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2014年06月18日
(写真;http://livedoor.blogimg.jp/bilderberg54/imgs/4/8/4816968f.jpg)
日本が中国との関係を悪化させている中、中国は遠くの欧州諸国と関係を強化している。「遠交近攻」を地で行っているとも言えるわけですが、先日、英国に中国の李克強首相が訪問したさいにはむしろ中国の経済的存在感を利用する英国の強かさを強く感じる。
この件については、英国の経済紙「フィナンシャル・タイムズ」とほぼ同じ内容を18日の日経新聞が行っていたので、この記事を小分けにして見ながら情報を整理していこう。
英中、経済協力強める LNG供給・高速鉄道建設
首相会談で合意 総額2.4兆円
2014/6/18付 日本経済新聞 朝刊
【ロンドン=小滝麻理子、北京=阿部哲也】英国と中国は経済協力を強化する。キャメロン英首相は訪英中の李克強中国首相と17日に会談し、中国向けのエネ ルギー供給の拡大や、英高速鉄道への中国企業の参加の促進で合意した。人民元決済も推進する。中国は経済力と巨額の投資マネーをテコに、強気の交渉を展 開。両国間でくすぶるチベットなどの人権問題には深入りせず、経済優先を鮮明にする英政権への批判も出ている。(中略)
金融分野では、 中国建設銀行を英国初の人民元決済銀行とすることでも合意する方向。急成長する人民元決済は、英国のほかに、ドイツも欧州でのオフショアセンターを目指 し、取引拡大に動いている。中国も今年に入り、英独と相次ぎ決済拠点を置く覚書を交わし、競わせており、英で決済銀行を設立する。
この記事では、英中は次のような関係強化をすると報じられている。
(1)英国が中国向けのエネルギー供給の拡大
(2)イギリスの高速鉄道の中国企業の参加
(3)英国が人民元決済への協力
この3つのテーマのうち、3番目の人民元の国際化はいわば中国の悲願だ。FT紙によると、この四月で人民元は世界では7番目に使用される支払通貨になった という。シカゴマーカンタイル取引所のレポートでは、次のような図表を使用して人民元の国際化の実態を紹介している。米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、 カナダドル、豪州ドルに続く7番目だとわかる。つまり英国はまだ3番目だから人民元国際化に協力してもポンドの地位は安泰だという判断をしているというこ とだ。
(グラフ;http://livedoor.blogimg.jp/bilderberg54/imgs/b/d/bdb23939.png)
つづいて、日経の記事を見ていく。
中国首相の訪英は3年ぶり。英中関係はキャメロン氏が2012年 5月にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したのを機に冷え込んでいた。キャメロン氏が昨年末に訪中したことで関係改善に動き出し、今回、 李首相には200人を超える国有企業や大手民間企業の幹部も同行した。
李克強首相の英国訪問には200人を超える民 間・国営企業の幹部団も参加したとある。この種の同行する企業家たちはdelegationと呼ばれる。世界各国の首脳の外遊で重要なのは本当はこのデレ ゲーションの名簿なのだ。安倍首相も地球儀外交を展開する際に、中東に原発関連企業の幹部を同行させたことが赤旗などの批判的なメディアによってすっぱ抜 かれた。つまり、このデレゲーションの名簿というのは国家戦略を読み解く上で重要なものなのだ。
会談後の記者会見でキャメロン首相は、英国と中国の間で結ぶ契約が総額140億ポンド(約2.4兆円)相当にのぼることを明らかにした。エネルギーや金融分野など40以上の合意文書に署名する見込みだ。会見で李氏は「中英で利害を共有したい」と語った。
目玉となるのが、資源エネルギー協力の拡大だ。中国メディアなどによると、英石油大手BPは中国海洋石油総公司(CNOOC)向けに総額200億ドル(約 2兆円)相当の液化天然ガス(LNG)を長期供給する契約を結ぶ。中国にとっては5月に結んだロシアとの天然ガス調達契約に続く大型案件で、調達先の多様 化につなげる狙いがある。
この記事で私が一番注目したいのはこのエネルギー協力の拡大の部分だ。英国には資源企業の BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)とオランダとの二重国籍企業であるロイヤル・ダッチ・シェルの2つがある。BPはかつてはアングロ・イラニアン石油 と言われた企業であり、20世紀の英国の中東資源戦略を担ったものだが、私が前著の『グローバル企業名鑑』で解説したとおり、近年ではロシアとの関係が深 い。
この関係の強さはクリミア問題で欧米諸国がロシア制裁をしたところで切れない。英国の金融街シティとロシアの経済的結びつきは米国がどやしつけた程度 では切れないものなのだ。
中国の資源調達といえば、先日もプーチン大統領と習近平の間で、国営企業のガスプロムが長期契約で天然ガスをパイプラ インで供給するという大きな動きがあった。米国から見ていると、これは中露というランドパワーが結びついていくかどうかという地政学的な分析となる。しか し、イギリスの世界戦略の視点でいうとそれ以外に重要な点がある。
イギリスと中国とのディールの中には、ロシアとの関わりが深いBPが一枚噛んでいること が重要である。BPはロシア国内での資源開発をしている。ロシアのガス企業にとって必要なのは、欧米諸国の最新の掘削技術である。
BPは少し前 にメキシコ湾で大きな石油掘削施設の事故を起こしており、巨額の賠償負担を負っている。無論、米国から撤退しているわけではないが、米国企業のエクソン・ モービルはいまやベトナムの洋上油田開発に乗り出している(それでベトナムと中国が争っている)ので、やはりここはロシアとの関係を深めておきたいという ことになる。
さらにもっと言えば、この日経の記事の横側に掲載されていた記事だが、「在イラン大使館を英国が再開を発表」という記事があった。 ここでイラク情勢の混乱が関わってくる。中東ではイランのようなシーア派と、スンニ派の諸国の対立がある。更にはサウジアラビアのようなワッハーブ派とい う過激派の存在もある。シーア派はペルシャ帝国であり、スンニ派はアッバース朝の歴史的には後継者である。つまり中東地域のビッグ2ということだ。サウジ アラビアの歴史は20世紀からであるからそんなに古くない。
ウクライナ情勢はアメリカのネオコンとロシアの争いであり、イギリスは今の段階では クリミア問題で「お付き合い」してるだけだ。イギリスは本当はロシアとの経済的な連携を深めたい。東ウクライナの内戦はしばらく続くだろうから、イギリス は中国という「ブリッジ」を通しながら間接的にロシアとの連携を深めるだろう。このことが今回の李克強英国訪問の記事から浮かび上がってくる。
スンニ派諸国は政情不安定である。それならばシーア派のイランでの資源開発を視野に、米国との間で対イラン和解機運が生まれている今、経済外交的に英国はかつての古巣のイランに攻勢を仕掛けていくだろうと予測できる。
さらに言えば、英国は中国の国営原子力企業との関係も強化する動きを見せている。
中東でのイスラム教同士の宗教紛争が激化していくと最大のドル箱であるサウジは大丈夫でも、期待されてきたイラクの油田開発が遅れる可能性もある。米国はシェールガスや国内のこれまで開発されていなかった資源を開発し輸出することで英国との競合関係になる。中東での地政学的リスクを減らすために英国は考えて資源戦略を練っている。それからやはりアフガニスタン戦争でアメリカに付き合ったりもしたが、イギリスが大規模な派兵をすることはしばらく無いだろう。
ちなみに、超余談だが、英国のBPの元CEOでメキシコ湾油田流出事件で米国内で散々叩かれたトニー・ヘイワードという経営者は、現在はロスチャイルド男爵家の御曹司 のナットと一緒にゲネル・エナジーという会社を立ち上げているが、この石油企業が投資をしているのが現在紛争に巻き込まれているクルド人地域である。ナット・ロスチャイルドは投資家にとってのある種の「死亡フラグ」ではないかと思えるほどだ。
どうもこのロスチャイルド家の御曹司は投資センスがあまりないらしく、インドネシアでも石炭企業に投資したが、現地の財閥と大げんかになっている。ツイッ ターでもロスチャイルドは感情的なツイートを繰り返しており、このジェイコブ・ロスチャイルドの息子はあまり出来が良くない。
イギリスの資源企業の技術力はロシアの資源産業の命綱である。ロシアが孤立するほどイギリスの差し伸べる手はロシアにはありがたいわけだ。ロスチャイルド家は反プーチンの傾向が強いが英国全体で見るとロシアとの連携を長期的視野で続けていくようだ。
さて、日経の李克強首相の英国訪問の記事に戻る。
両首相はロンドンとイングランド北部を結ぶ高速鉄道に中国勢が参加することでも合意。中国企業によるレール敷設や車両の納入を想定している。英高速鉄道を 巡っては、日立製作所や東日本旅客鉄道(JR東日本)も車両更新や技術コンサルを受注。日本が国を挙げ輸出拡大を目指す戦略分野でもあり、低価格を売り物 にする中国勢の参加で影響が及びそうだ。
中国の高速鉄道は国内で大きな事故2011年夏に起こしたが、それ以後は大 きな事故を起こしていない。もともと日本の新幹線技術を模倣したものだろうという噂も根強くある。そこでその高速鉄道を中国は英国だけではなく各国に低価 格で売り込むということである。原発でも韓国企業が中東に安値で売り込んでいることが問題になっているが、新興国の安値商法に日本企業は押されている。
JR東海の葛西敬之会長の反中フラストレーションはこの意味では故なきことではないのである。
英国は中国との関係をしばらくは深めていくようで、そのためには何でも利用するというのが政府の方針のようだ。記事の引用を再開する。
中国は大型の経済案件を手土産に、チベットなど国内で抱える人権問題への批判を封じる。連立与党の自由民主党党首であるクレッグ副首相は「中国では大規模で組織的な人権侵害が続いている」とキャメロン首相の対応を批判した。
国家元首でない李氏とエリザベス女王の17日の面会を巡っても、事前に中国側は応じなければ、訪問自体を取り消す姿勢を示し、水面下の交渉を有利に進め た。英国内では「巨額投資を失いたくない英国の焦りが露呈した。女王は人質にされた」(英紙タイムズ)と失望の声が上がっている。)
中国の首脳との国家元首の面会をビジネスに利用したということで、保守系のタイムズ紙が批判している。この話も日本でも似たような話があった。それは天皇 陛下と習近平国家副主席(当時)の面会を巡って、保守派のメディアを中心に「30日ルール」という外交上プロトコルを守らなかった民主党政権に対して批判 が集中した。
しかし、国家元首も象徴も、このように主権者の代表である政治家の判断に従うというのが立憲君主国家の当然の考え方なのである。日本もイギリスもタイ のような不敬罪の規定があるわけではない。その意味では日本も近代国家の体裁を整えている。鳩山政権の当時の判断も、中国との経済的な関係を重視したために天皇陛下と習近平の面会を重視したのだろう。相手のメンツを立ててあげればうまくいくと発想で動くのが「商人国家」の考え方だ。してみると、「商人国家」と「農耕国家」の考え方の違いが表面化したのがあの習近平面会問題だったかもしれない。
このように英国の通商戦略を見ていくと、TPPにもユーロ圏にも頼らずになかなかうまいことをやっていると気づく。ジョンブル魂ここにあり。
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