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田原総一朗「公明党なしではバランスが取れない自民党の危なっかしさ」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140703-00000009-sasahi-pol
週刊朝日 2014年7月11日号
集団的自衛権の行使に関する問題。ジャーナリストの田原総一朗は自民党内に論争を巻き起こす「ハト派」がいないことを指摘する。
* * *
集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更について、自民、公明の両党が大筋で合意したようだ。
最後に両党が対立したのは、集団的自衛権を使うための要件で、政府は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」としていたのだが、公明党が「おそれ」では歯止めがなくなると懸念を強め、結局「おそれ」が「明白な危険」に変わって、合意となったのであった。
だが、自民党が公明党に妥協したことで、曖昧なかたちとなった部分もある。
政府は、国連決議に基づき侵略国などを制裁する集団安全保障については、「参加しない」と言ってきたのだが、途中で「参加する」になり、結局は結論の先送りとなった。
そのため、おかしな話となった。海上自衛隊が集団的自衛権の範疇で機雷を除去している最中に、国連安全保障理事会で掃海の決議が採択されると、活動の根拠が集団安全保障に移るために、掃海を中断せざるを得なくなるのだ。これでは、国際社会ではとても理解されないだろう。
集団的自衛権の行使をめぐっては、公明党はよく頑張ったと私は評価している。おかげで集団的自衛権をめぐる自民党案の曖昧さや矛盾がずいぶん露呈して、問題点がわかりやすくなった。
だが、少なからぬ国民は、安倍晋三首相が集団的自衛権で先走りすぎている、と危機感を覚えているのではないだろうか。
私が言いたいのは、かつての自民党なら、今回の公明党との論争が、自民党内部で行われたはずだということだ。自民党は国民政党であった。
かつて湾岸戦争のとき、ときの自民党幹事長であった小沢一郎氏は、湾岸戦争に自衛隊を出動させるべきだと主張した。首相も反対ではなかった。ところが、宏池会を中心に反対論が噴出し、党内で激しい議論が戦わされて、結局、参加しないことになった。
自民党の中にはタカ派もいればハト派もいた。そしてタカ派とハト派が公然と論議を戦わせる。それが他の党にはない自民党の特質であった。だからこそ、国民の多くが自民党を支持してきたのである。
本来ならば、集団的自衛権の行使に踏み切るためには、憲法改正が必要である。公明党は、自民党とその論議から始めた。
だが、こうした論議は本来、自民党内部で起きるべきであり、その論議を公明党に言われなければ始められない自民党は、健全とはいえないのではないだろうか。
はっきり言って、安倍首相はタカ派の政治家である。だが、タカ派といえば中曽根康弘元首相と、小泉純一郎元首相もタカ派であった。だが、当時は自民党内にはっきりと「否」を言いたて、論争を巻き起こすハト派の勢力があった。その意味で自民党はバランスが取れていた。
ところが、現在の自民党には党内論争というものが見当たらない。公明党に頼らなければバランスが取れないというのが何とも危なっかしい。
かつては三(三木武夫)・角(田中角栄)・大(大平正芳)・福(福田赳夫)・中(中曽根康弘)が激しく争い、その後は竹下登、安倍晋太郎、宮沢喜一が競い合った。だが現在の自民党には安倍首相に抗する人物が見当たらない。それが私には大いに不満である。
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