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そのとき、首相官邸前は緊迫していた。今月1日に閣議決定された集団的自衛権の行使容認に抗議するたくさんの市民がその前夜と当日、沿道を埋め尽くしたからだ。その中に分け入ると、しばらく身動きがとれなくなった。
3日夜、作家の大江健三郎さんらが呼びかけ人の「戦争をさせない1000人委員会」が国会近くで集会を開いた。やはり会場は多くの人たちであふれかえっていた。
哲学者の高橋哲哉さん(東大大学院教授)が今回の解釈改憲を「道義の退廃だ」と非難し、嘆いた。「最低最悪の政権だ。即刻退陣していただかなければならないが、退陣させられないのは私たちの非力のせいだと思う。しかし、あきらめることはできない」
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解釈改憲反対の声は、安倍晋三首相には通じていない。1日の閣議決定後におこなった安倍氏の記者会見では、こんな発言が印象に残った。
「平和国家という言葉を唱えるだけで(平和が)実現したものではない」「決断には批判がともなう。しかし、批判を恐れず、私たちの平和への願いを責任ある行動へと移してきたことが平和国家日本をつくりあげてきた」
自衛隊を創設した吉田茂首相、日米安全保障条約を改定した祖父の岸信介首相らの業績をたたえつつ、日本が戦争に巻き込まれることは「ありえない」と言い切る。なぜそこまで自信をもって断定できるのか、かえって不安に感じた人も少なくないだろう。
安倍氏はわかっているはずだ。10年前の共著「この国を守る決意」(扶桑社)に記録された安倍氏の主張を、いま一度読み返してみよう。
「軍事同盟は『血の同盟』です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです」
「可能性は極めて小さいですが」と前置きはしているが、日米の若者がともに血を流すことが前提となる。生々しいが、それが本質だからこそ、戦争参加への道を開くことになるという心配が消えないのだ。国会でもこの点は何度か取り上げられたが、議論はかみ合わなかった。
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安倍氏は「たじろがない」という言葉を好む。国民の強い反対を押し切って、日米安保条約改定をとげた敬愛する祖父・岸の影響からだ。
「正しい」と信じたことは、いかなる批判があっても突き進む。周囲はその勢いに気おされ、従わざるを得なくなる。安倍氏は巨大与党を追随させ、野党を分断して政界での優位を築いた。
しかし、信念優先の「たじろがない政治」は為政者の精神論に過ぎない。違う立場からみれば独善と暴走に映り、国民世論の分裂と対立を深めかねない怖さがある。
関連法改正の議論は、これから本格化する。「国民が血を流す」という厳しい政策に、為政者のヒロイズムはいらない。「国民目線」の徹底的な論戦を望みたい。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11227883.html
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