混迷している日本の議論を見て、「本質は何だ??この議論はジャパニーズミステリーだ」って思っているようです。 ――そうすると、アメリカの安全保障の専門家には、かなり冷ややかに見られているんでしょうか。 小野田?はい、かなり冷ややかですね。同時に、アメリカ人はかなり不安な目で見ているようです。つまり、日本が集団的自衛権について議論をすればするほど、集団的自衛権の内容や運用を狭めてしまうのではないかということです。 ?アメリカは「日本の集団的自衛権って、そんなに小さなことになっちゃったの?」ということになるのを恐れていますね。 ――つまり、アメリカからすれば、集団的自衛権の発動について柔軟性がどれだけあるのかということに注目していると。 小野田?そういうことなのでしょう。行使容認の是非もさることながら、集団的自衛権が発動される条件やその内容が「どれだけ広がるのか」ということについて関心をもっているのです。 ?しかし、日本では日本周辺で起こる事態のことばかり議論に上がってきます。議論の過程では地球の裏側に自衛隊が出ていくつもりはないというコメントもあった。アメリカの安全保障に関わる識者にとっては、「え??日本周辺だけの話なの?」と受け取られています。 “集団”でも“個別”でも、自衛権を発動するときに、場所は関係ありません。地球の裏側でも日本の主権の主体がある場合があります。日本人が乗った船や、日本国籍の船、あるいは日本向けの石油を積んだタンカーが攻撃を受けたときに、日本の主権がどこまで及ぶのかという判断次第では自衛権を発動する可能性もあるからです。 かとう・よしかず 1984年静岡県生まれ。日本語、中国語、英語で執筆・発信する国際コラムニスト。2003年高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。学業の傍ら、中国メディアでコラムニスト・コメンテーターとして活躍。中国語による単著・共著・訳著は10冊以上。日本では『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)、『いま中国人は何を考えているのか』(日経プレミアシリーズ)、『脱・中国論―日本人が中国と上手く付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)などを出版。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。2012年2月、9年間過ごした北京を離れ上海復旦大学新聞学院にて講座学者として半年間教鞭をとり、その後渡米、ハーバード大学ケネディースクールフェロー、同大アジアセンターフェローを歴任。2014年夏からは米ジョンスホプキンス大学高等国際関係大学院の客員研究員として、ワシントンDCを拠点に“日米同盟と中国の台頭”をテーマにした研究・発信に挑む。米ニューヨーク・タイムズ中国語版コラムニスト。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。趣味はマラソン。座右の銘は「流した汗は嘘をつかない」
日本はアメリカにとって “不安要素”になりつつある ――アメリカは集団的自衛権行使容認について賛同していますが、安倍政権に対してかなり冷ややかに見ていることについては、日本ではなかなか見えてきません。日米同盟は日本の安全保障政策の根幹ですから、アメリカの視線が冷ややかであるということは、日本にとって決して良いことではないように思えます。 加藤?アメリカ国内では、すでに“日本問題”としてこれまでのことは捉えられています。尖閣諸島の国有化、歴史認識問題、首相の靖国参拝、河野談話検証、こうした日本の指導者の言動や行動が、北東アジアに緊張をもたらしているという側面は否めない。特に2012年9月の尖閣国有化や2013年12月の安部総理による靖国神社参拝の直後は「日本は北東アジアの安定を脅かすトラブルメーカーだ」という認識がワシントンの政策立案者やボストンの研究者の間でも広がっていました。 ?私の皮膚感覚からすれば、アメリカは日本のことを“付き合いにくい国”という具合に認識するようになってしまっています。中国はアメリカに「新型大国関係」として対等に付き合っていくべく戦略的に近づいている。アメリカは中国が自国の“核心的利益”を認めさせようとする「新型大国関係」は受け入れませんが、少なくとも「新しいタイプの米中関係」という文脈から、“共通利益”を拡大し、二ヵ国間問題だけでなく、グローバルイシューを巡っても協力関係を深化させようとしている。 ?アメリカにとっては、米中関係がここまで戦略的に深化している情勢下において、同盟国である日本が中国との関係を上手にマネージできず、北東アジアという地政学的に重要な地域でかえって緊張を高める原因を生み出している現状を、よく思っていないのをひしひしと感じます。 加藤?日米同盟が“お荷物”という判断をされる可能性だってあります。国際政治学者のイアン・ブレマー氏は「米国の同盟危機」を主張しています。つまり、アジアの同盟国である日本、中東のイスラエル、欧州の英国の三ヵ国が同盟国として機能しなくなってきている現状はアメリカにとってリスクだと言っているのです。仮に日本がアメリカの国益に適わない“お荷物”と判断されてしまえば、捨てられてしまう可能性だって100%否定はできません。何のための同盟なのか、と。 ?少なくとも、民主党政権発足から自民党の安倍政権に変わったこれまでの数年間、鳩山由紀夫元首相の沖縄をめぐる発言に始まって、領土をめぐる問題や歴史認識をめぐる中国や韓国との緊張の高まりなどから、アメリカは日本に対する信用を低下させているのを、アメリカの地で感じています。 ?アメリカの軍関係者、外交や安全保障の専門家と話している限りにおいては、日本の存在を“お荷物”だと主張したり、「日米同盟などもう要らない」という発言は聞きませんが、日本がアメリカの対外戦略、特に対アジア戦略におけるひとつの “不安要素”にはなっているのは間違いないと見るべきでしょう。 小野田?私もまったく同じ感覚です。実際にアメリカと台湾の関係について、加藤さんがおっしゃったような構図が当てはまります。
?台湾はアメリカと経済的、政治的、軍事的にも、これまで非常に密接な関係を保ってきました。しかし、アメリカは中国との関係を大事にし始めた。経済的にも非常に密接になりつつあります。そうした動きになってくると、今度は台湾との関係を抑制的にし始めています。これは中国と台湾の関係性を考慮しているからです。 ?海軍大学の教授と話をしていたら、「アメリカと同盟関係にある国が、アメリカにとって価値がない、同盟の意味がないと判断したら、同盟関係は消失するだろう」と言っていました。アメリカと台湾は同盟関係ではないけれど、近い将来、台湾を必要としなくなるという可能性は、ないわけではないのです。 ?私はそれを聞いて、「次は日本か、韓国か」とすぐに考えてしまいました。日本が切り捨てられる可能性はあるのかと聞いたら、「それはない」と言っていましたが(笑)。ただ、同盟危機、同盟リスクというものをアメリカが感じているのは確かです。もちろん、国際関係は政治的なファクターだけではなくて、経済的なファクターも大きいですから、単純ではないですが。 日本の「政治大国化」に 米中両国が警戒している ――アメリカは韓国と同盟関係にあり、中国とも関係を深めようとしているということを踏まえて、今、日本が中国と韓国と関係悪化が進み、外交が成り立っていないということを考えると、小野田さんと加藤さんのおっしゃるアメリカが考える「同盟危機」「同盟リスク」について説得力があります。日本は孤立していくということは考えられるのでしょうか。 加藤?たとえば歴史認識問題について、韓国と中国、アメリカは日本に対してだいたい同じスタンスを保持している。もちろん反発や抗議の性質や程度はそれぞれ異なりますが。安倍首相が靖国参拝した昨年末以降、アメリカは日本に対して、歴史認識問題については擁護できませんよということをはっきりと示している。私も同様の主張をハーバード大学内で幾度も耳にしました。日本は(政府だけではなく、社会全体として)歴史認識問題を巡っては、中韓だけでなく、同盟国であるアメリカもフラストレーションを抱え込んでいる現状を知らなければならない。アメリカは日本が中韓との歴史問題で躓き、東アジアの安全保障問題における日米協力が進まなくなることを懸念している。共に同盟国である日韓関係が上手にマネージされていない現状も「同盟リスク」として不安視している。 Photo:DOL 加藤?アジア各国との関係を、経済、歴史、安全保障、政治という4つの要素にわけて考えると、経済はアベノミクス効果もあり、ある程度評価されている。安全保障政策は日米安保を軸に進めざるを得ないので選択肢はあまりない。政治については、安倍政権は各国から“右傾化”という視点から警戒されている現状は否めない。歴史については先ほど申し上げた通り、かなりの具合で“孤立”してしまっている。
小野田?私も歴史認識問題については、韓国と中国、アメリカは日本に対して同じ考え方になっていると感じます。歴史認識の話になると、米国にとって日本は未だに敗戦国なのだと痛感させられます。「説明すればわかってもらえるはずだ」という思いが空しくなることもありますね。政治については、日本でどんどん政権の力が強くなっていって、「政治大国化」することに警戒している側面もあると思います。政治大国化していくことは、過去の戦争を彷彿させてしまう。安倍首相を「ウルトラ・ナショナリスト」と表現する識者も多いですし、日本が右傾化していって自前の核装備をするのではないと危惧する識者もいます。 ?ハーバード大学に核物質の管理について研究・提言しているグループがあり、核兵器以外の世界各国の発電用や実験用などの核物質の管理状況を調査し、テロリストなどによる盗難や襲撃に備えるにはどうするべきかを研究し、政府に提言を行っています。先のハーグ・サミットの主たるテーマがこの核物質の管理です。 ?サミットに際して、日本が米国から供与されていた高濃縮の核物質返還を表明しましたが、研究グループから偉大な一歩だと高い評価を受けていた一方で、その言葉の背後に、日本がいつか核武装するのではないかという懸念が存在すると感じました。現在、日米間で核の拡大抑止に関する協議が進行していますが、日米双方にとって非常に重要な意味をもっています。 加藤?日本の“政治大国化”・“右傾化”を恐れるのは中国も一緒で、これについてもアメリカと積極的に話しています。日本をめぐる政治問題や歴史問題で米中間の認識ギャップが縮小してきている現状を日本は知るべきでしょう。 ?歴史認識の問題が、安全保障や経済協力の進展を邪魔している状況は問題だと言えます。政策はさまざまな要素のミックスであり、歴史、経済、政治、安保がうまく噛み合う必要がある。安倍政権にとっては、いかにして昨今の悪循環を打開して、アメリカや中韓との関係を有機的に構築できるかが今後の課題となるでしょう。 拡大解釈、誇張され 一人歩きする集団的自衛権 ――集団的自衛権について、さまざまな考え方をする人がいて当然だと思いますし、議論が深まることも良いと思います。そのためにも、日本人一人ひとりがこの問題を考えるときに、本質というか、ポイントを押さえることが大事だと思います。これを挙げるとすると、どのようなものになるのでしょうか。 小野田?「国際社会における日本の立場」に尽きると思います。 加藤??「国際社会における日本の信用力」(前編参照)だと思います。 小野田?「立場」と言ったときに、日本の場合はほとんどの方が「経済的な立場」について頭に浮かぶと思います。たとえば、日本の企業が中国に何社進出していて、その企業の持つ交渉力はどのくらいの強さがあるのか。日本企業がどれだけ中国社会に認められているのか。分かりやすく言えば、国際社会における経済的な立場はこういうことです。 小野田?ただ、私が言う「立場」は「政治的な立場」です。このことに関しては、あまりイメージが浮かばないのではないでしょうか。 ?安倍総理大臣が歴代総理大臣のなかでもっとも外遊をしているそうですが、これまで低かった、国際政治における日本の立場をもっと強くする、上げていくという考えが根底にあるのでしょう。その具体的な方法の一つとして、集団的自衛権の行使容認という話が出てくるのだと思います。 ?日本人にとって、政治と言えば「政局」をイメージしますよね。あとは消費税などの自分の生活に直結するもの。国際社会における日本の政治的な立場に対して、日本人の頭からすっぽりと抜けていると思います。 ?だからこそ、国際的にどのような国を目指していくのか、というビックピクチャーやゴール、ビジョンを語っても、ほとんど理解されないし議論が深まっていかないのだと思います。安倍政権が歴代政権のなかで初めて安全保障戦略を策定したことは高く評価すべきですが、国会でその内容が議論されたという話はほとんど聞きません。こういう背景があるから、集団的自衛権について安倍首相は記者会見でパネルを使って細かな事例を出して説明をした。さきほど言ったように、全体の戦略を語ることに労力を費やしても、それほど国民の心には響かないと思っているのかもしれませんね。 加藤?日本では集団的自衛権など安全保障の問題を国民的に議論することは少ないでしょう。政府はどう国内外に発信するか定かではないし、国民も政府が言っていることが具体的に何を意味するのかイメージできない。だからこそ、現状として、「集団的自衛権」という言葉だけが拡大解釈・誇張されてしまっている。一人歩きしてしまっているように見える。 ?国内の政治がA面だったら、国際的な政治はB面。両者はセットで考えていかないといけない。いまこそ日本の国際的な信用力や小野田さんがおっしゃった政治的な立場が問われている。国際社会で日本はどのような国として生きていくのかというビジョンと戦略の問題を政府だけでなく、民間レベル、そして若い人たちもこれまで以上に真剣に考え、行動を起こしていかないないといけません。集団的自衛権のみをひとり歩きさせてはならない。あくまでも、日本の戦略・国益という枠組みの中に安全保障という分野があり、その中のひとつが集団的自衛権の問題ということだと思います。
[12削除理由]:長文は投稿すべし。コメントじゃ無く |