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2014年6月18日
2005年(平成17年)9月11日、第44回衆議院議員総選挙が執行された。この年月日を覚えている方々も多いだろう。忘れもしない小泉政権時代、この選挙は日本の分水嶺となった郵政選挙だった。
小泉純一郎元首相は郵政民営化に当たり、郵政民営化こそ構造改革の本丸だと銘打ってこれを強力に推し進めた。この郵政選挙から4年経過したころ、国民は構造改革や郵政民営化によって何かプラスになったのかということを自問自答し始めていた。
その後、内閣が3代続き、国民が急速な生活実感の低落から行き着いた結論は、小泉構造改革がプラスどころか、その“改革”のおかげで国民経済そのものが逼迫状況に陥ったことを肌で感じていた。小泉・竹中構造改革が国民生活にとって有害な方向性を持っていたかもしれないという根本的な疑問だったのである。
そういう思いが日増しに強くなっていた国民は、小泉構造改革の政治潮流から抜け出して、とにかく生活を回復させる新たな国政の出現を求めた。これが民主党に政権を鞍替えさせた当時の民意だった。
ところが、晴れやかに政権与党を張った民主党は、理想も愛国心もないごった煮のような腐った政党だった。国民が求めていたのは、亀井静香、小沢一郎、鳩山由紀夫らが志向する国民生活の回復と中小零細企業の健全な市場存続性だった。
ところが民主党の屋台骨は、底流に日本解体の欲動を渦巻かせ、じつは旧弊たる権力指向の強い烏合の衆だった。この政党は、1年も経たないうちに国民の期待を裏切って、自公政権を動かしていた対米従属の既得権益勢力にすっかり靡(なび)いてしまった。
その例の一つが事業仕分けという大花火だった。2009年9月16日から政権を担当した民主党は、「行政刷新会議・事業仕分けチーム(WG)」を設け、同年の11月から3段階に分けて“事業仕分け”を行った。
○第一段階は「2010年度(平成22年度)予算編成に係る事業仕分け」
○第二段階は「独立行政法人や政府系の公益法人が行う事業についての事業仕分け」
○第三段階は「特別会計の制度と事業再仕分け」
これについてネットでは、PDFなどで経過や評価を載せているのだが、神州の泉は頭が悪いせいか何がどう明らかになって、何が決定的に問題点として浮き彫りになったのか、さっぱりわからない。
また、この仕分けの概容や意義を庶民に分かりやすく説明してくれる専門家はいたのだろうか。
分かったことは、この事業仕分けのメンバーに、モルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマンという人物が選ばれていたことだ。しかも、文藝評論家の山崎行太郎氏によると、事業仕分けチームには川本裕子、石弘光、土居丈朗・・・と、ズラリと「小泉・竹中構造改革」シンパが並んでいたそうだ。
亀井静香氏は、ロバート・フェルドマンらを排除せよと言った経緯があったそうだ。この事業仕分けはテレビを通じて華々しく取り扱われたが、印象で言えば、大山鳴動してネズミ一匹の感が免れないものだった。
フェルドマンなる小泉構造改革の象徴的な人物と、竹中平蔵に連なる構造改革派の残党がこの仕分けワーキング・グループに潜入していたことや、当時の読売新聞や産経新聞の世論調査ではかなり高い肯定的な意見が出ていたことに大きな違和感を覚えていた。
だが、何割の国民が事業仕分けの核心を知っていて評価したのだろうか。案外マスコミが馬鹿騒ぎしたことだけに気を取られて、何か斬新で素晴らしいことをやっているような錯覚にとらわれていたのではないだろうか。
この当時、少し意識の進んでいた連中は、事業仕分けに対して「特別会計」の闇にメスを入れることを強く期待していたと思う。しかし、その結果については何か大きな成果が得られたのだろうか。以前と何も変わっていないのではないのか。
何十年も頑強に防護壁を作り、外から見えない状態にしているシロアリ帝国が、新参者政権にその牙城を見学させるものだろうか。石井紘基議員は国政調査権を使い、戦後に政府予算の全貌(日本の本当の財政規模)や特別会計、特殊法人の闇に食らいついた唯一の政治家だった。それらを公に暴こうとした石井議員は刺殺されている。
日本の金の大半は特別会計に流れているが、一般会計はその隠れ蓑になっていて、それを必死に調べていたのが石井紘基議員だったのだ。だが、民主党が行った事業仕分けには、石井議員が単身で突っ込んでいたハードな文脈は全く感じられなかった。
民主党には確かに石井紘基議員や小泉俊明議員(現・減税日本)のような本物の猛者もいたのだが、自民党とは違った意味での売国議員も多い。全体としては、内なる日本をぶっこわす政党だったことはその行動様態で証明している。
亀井静香と小沢一郎が上手くコラボできて、党内の一定数の同志を固めておけば、あるいは日本コーポラティズムの趨勢に対抗できたかもしれないのだが、現実は仙谷、菅、野田、前原など、民主党の中枢勢力に押されっぱなしだった。
日本には戦前から残存している目に見えない官僚システムがあり、この特有のシステムがブラックボックス化して国家財政のイナーシャ(慣性)を持続させている。これが国民経済を絶対に賦活させない仕組みになっている。
このインビジブル(不可視)な日本システムに加えて、1980年代からはグローバル資本の対日インセンティブが強く加わり、全体としては官僚経済とグローバル資本による新自由主義(フリードマン主義)で急速に国民は希望のない地獄に叩き落とされている。
これは日本人全体が出口のない二つのトンネルに自ら入り込んでしまった状態と似ている。しかも、この二つとも“プラトンの洞窟”であることに全く気付いていないのだ。日本の国政はこの二つの秩序に衝き動かされ、それが強いイナーシャとなって異質な考えを全く受け付けなくなっている。
「官僚経済と国民経済の非循環性」と「グローバル資本の対日侵略」によって、この日本ははてしなく絶望的な国家となっている。このまま行けば、ファンダメンタルな国民経済のクラッシュで、戦前から続いているインビジブルな官僚システムも稼働を止めてしまうだろう。
また、グローバル資本も国民経済がクラッシュしてしまえば、せっかく膨大な労力をつぎ込んで日本人エージェントを育て上げたり、小泉政権以降に培養したフリードマン主義による政治土壌から作り上げた草刈り場を失うことになる。日本はそういう局面に入っている。
以上のように、二段構えの“外道的”なパワー・ポリティクスが乱舞する日本にあって、日本経済を実質上牽引しているのが竹中平蔵である。竹中は既得権益システムに巣食う者たちを抵抗勢力と言って敵視しているのだが、官僚たちがインビジブル・システムに組み込まれて肥え太っている現実には決して触れない。
竹中平蔵が本気で敵視しているのは官僚ではなく、じつは日本国民なのであり、国民経済復活への修正概念なのである。これを真剣に考える亀井静香のような政治家が彼の真の敵なのだ。その意味では、グローバル経済と日本の官僚経済はある種のコラボ(協調)状態にあると言ってもよい。
さて、前置きが長くなってしまったが、竹中平蔵は東洋経済ONLINE『竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」http://toyokeizai.net/articles/-/11927?page=2』(2012年11月30日)で次のようなことを語り、ネットでは強い反感を買った。
『私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。』
これはストレートにミルトン・フリードマンの『選択の自由』を想起するが、貧乏になることに選択の自由は介在していない。ほとんどが望ますに種々の条件で貧乏になっている。人間は自分が望む社会の在り方を自由意思では選択できないというのが現実だ。
たとえばプロレスラーやプロ・サッカー選手になりたいと思っても、病弱でなれない人がいるし、犯罪者やホームレスになった人たちが、自らの選択結果でそうなるわけではない。自分の希望と持って生まれた才能が合致していない場合もある。人間は様々な理由で非選択的な状況に置かれてしまう社会的存在なのである。
フリードマンや竹中平蔵のように、何でも自己責任とか選択の問題に帰趨(きすう)させてしまう思考法は、国家や人間社会の秩序構成の原則を無視している。国家機能が何のためにあるかを考えたとき、世の中が自己責任原則や選択の自由だけで動いているわけではないことがすぐに分かる。
ホッブズが「リヴァイアサン」で言っている、自然権と自然法の相克を考えても分かるように、人間の自由が野放しになれば社会は無秩序化し、各個人の要求が極限まで肥大化して衝突し合えば収拾がつかなくなる。だから市民社会は主権国家によって担保される。貧乏になる自由という考え方は、負のリバタリア二ズムである。
国民が稼いだお金が官僚経済やグローバル企業に湯水のように流れている。そのために再配分に還流しないシステムができあがっているのだ。このような外道な構造を形成した国家(政府)に対し、今の日本人がホッブズの国家論的な概念を支持するかどうかははなはだしく疑問なのである。
その意味で、今の日本の最大の問題点は、「国民国家(ネーション・ステート)」の健全な概念が崩壊していることにあるかもしれない。竹中平蔵の「貧乏になる自由」は、この国民国家の崩壊を端的に説明している。
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