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(360゜)財源求め、税には税を 法人減税・軽減税率、穴埋めは 浮上する新税
http://www.asahi.com/articles/DA3S11239686.html
2014年7月13日05時00分 朝日新聞
法人減税、軽減税率の穴を埋めるのはパチンコか携帯電話か。官邸、公明党、警察、世論と「敵」に囲まれ、自民党税調はどう動く?
2月14日、自民党に新たな議連が誕生した。
「時代に適した風営法を求める会」(会長・保岡興治元法相)。発起人には、高村正彦・副総裁、野田聖子・総務会長、野田毅・党税調会長ら大物議員がずらりと名を連ねる。1989年の消費税導入と同時に廃止された「娯楽施設利用税」の復活を想定し、ダンスクラブやマージャン、パチンコ店など風俗営業法の規制を受ける業界から、規制緩和と引き換えに徴税しようという狙いがある。
議連の狙いは風俗営業全般というよりは、パチンコだった。第1回の会合でさっそくパチンコ課税が議題にのぼった。またこの日、配布された資料には今後の議題として「景品交換のルール」「パチンコ、パチスロ機の種類」「税のあり方」が挙げられており、明らかにパチンコ課税を想定した道筋が描かれていた。実際に4月まで計5回の会合のうち4回がパチンコ業界や業界を所管する警察庁からの意見聴取だった。
狙われるのも当然で、パチンコは20兆円にのぼる巨大産業だ。客が現金と交換する際に1%課税すれば2千億円が転がり込む。賭博との境目がグレーであることや依存症の問題を抱え、世間の業界への視線は厳しい。新税に対する反発は、他の業界に比べて大きくないとの読みもある。
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6月18日には「携帯電話問題懇話会」が発足した。表向きは携帯電話を使った犯罪防止や有限希少な電波資源の確保をうたう。
だが税調会長の野田氏ら少人数で行われた会合には、財務省主税局幹部の姿もあった。目的は、1億4千万台を超えて普及する携帯電話に対する新税の検討だ。放送や携帯電話などの事業者が支払っている電波利用料の負担を、利用者個人にも求めるイメージで、1台ごとの課税を見込む。かつて東日本大震災の復興財源として浮上したこともある。仮に月1台100円の課税で年1680億円になる。
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相次いで新税構想が浮上する背景には、1千兆円に達する借金を抱える国・地方自治体の厳しい台所事情がある。安倍晋三首相が意欲を示す法人税減税。仮に税率を1%引き下げると、年約5千億円の税収が失われる。さらに公明党が強く求める消費税の軽減税率(酒と外食を除く全食料品)の導入でもほぼ同額の税収が消える。官邸からは法人減税の圧力がかかり、軽減税率導入では集団的自衛権の問題で妥協を強いられた公明党の顔を立てる必要もある。官邸と公明からの強い圧力に党税調幹部は「前門の虎、後門のオオカミだ」と嘆息する。
両者の要望を入れつつ財政規律を守るには、新しい財源が必要だ。そこで浮上したのが、パチンコや携帯電話への課税だ。自民、公明両党が昨年12月にまとめた2014年度税制改正大綱は「今後、内外の社会情勢の変化を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進める」と新税創設を模索すると明記している。それぞれの議員がこだわる政策で減税や予算を勝ち取るためにも、自ら財源を作ることが求められている面もある。税調では「年末の税制改正までに何か一つでも新税を実現できれば」と、議連の議論を見守っている。
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しかし、課税への道筋は容易ではない。パチンコは現金または有価証券を賞品として提供することを禁じる風営法のいわば「グレーゾーン」にある。店が出玉と交換するのは「特殊景品」。これを客が勝手に交換所に持ち込んで換金しているだけ、という建前で警察庁は賭博とは違う「遊技」と位置付けている。
課税するには、グレーなまま常態化している現金との交換を制度化する必要がある。換金の制度化はすなわち全国約1万2千店のパチンコ店で日常的に賭博が行われていることを追認することになりかねない。天下りの問題も指摘される中、警察庁が強く抵抗している。パチンコ業界に詳しいフリーライターのPOKKA吉田さんは「業界にとっては、憲法解釈で合憲としてきた自衛隊を改憲で国防軍にするような大転換だ。簡単には進まないだろう」と話す。
携帯電話にしても、インターネット大手、ヤフーが課税の是非について意識調査したところ、16万以上の回答のうち約13万4千が「反対」だった。普及率が100%を上回る携帯はすでに生活必需品となっており、本格的な議論が始まれば国民的な反発も予想される。懇話会の中心メンバーである中山泰秀衆院議員は「課税の議論が独り歩きしている。携帯電話に関わる問題を、ちゃんと議論したいということだ」と沈静化に躍起だ。
年末には消費税の10%への引き上げ判断も控えており、法人減税のための財源として個人の生活に直結する新税が導入されれば、政権批判に直結しかねない。小泉政権で党税調会長を務めた津島雄二・元衆院議員は「これまで個人の生活に関わる増税は、所得税減税や社会保障の財源などに使う前提があった。法人減税の財源を個人の負担にもとめるには、議論を尽くす必要があるだろう」と話している。
(秋山惣一郎、鯨岡仁)
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