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伊勢崎賢治氏が断言「首相が出したパネルは国を辱めている」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/151025
2014年6月16日 日刊ゲンダイ
東京外語大教授の伊勢崎賢治氏/(C)日刊ゲンダイ
平和国家だからできる国際貢献
安倍首相が集団的自衛権の説明で使った「駆けつけ警護」のパネル。PKOに参加している他国の部隊や日本人NPOを守らなくていいのか、と訴えていたが、東京外語大の伊勢崎賢治教授は「本当に不謹慎」「国を辱めていると思う」と切り捨てた。元国連職員。アフガン武装解除日本政府特別代表。東ティモールやアフガン、シエラレオネなどの紛争地に乗り込み、DDR(武装解除、動員解除、社会復帰)を指揮してきた。危険な現場を知り尽くしている学者はこう言っている。
「大事なのは日本=非武装国家というイメージだ」
自衛隊に武力行使の道を開くことは、そのイメージをぶっ壊してしまうのだ。
■日本だからこそできたことが、できなくなる
――なぜ、駆けつけ警護のパネルが屈辱だと?
国連PKO部隊は日本人だから助けるとか助けないとか区別しないんですよ。絶対に。自衛隊がいないところで活動している日本人NGOも大勢います。武装勢力が襲ってくれば、国連軍は国籍に関係なく絶対に助ける。そういう感覚なのに、ああいうパネルを持ち出して、集団的自衛権が必要であるという法的議論をすること自体が不謹慎だと思いましたね。
――無理やり、日本人の感情に訴えるようなパネルを持ち出したわけですね。そのほかにも個別的自衛権でできることを集団的自衛権の理屈にしたり、国連措置と集団的自衛権をはき違えているような議論があると批判されています。
確かに理論のすり替えが目立ちますね。だから、議論を重ねていくと、整合性がなくなってしまう。無理に無理を重ねて、「集団的自衛権は行使できない」という足かせを外したいのでしょう。安保法制懇の北岡伸一座長代理は、国連の代表部にいた人ですよ。いろいろなことは当然、わかっているはずですが、おかしな理屈を言う。ある種の役割を演じているのではないか、とさえ思えてきます。
――アフガンの武装解除などを経験されて、やはり、自衛隊は他国で武力行使できるようにした方がいいと思いますか?
思いません。自衛隊が武力行使できるようになれば、日本がつくり上げてきたイメージが壊れてしまう。そんなことをしたら、日本だからこそ、できてきたことができなくなる。それは非常にもったいないことです。
――日本は平和国家であるというイメージですよね。このブランドが紛争地域でも役に立つと?
世界はいま、とんでもない危機に立っているんです。米国は今年、アフガンから逃げ帰る。撤退じゃありませんよ。14年間もやって、疲れたから帰るんです。しかし、テロとの戦いはこれからも続く、増殖していく。同じような問題を中国もロシアも抱えている。どうするんですか。いくらテロ掃討作戦をやっても、テロリストは民衆の中にいるんです。とことんやれば、民族浄化になってしまう。軍事力を行使すればするほど、抵抗は増える。テロは拡大する。その悪循環を断ち切るには相手の懐に飛び込んで人心掌握するしかないのです。健全な社会と政府をつくり、その政府と国際社会が仲良くできるようにする。米国もペトレイアス将軍(のちにCIA長官)を中心に2006年、こうした新しい軍事ドクトリンを打ち出しています。もちろん、アフガンでもやってきた。でも、なかなか人心掌握ができない。なぜだか、わかりますか? 米国がやっているからです。
――そこを日本が担えると?
「安倍政権は何をやりたいのか」と伊勢崎氏/(C)日刊ゲンダイ
私は日本政府代表として、アフガンの武装解除、国づくりに携わってきました。群雄割拠していた軍閥の武装を解除し、新しい国防省をつくり、人事もやった。シャッフルせよ、と命じたんです。
――日本人にそんなことができるんですか?
内政干渉じゃないか、どうせ資源が欲しいんだろ、と言われるわけです、他国は。でも、日本はそう見られなかった。
――なぜですか?
こういう交渉をするんですよ。まず、アフガン周辺国を外交交渉で一枚岩にする。そのうえで、軍閥のトップに武装解除すれば、アフガンにはこれだけの金を出しますよ、と言う。ただし、この中には日本人の血税が含まれている、平和のための金である。だから軍事組織である軍閥には出しませんよ、金が欲しいのであれば、武装解除せよと。
――タフな交渉ですね。
軍閥のトップは政治家です。ここでのまなければ、あなたの政治生命はないよ、と迫る。日本人は尊敬されているんです。米国にひどい目に遭わされた国というイメージもある。
――プラス平和国家であるというイメージですね。それなのに、米国と一緒になって、戦争できる国になってもしょうがない?
我々はアフガンにうまく入れました。でも、一歩誤ると不信の塊になってしまう。主権侵害であると言われてしまう。そうなると、過激派が付け込んでくるのです。人間社会では絶えず、いさかいが起こる。それをいさめ、沙汰をするのが国家ですが、警察などの国家権力が機能しなければ、戦後日本のヤクザのような人間が仕切ることになる。自分たちの教義を押し付け、逆らうやつは簀巻(すま)きにし、恐怖政治を行うようになる。ここをなんとかしないと、テロとの戦いはどうしようもないのです。
――ただし、そんなタフな交渉は誰でもできるわけではないでしょう。防衛省や外務省の役人は何をやっているんですか。
外務省の官僚は優秀ですが、会議屋さんなんで、こうした交渉はできません。自衛隊には幹部学校で今、私が教えています。戦争じゃない戦争に自衛官は何をなすべきか、と問うている。
――それは「日本国民は国際平和を誠実に希求し、武力による国際紛争を解決する手段を放棄する」という9条の理念にも合致していますね。
前文の理念とも一致します。現行憲法でもこういう貢献はできるのです。ただし、私は集団的自衛権は行使すべきだと思います。非武装という条件で。
――そんなことが通用するんですか?
集団的自衛権の行使には3要件があって、1つは自国と他国に共通の脅威があること、隣の家の火事をみんなで消す感覚です。2つ目の要件は消火方法が一致していること。これに同意できなければ、やらなくていい。ドイツやフランスがイラク参戦しなかったのが、このケースです。3つ目は同盟の関係とは補完関係だということです。みんなが武力行使する必要はなく、平和交渉や非武装監視を担う役割で協力してもいいのです。
――そういう歯止めができるのかどうか。安倍政権が出している事例を見ていると、何をやりたいのかが見えてこない。
安倍首相は、とにかく改憲したいのでしょう。反対派は絶対に認めない。だから、現実的ではない、空虚な議論が続いているのです。
▼いせざき・けんじ 1957年東京生まれ。早大大学院修士課程修了後、国際NGOを経て、東ティモール県知事、アフガン日本政府特別代表。現東京外語大教授。「自衛隊を活かす 21世紀の憲法と防衛を考える会」を立ち上げた。
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