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(回答先: 自分の姿は見えないものだ(古村治彦の酔生夢死日記)―フィナンシャル・タイムズ紙に掲載された日本経済についての短い記事― 投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 6 月 16 日 09:57:35)
http://www.kanaloco.jp/article/71132/cms_id/80135
2014.05.11 11:30:00
経済の先行きに広がる漠とした不安の実像を解き明かした著書「デフレの正体」がベストセラーとなったのは2010年。地域振興の専門家、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さんのもとには全国から講演依頼が舞い込む。その数、年間1200件。人口は減り、経済は縮みゆく。時代の混迷は深まるかに映るいま、現実に目を向けた議論をと呼び掛ける。
−講演に引っ張りだこです。
「目からうろこの講演、と感心されるのが、実はとても残念です。私が話しているのは、国の公式の統計の絶対数。インターネットに出ている数字ばかりで、スマホ一つで確かめられるのに、皆さんどうして同じ統計を確認していないのでしょう」
−「デフレの正体」でも、具体性を欠いたスローガンに惑わされるなといさめている。
「アベノミクス効果で消費が拡大したというのですが、昨年の小売販売額は1兆円増えて139兆円になっただけ。一昨年は3兆円増えたのに。株価も急騰したというが、昨年の日経平均1万3600円は、バブル崩壊後の最近20年間で11番目の水準。第1次安倍政権当時の1万7200円にも見劣りします。他方で日本の輸出競争力が落ちたと騒いでいますが、昨年の輸出額67兆円は史上4位。リーマンショック前の3年間を除けば史上最高の水準でした」
−経済成長の議論にズレがあると。
「国内総生産(GDP)が増えることと、1人当たりGDPが増えることは違います。いま経済成長をしている国も人口が増えた結果、全体が伸びているだけ。逆に人口が減っている状況で、全体を増やすのは難しいものです」
−人口減はまさに日本が直面している問題です。
「日本のGDPは過去20年間増えてはいないが、横ばい。つまり1人当たりのGDPが増えている。1人当たりをドルベースで見れば、円高だった2012年まで、日本は先進国屈指の成長国家でした。人口構造の変化を考慮せず、総額で経済成長を議論するというのはナンセンスです」
■貿易赤字の実態
−「デフレの正体」では、生産年齢人口(15〜64歳)の減少を指摘した。
「モノがかつてのように売れないのは購買力のある生産年齢人口、つまり現役世代が減ったからです。いまや人口の半数以上が働いていないこの日本でGDP総額が横ばいというのは素晴らしい成績です。人口成熟で世界の先頭を行く日本の現実を、生の統計数字から理解しなくてはなりません」
−でも、昨年の貿易収支は11兆円の赤字です。
「昨年の輸出はバブル時の1・6倍です。サムソンの製品もアップルの製品も、日本製のハイテク部品や高機能素材なくしては作れない。国際競争力喪失と騒いでいる人は、輸出の絶対額という最も基本的な数字を確認していません」
−では、赤字の理由は。
「単純に、円安で円換算の輸入額が膨れ上がったから。円安になれば輸出企業のドル建ての売り上げも円換算の際に増えて好決算になり、株価も上がる。そういう見かけ上の好景気を狙って円安誘導したアベノミクスが原因です」
−株価が上がった半面、実体経済が損なわれてしまった。
「投資家は自分の持っている株が上がればいいわけで、日本全体が赤字になっても気にしない。安倍政権は、そうした人たちのご機嫌を取ったわけです。民主党政権を褒めていいのか分かりませんが、少なくとも野田政権は円高であることを我慢した。株価は低いままでも、貿易赤字を拡大しない方を選択したのです」
−原発が止まり、化石燃料の輸入量が増えたためとの指摘もある。
「うそで世論を誘導するのはよくない。原発事故前の10年と原発再稼働ゼロの13年を比べて、石油プラス天然ガスの輸入量は横ばいです。断熱性能の高い建物や低燃費車、省エネ家電の普及によるエネルギー使用量の減少が、原発停止分を相殺しました。輸入量ではなく輸入額は円安で3兆円ほど膨らみましたが、これは昨年の輸入総額増加11兆円の中の3割で、原発停止による増加はさらにその中の1兆円程度。これでは原発が再稼働しても、貿易赤字はほとんど減りません」
■隠れた格差拡大
−電気料金値上がりによる産業競争力低下を懸念し、原発再稼働を求める声もある。
「企業にとっては今こそ本気の省エネ推進で電気料金値上がりを乗り切り、長続きする国際競争力を得るチャンスです。使用済み核燃料の積み増しは国債発行額増加と同じで、目先をしのぐために後世の負担を大きく増やす行為です」
−見かけ上のGDPではなく、成長の中身を見なければならない。
「悪い成長の典型が米国です。1人当たり医療費が日本の約3倍もかかっていて、GDPの17%が医療関係。日本も米国の制度を取り入れれば、医療費がかさむことで経済が大きく成長しますが、それはとんでもない話です」
「そもそも日本の1人当たりGDPはバブル期に世界最高水準となり、その後、十数カ国ほどに抜かれはしましたが、絶対額としては落ちていない。目先の景気の上下ではなく、総額や平均値には表れない格差の拡大こそを気にすべきでしょう。特に雇用が不安定な若い世代に、結婚もせず、子どもも生まない人が増えていることが最大の問題です」
−目先に捉われるべきではないと。
「いま政治に求められているのは、日本社会の長期的な存続に向け、粛々と少子化対策に取り組むことです。50年後、現役世代の人口が半減するところまではもう止められません。でも出生率を向こう20年以内に1・8程度まで戻すことができれば、今の英国、フランス、イタリア程度の人口は維持でき、先進国の地位を降りることもないでしょう。公共投資で目先の景気を支えるよりも、来世紀の日本の屋台骨を支えるべきなのです」
■「デフレの正体」(角川oneテーマ21)
15歳から64歳の生産年齢人口、いわゆる現役世代の減少に注目し、日本経済の低迷を分析した。
統計データから日本の輸出力の高さを明示。内需不振については「若者の車離れ」「景気変動」「インターネットの普及による出版不況」「地域間格差」などとは関係がなく、購買力のある現役世代の減少と貯蓄が消費に回らない高齢者の激増が原因と指摘している。
経済を動かしているのは景気の波ではなく、人口の波だとし、「経済成長率」だけを指標にした考え方で経済を再生することは困難で、人口構造に合わせた対策を進める重要性を訴えた。具体的には、高齢富裕層から若者への所得移転、女性の就労と経営参画の促進、訪日外国人観光客と短期定住者の増加による経済の再活性化を提言する。
もたに・こうすけ 1964年、山口県生まれ。88年に東大法学部を卒業し、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経て日本総合研究所主席研究員、日本政策投資銀行特任顧問。平成の大合併前の約3200市町村のほぼすべてを訪れ、地域復興や地域経済の分野で研究・著作・講演を重ねている。
【神奈川新聞】
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