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[永田町インサイド]自衛隊60年 未知の任務へ
冷戦終結が転機 配備の重心「西」に
自衛隊は7月1日、創設から60年を迎える。「専守防衛」の基本理念のもとで国土防衛に重点を置いていた任務は様変わりし、活動の範囲を大きく広げた。日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じ、憲法9条の縛りを緩めながら未知の領域に臨み続けている。憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使に踏み出せば、さらに新たな次元に入る。
(編集委員 佐藤賢)
●風当たりきつく 「君たちが日陰者であるときの方が国民や日本は幸せなのだ。国家のために忍び、耐えてもらいたい」。吉田茂元首相が自衛隊を「日陰者」と呼んだのは、1957年2月。防衛大学校1期のアルバム委員だった平間洋一氏らを神奈川県の大磯の自宅に呼んだときの話だ。自衛隊創設から3年がたとうとしていた。
「自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の危機にあるときとか、災害派遣のときとか、国民が困窮しているときだけなのだ」。有事を招かないよう精励してほしいとの意味を込めていた。
平間氏は「あのころは自衛隊は日陰者という罵倒を年中、聞いていた。吉田さんが日陰者という表現を使ったのは国民が言っていたからだ」と振り返る。国民に根強かった軍事アレルギー。自衛官の子どもが通う小学校でも教師が自衛隊を批判する場面が見られ、風当たりはきつかった。
自衛隊は発足後、旧ソ連による日本領土への上陸侵攻を想定し、防衛力の整備と訓練に精力を注いだ。防衛庁(現・防衛省)がまとめた「自衛隊十年史」によると、道路や橋の新設など土木工事を積極的に担っていた様子も見える。基礎インフラの整備も重要な仕事だった。
転機を迎えたのは東西冷戦の終わりだ。
「これからパンドラの箱が開かれる。何が起きるか分からない」。初の生え抜き次官として「ミスター防衛庁」と呼ばれた西広整輝防衛次官は90年に退任する直前の会議で、こう予測していた。
91年に湾岸戦争が勃発し、戦後のペルシャ湾での機雷処理を支援するため日本は海上自衛隊の掃海艇を送った。初めての自衛隊の海外派遣だった。92年にはカンボジアでの国連平和維持活動(PKO)に参加。モザンビークや中東のゴラン高原などのPKOでも実績を積み、「国際貢献」は自衛隊の看板になった。
「これはガラス細工だ」。92年にPKO協力法が成立すると、当時の宮下創平防衛庁長官は佐久間一統合幕僚会議議長に漏らした。この後、安全保障に関する法律はガラス細工を積み重ねていく。
●新たな脅威の出現 98年8月、北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると、防衛庁に衝撃が走った。事前に警戒態勢をとっていたが、日本上空を通過して三陸沖の太平洋に着弾したからだ。「今までなかった新たな脅威がついに到来したか」。当時、防衛局長だった佐藤謙氏は安保環境の局面変化を実感したという。ミサイル防衛システムや情報収集衛星の導入に向けた転機になった。
2001年の米同時テロで歯車はさらに動いた。テロ対策にあたる外国軍艦に給油活動をするためインド洋に海自の艦艇を派遣。03年にはイラクでの復興支援のため陸上部隊を送った。
旧ソ連に対峙するため「北」に偏重していた配備は、中国や北朝鮮をにらんだ「西」に重心が移った。東シナ海では中国軍の挑発で一触即発の危うさをはらむ。守備範囲はテロ・海賊対策やサイバー空間にも広がり、集団的自衛権の行使も新たな任務に加わろうとしている。
古庄幸一元海上幕僚長は語る。
「今の自衛隊は任務が増えていて非常に忙しい。予算や人員が限られる中で、能力を全力発揮できるだろうか」
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自衛隊とは
▼自衛隊 日本の平和や独立を保つための防衛組織。治安維持や災害派遣、国際平和協力なども担う。総定員は約25万人。首相が最高指揮監督権を持ち、防衛相が事務を統括する。2014年度予算の防衛関係費の総額は4兆8848億円。英語名は「Japan Self―Defense Forces」。
憲法9条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記しているが、政府は「自衛隊はわが国を防衛するための必要最小限度の実力組織で、憲法に違反しない」と解釈している。
[日経新聞6月29日朝刊P.4]
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