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大詰めを迎えた集団的自衛権の行使をめぐる与党協議で、朝鮮半島での有事(戦争)で「避難する日本人を乗せた米艦を自衛隊が守る」との想定が、注目を集めている。しかし、過去の日米交渉で米側はこの場合の日本人救出を断っていた。首相がこだわり、行使に慎重な公明党もこれなら容認できるとみる想定だが、現実には「日本人の米艦乗船」は極めて困難だ。
「近隣諸国で紛争が起こって、逃れようとする邦人を輸送する米国の船が襲われたとき、その船を守れなくていいのか」
11日の党首討論。安倍晋三首相は朝鮮半島の有事を念頭に訴えた。公明党も「この例に絞るなら集団的自衛権を認められる」(関係者)として、「限定容認」する方向で調整に入った。
北朝鮮と向き合う韓国に在住する日本人は約3万人。「米艦による日本人救出」とは、戦争が起きた時に日本への避難民を運ぶ船や飛行機が足りないとみて、米軍に輸送の一部を依頼する想定だ。
首相や公明がこの例に着目するのは、日本が直接攻撃を受けていない時に米軍を守るのは集団的自衛権の行使に当たると主張できる一方、日本の近くで日本人の命を救うと訴えれば、国民の理解も得やすいと考えるからだ。
しかし実際には、朝鮮半島の有事で現地から日本の民間人らを米軍が避難させる計画は日米間で一度議論されたものの、最終的に米側に断られた経緯がある。
両国は1997年、78年につくられた「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を改定する際、朝鮮半島有事で日本が米軍を支援する見返りとして、避難する日本人を米軍が運ぶ「非戦闘員救出作戦」(NEO)を協力分野に加えることで合意。対日協力の目玉になるはずだった。
しかし98年にガイドラインに基づく協力内容を定める周辺事態法をつくる際、米側の強い意向でNEOはメニューから外された。
97〜98年の交渉や法案づくりに関わった当時の政府関係者によると、米軍が海外の自国民らを救出・保護する作戦では、国籍による4段階の優先順位があるという。「米国籍、米国の永住許可証の所有者、英国民らが優先で、日本人は最後の『その他』に位置づけられていると説明された」
朝鮮半島からの日本人救出をめぐる日米の協議は、その後も進展していない。首相ら政府は年内に集団的自衛権の行使容認を決める前提で、米国とガイドラインの再改定交渉に臨む方針だ。しかし、政府関係者は「再改定の主要なテーマにも邦人救出は入っていない」と語る。
(土居貴輝)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11192419.html
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